433億ウォン(約42億8千万円)の賄賂を渡したサムスン電子のイ・ジェヨン副会長(49)と、これを受け取った朴槿惠(パク・クネ)前大統領(65)。検察の控訴事実だけで見れば、この二人は「コインの表裏」だ。ところが二人の裁判は別の裁判部でそれぞれ別々に進行される。一方の裁判部が先に有罪・無罪を判断するとなると、他の裁判部は気が抜けるばかりでなく、その結果を意識せざるを得ない。裁判所が二人の判決の時期をめぐって悩みに陥らずにおれない状況だ。
問題は、両裁判の進行速度に顕著な差があるという点だ。イ副会長の裁判を担当しているソウル中央地裁刑事27部(裁判長キム・ジンドン)は、今月7日に初の正式裁判を開いて以来、一週間に2~3回ずつ集中審理を行っている。一方、朴前大統領の事件を担当したソウル中央地裁刑事22部(裁判長キム・セユン)が正式な裁判を始めるには、5月中旬頃にならなければならない。賄賂供与が主な容疑であるイ副会長とは異なり、朴前大統領の容疑は18件に上り、1審の判断が出るためには相当な期間が必要である。
賄賂の供与者と収受者の事件をそれぞれ別の裁判部が担当する場合、裁判部同士で判決日程を同じくするよう調整する必要があるという指摘が法曹界の一方からは出ている。賄賂罪の供与者と収受者は「コインの表裏」のようにつながっているため、一方が先に判断を下せば、他の裁判部の事件の結論について予断を招く恐れがあるからだ。地方裁判所のある部長判事は「賄賂罪は通常、結論が一緒に出なければならないので、判決日程を同じように合わせてこそ判決の矛盾を避けられる」と指摘した。
判決日程を合わせた場合、イ副会長の事件は審理の大部分を終えながらも、朴前大統領事件の審理が終わると予想される10月頃まで判決を遅らせなければならない。そのためにはイ副会長が1審の拘束期間である8月27日以降は釈放された状態で裁判所の判断を待つことになる可能性がある。この場合、朴前大統領の裁判でも、様々な容疑のうちイ副会長と関連した433億ウォンの賄賂の部分をまず審理する可能性がある。
しかし、最近の雰囲気では、裁判進行の差があまりにも広がっているため、イ副会長の判決が先に出る可能性があるという見方が優勢だ。実際、イ副会長事件を担当した裁判部は21日の法廷で「イ副会長の拘束満期が8月末であるため、7月末までにはどうしても結審(弁論を終わらせること)しなければならないだろう」とし、8月には判決を行う考えを示した。高等裁判所のある判事も「共犯と判決時期を合わせるために拘束被告人を釈放すれば、そもそもなぜ拘束したのかという批判が出かねない。また、他の裁判部の判断を待つというのが有罪・無罪についての心証形成をしなかったという意味に取られる恐れもあり、裁判部としては負担に思うかも知れない」と話した。
イ副会長の判決が先に出た場合、朴前大統領事件の裁判部としてはその判断を尊重せざるを得なくなるというのが法曹界の多数意見だ。地方裁判所のある部長判事は「1審でそれぞれ異なる結論を下すことは不可能ではないが、隣の裁判部が共犯者に対して有罪と判断したのに、同一審級の他の裁判部が無罪と判断することは容易ではないだろう」と見通した。