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韓国裁判所「会社アプリの設置拒否した労働者の処分は不当」

登録:2017-04-10 02:26 修正:2017-04-10 07:10
KT、労働者個人のスマートフォンに  
個人情報収集可能なアプリの設置を指示 
設置を拒否した労働者に懲戒・転任処分 
 
裁判所「アプリは個人情報侵害の恐れが十分 
会社に情報人権尊重を要求できる」
KT//ハンギョレ新聞社

 個人情報が侵害される恐れがあるとし、自分のスマートフォンに会社の業務用アプリケーション(アプリ)の設置を拒否した労働者に対し、会社が懲戒措置を行ったのは不当だという裁判所の判決が出た。個人情報の自己決定権を尊重することを労働者が会社に要求できるという意味で、波紋が広がるものと予想される。

 水原(スウォン)地裁城南(ソンナム)支院民事合議2部(裁判長キム・サンホ)は9日、個人情報侵害の恐れがある会社の業務用アプリの設置を拒否し、停職の懲戒と転任の処分を受けた労働者のL氏がKTに対して起こした訴訟で、「停職・転任処分は無効であり、不当な転任による賃金差額の支給」を命じる原告一部勝訴判決を言い渡したと明らかにした。

 KTは2014年に無線通信網品質を測定するアンドロイド基盤のアプリを開発し、業務支援団の社員らの個人スマートフォンにこのアプリを設置するよう指示した。このアプリは個人スマートフォンのカメラ、現在位置、連絡先、個人情報(カレンダーの日程)、メモリー、ショートメール、アカウント情報など12項目にアクセスできる。業務支援団で働いていたL氏は「個人情報の侵害の恐れがある」としてアプリ設置を拒否し、他のスマートフォンを支給するか、他の業務に変えてほしいと求めた。しかし、会社側はL氏を5カ月間にわたり事務所に待機させ、業務を強要しており、L氏が最後まで(会社の要求に)応じなかったことに対し、「誠実義務の違反・組織内秩序尊重の違反」を理由に、停職1か月の懲戒処分を下した。L氏は2015年7月、他のチームに異動されてから、訴訟を起こした。

 裁判所は「科学技術が進歩し、企業の労働監視活動が電子装備と結合して拡大されたことによって、労働者の人格権・プライバシー侵害に対する憂慮が高まっている」としたうえで、「サービス提供者(使用者)が端末情報をどれだけ収集し、どこまで活用するか正確に分からない状況で、労働者は個人情報の自己決定権の尊重を要求できると見なければならない」と述べた。

 また、裁判所は、KTの業務指示が労働者の個人情報の自己決定権を侵害を上回るほど重要ではないと判断した。その根拠として、会社アプリが業務と関係のない個人情報を収集できるものであり、他の端末を支給すれば解決できる問題だけではなく、業務を担当するほかの職員を探そうとする努力もしなかったという点を挙げた。裁判所は「会社がL氏の他の端末機の支給要求や他の業務への転任要求を拒否したのは正当でないうえに、L氏を懲戒処分にするためにこの業務の遂行を強要したと見る余地もある」と指摘した。

 KTの事例のように、情報通信技術を活用した労働者の監視をめぐる問題は広がりを見せている。国家人権委員会が2月「労働者の情報人権を保護する制度の改善」を雇用労働部に勧告した決定文によると、事業所の電子監視と関連し、人権委員会に寄せられた陳情・苦情は2011年の33件から2015年には101件に急増する傾向を見せている。人権委は決定文で「電子監視のため、労働者らが人格的な羞恥心と侮辱感を感じており、プライバシーを侵害されて精神的ストレスに苦しんでいる」と指摘した。人権委員会は「政府の『個人情報保護ガイドライン(人事・労務編)』に、事業所が個人情報を収集・利用する際に遵守すべき要件と、労働者の個人情報の権利や権利侵害の際の救済手続きなどを具体的に明示すること」を勧告した。

パク・テウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/789956.html 韓国語原文入力: 2017-04-09 23:18
訳H.J(1693字)

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