政府がセウォル号船尾の左ランプウェイ(大型貨物室出入り口の可動橋)が開いたため引き揚げが難しくなり、これを切断したことをめぐり議論が起きている。セウォル号が事件当時、急速に沈没した原因を明らかにする重要な証拠物が損なわれたためだ。この1年6カ月間、引き揚げ業者の上海サルベージの潜水士たちが海底に数知れないほど潜り、テスト引き揚げまで行ったにもかかわらず、ランプウェイの問題に気付かなかったというのは納得し難いという批判が出ている。
イ・チョルジョ海洋水産部セウォル号引き揚げ推進団長は23日午後10時頃、緊急ブリーフィングを開き「セウォル号左船尾のランプウェイが本来閉まっていなければならないのに、開閉装置の一部が破損し、下方向に開かれた状態で発見された」と明らかにした。ランプウェイとは船舶の大型貨物室についている出入り口で、埠頭に着いた時に自動車などが出入りする橋渡しの役割をする。横7.9メートル、縦11メートル大で、乗船する時は開き船が出港すれば再び閉じる。海水部はランプウェイが開いた状態ではセウォル号を半潜水式の船舶に載せることはできないという理由で切断すると発表した。
海水部の説明はこうなる。左に横たわっているセウォル号の高さは22メートルだ。セウォル号を水面上に13メートルまで引き上げることになると、下の9メートルは水に浸かった状態になる。セウォル号を載せなければならない半潜水式船舶は水深13メートルまで潜水することができる。水に浸かったセウォル号部分が9メートルということを考慮すれば、半潜水式船舶が13メートル潜水したとき、余裕空間は4メートル程度である。しかし、セウォル号の下にリフティングビーム(支え台)など各種装備が設置されており、4メートルの空間では作業するのにぎりぎりだ。ここに下に垂れ下がったランプウェイまであれば、セウォル号を半潜水式の棚に載せることはできないということだ。結局、徹夜作業の末に24日午前6時45分、船尾左側のランプウェイは切断された。
海水部は一息ついたかたちだが、真相究明を要求する側は心配が大きい。船尾ランプウェイが持つ意味は重大だからだ。セウォル号は2014年4月16日、あまりにも急速に沈没したために大規模な死亡被害が出た。セウォル号がなぜこんなに早く沈没したのかは疑問として残っている。疑問を解く糸口になるのがランプウェイだ。船が傾いたとき、きちんと閉じていないランプウェイを通じて水が入ってきた可能性があるという証言が出てきたからだ。
セウォル号惨事に関連する証言と資料を集大成した「セウォル号、その日の記録」によると、2014年10月の裁判でイ・ドンゴン韓国海洋科学技術院先任研究院長は「セウォル号のような場合、ランプウェイとDデッキにある舷門(1階のデッキにある通用口)がちゃんと防水されていたなら、30度の傾斜からそれ以上浸水しなかったはず」とし、「水が入り込んできたために浸水が起きたのだろう」と証言した。水が入ってきたと思われる場所の一つがランプウェイである。セウォル号一等航海士のカン・ウォンシク氏は捜査の過程で「ランプウェイのドア枠にはゴムパッキンがはまっており、ドアを閉めた後に油圧ピンスイッチを作動させ、上方にハンドルレバー2個を回して水密(水が漏れないようにすること)をする」とし、「その日はすべてを行ったが、ランプウェイ下部から光が漏れていることを確認した」と話した。セウォル号のイ・ジュンソク船長の発言も注目される。イ船長は捜査過程で「2014年4月15日の出航前船上会議で、カーランプウェイに亀裂が生じた部分が少しあるので、休みの日に工場に依頼しなければならないと話をした」と証言した。セウォル号が海面につくほどに傾き、ランプウェイの隙間から海水が入ってきた公算があるということだ。セウォル号引き揚げ後、事実の有無を追及しなければならない部分だが、これを切断することにより検証する機会が失われたことになる。
問題は政府のずさんな船体引き揚げ準備だ。上海サルベージは2015年8月に引き揚げ業者に選定された後、潜水士が随時海に潜りセウォル号のようすを調べた。昨年末にはランプウェイがある船尾部分にのみリフティングビーム(支え台)10個を設置したにもかかわらず、ランプウェイの状態を調べられなかったというのは納得し難い。特に22日、セウォル号を1~2メートル持ち上げるテスト引き揚げをした後、潜水士が海底におりて目でセウォル号の状況を点検までした。イ・テジョ海水部団長は「ランプウェイの下部が海底面に1~1.5メートル埋まっていた。セウォル号を持ち上げなくては異常の有無を確認しにくい環境だった」とし、「開閉装置は破損されたがランプウェイが閉じられた状態で、引き揚げの過程で開いたのではないかと思う」と釈明した。
しかし、キム・ヒョンウク元セウォル号特別調査委員会調査官は「海水部の話は100%嘘だ。船を引き揚げる前に船体の端から端までずっとチェックしてきた」とし、「テスト引き揚げの際も確認できなかったということはあり得ない」と話した。
さらに深刻なのは、ランプウェイがいつから開いていたのかすら曖昧で、遺骸や遺品などが流失した恐れがあるという点だ。キム・ヒョンウク元調査官は「50トンの門が流失防止網も設置せずに開いていた可能性があるということだが、これは海水部の職務放棄だ。そこから何が流れ出たのかわからないではないか」とし、「他所に対しても流失防止をきちんと行ったのかどうか、疑わしい」と話した。