大統領選の政局が共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)候補と国民の党の安哲秀(アン・チョルス)候補の2強構図に再編されている。投票日(5月9日)を1カ月後に控えた時点で、野党候補同士1・2位を争う史上初の選挙構図が展開されているのだ。文候補側の関係者たちは「安候補の支持率は1~2週間以内にはじけるバブル」だとして、意味を縮小しているが、党の一部では「安哲秀フィーバーを早期に遮断しなければ、2002年の李会昌(イ・フェチャン)候補のように崩壊しかねない」として不安を募らせている。
「文・安2強」構図は3日、共に民主党が文在寅候補選出を決めた直後から明確になった。4日に実施された韓国リサーチの「5者対決」の調査で、文候補(39.1%)と安候補(31.8%)の支持率の格差は7.3%ポイントだった。同じ日に実施されたソウル新聞のエムブレインによる調査では格差が3.6%ポイント(文38%、安34.4%)で、中央日報調査チームが4~5日に行った調査でも、格差が3.5%ポイント(文38.4%、安34.9%)に過ぎなかった(中央選挙世論調査審議委員会ホームページnesdc.go.krを参照)。ほとんどの調査で格差が誤差範囲内の薄氷の構図だ。
■文・安の2強構図はなぜか
初の有力な保守派候補の不在
行き場を失った保守層、安候補に集結
安煕正支持の50%も安哲秀に
「文・安2強」構図は、文在寅候補が党内予備選挙のコンベンション効果を享受できないまま、支持率停滞の局面に入っている間、保守票心の支援を受けた安哲秀候補が文候補との格差を急速に縮めていった結果だ。まず、文候補の支持率低迷は、予備選挙の過程で、安煕正(アン・ヒジョン)忠清南道(チュンチョンナムド)知事と李在明(イ・ジェミョン)城南(ソンナム)市長を支持した票心を効果的に吸収できなかったことが決定的と見られる。この点は、5政党の大統領選候補の対決構図で文候補が安煕正支持層の25.8%、李在明支持層の51.4%だけを引き寄せる結果としてあらわれたソウル新聞・YTNの調査でも明らかになっている。
その間に安哲秀候補には、共に民主党の予備選挙で安煕正・李在明を支持した有権者層が流れた。実際、ソウル新聞・YTNの調査で、安煕正支持層の51.5%、李在明支持層の30.2%が安候補に移動したことが分かった。“行き場を失った”保守票心が安煕正知事を選択したことも決定的だった。潘基文(パン・ギムン)→黄教安(ファン・ギョアン)→安煕正と移動を続けてきた「非(反)文在寅」票心が、3候補が相次いで落馬したことを受け、安哲秀という選択肢に集中しているのだ。ここには現場投票中心に行われた国民の党予備選挙の予想外の興行も一役買った。
■安フィーバーはいつまで続くだろうか
安候補の支持層の忠誠度めぐり議論に
文候補側「検証攻勢が始まれば、バブルもはじける」
安候補側「少数党も政権可能、結集を維持」
得票につながるかめぐり専門家も意見分かれる
専門家らは支持層の忠誠度において文在寅候補が安哲秀候補を上回ると見ている。文候補支持層の政治的性向が相対的に均質な反面、安候補支持層の性向は複合的かつ異質的だからだ。実際、多くの調査で、文候補は進歩層の50~60%、中道層の30%、保守層の20%台の支持を受けている。一方、安候補は進歩層の20%、中道層の30%、保守層の40%台の支持を受けている。野党候補が進歩層から圧倒的支持を受けるのは、それだけ支持の忠誠度が高いということを意味する。一方、中道・保守層の高い支持は“拡張性”は大きいが、忠誠度においては相対的に弱いという限界がある。文候補側が安候補の支持率を「バブル」と評価する根拠もここにある。ウ・サンホ民主党院内代表は6日の懇談会で「一定の期間が経つと、調整期がやって来る。党内選挙の局面で気分を損ねた支持層が政権交代の大義名分のために舞い戻り、保守支持層が『それでも今まで支持してきた政党の候補を選ばなければならないのでは』と理性的に考え始めると、安候補の支持率は調整期を迎えることになる」と述べた。一方、朴智元(パク・チウォン)国民の党代表は、安候補の支持層が堅固でないという点を認めながらも、「文在寅大勢論に臆して国民の党の議席規模(40議席)に対する確信が持てないというのが大きな理由だが、(文在寅)大勢論はすでに虚像であることが明らかになっており、議席が少ない政党が政権獲得に成功した事例も多い。時間が経っても支持率は落ち込まないだろう」と反論した。
専門家の分析も分かれた。アジェンダセンターのイ・サンイル代表は「安候補が比較的に自由に動ける余地があるように見えるが、これから苦境に直面する可能性も高い。アイデンティティをめぐる論争が本格化して、文在寅・洪準杓(ホン・ジュンピョ:自由韓国党候補)の両方から挟み撃ちになった場合、全羅道(チョルラド)と保守層という異質的支持層を効果的につなぎ合わせるのは容易ではないだろう」とした。しかし、オピニオンライブ世論分析センターのユン・ヒウンセンター長は異なる見通しを示した。ユンセンター長は「保守層が(安候補から)離反するためには、安哲秀より有力な代案がなければならないが、現在のところ、洪準杓・劉承ミン(ユ・スンミン:正しい政党候補)がその代案になる可能性は極めて低い。(安候補支持率は)簡単に落ち込む支持率ではない」と話した。
■支持率が得票率に繋がるか?
支持層の“積極性”も影響すると見られる。世論調査の支持率が実際の得票率につながるためには、支持者たちが“確信”と“切迫感”が重要であるからだ。実際多くの世論調査で文候補は積極的に投票する意向がある層で、安候補を20%ポイントほど上回っている。文候補支持者がそれほど熱情と忠誠度が強いということだ。ユン・ヒウンセンター長は「保守層の文在寅けん制感情がどれほど強く続くか、安哲秀候補が彼らに自分が文在寅に対抗する代案であることをどれほど説得できるかにかかっている」と指摘した。イ・サンイル代表は「安候補が今の支持率をどれほど堅固に維持できるかがカギ」だと分析した。安候補が今の薄氷の構図を投票日の直前まで持っていけば、彼に消極的な「反文在寅」性向の「隠れ保守層」を投票場に呼び寄せられるだろうが、支持率が落ち込めば、保守層は投票をしないか従来の保守候補に票を与える恐れがあるということだ。