セウォル号が姿を現した。何と1073日ぶりだ。国民皆がみじめな気持ちで見守らなければならなかった、その青と白の外観とは異なり、随所に赤黒い錆がついて、傷ついた凄惨な姿は、私たちの胸を再び押さえ付ける。「うちの子があんな汚らしい所にいたなんて…」と嗚咽する家族のあまりに悲しい心情は言うまでもないだろう。このように一夜で上がってくることを、なぜ3年も引っ張ったのか。沈没から救助失敗、のろまな引き揚げまで全てが誤ってきたことをセウォル号は全身で私たちに証言している。
引き揚げ作業をまちがいなく終えることはもちろん、まもなく行われる未収拾者の収拾過程でもいささかの失敗もあってはならない。未収拾者の家族は、その暗黒の時間、北風が吹きすさぶ東巨次島で、あるいは路上で、悲しくも「遺族になること」を祈って地獄のような日々を耐えてきた。家族を完全にふところに抱けるようにすることだけが、家族たちの恨を解く道だ。
船体の引き揚げは、真実糾明作業を再開する契機にしなければならない。引き揚げ過程を巡る疑問から解く必要がある。2015年4月に引き揚げを決め、8月に引き揚げ業者が選ばれた後にも、クレーン方式で引き揚げるとして船体を傷つけると、今度は“ジャッキング・バージ船”方式に変えるなど一進一退した。潮流と気候など種々の条件が合わなければならないが、何故大統領が追い出された直後に引き揚げが成功したのかという疑問が提起されているのも事実だ。これ以上の憶測と論議が生まれないように、海洋水産部は詳しく解明することを望む。
沈没の原因も明確に整理しなければならない。今までは無理な船体改造と過積載、操舵手の操舵未熟が重なって沈没したと、捜査と裁判を通じて説明されてきた。しかし、当時国家情報院の釈然としない行跡に対して、一部の学者とネチズンによるレーダー映像分析資料公開などで衝突説が提起されもした。船体調査で真実が明らかになることを期待する。
事故後の不良対応とその責任問題は、最も核心的に明らかにしなければならない課題だ。現場に出動した木浦(モクポ)海洋警察123艇長ひとりが懲役3年の刑を受けただけで、大統領府と政府、海洋警察首脳部の責任は何一つ明らかにならず断罪もされなかった。大統領をはじめとする権力が、自分たちの責任を覆い隠すために組織的に真相究明を妨害したためだ。
真相究明の隠蔽・妨害行為の顛末を明らかにし、責任者も必ず処罰しなければならない。それでこそ惨事の再発を防げる。押収捜索など検察捜査を妨害したウ・ビョンウ元大統領府民政首席秘書官と検察首脳部、放送統制を試みたイ・ジョンヒョン元広報首席秘書官など、権力型犯罪を犯した大統領府と政府高位層が健在なのは、セウォル号犠牲者に対する罪だ。
真実を明らかにする主体を再び立て直すことも至急必要だ。最近国会を通過したセウォル号船体調査委特別法は、船体調査を目的としている。必要ならば検察に告発し、捜査も要請できるが、活動範囲は制限的にならざるをえない。セウォル号惨事特別調査委の再稼働が必要だ。また、不良対応の責任と真相究明への妨害・隠蔽行為に対してはいかなる形であれ別途の強力な捜査が進行されなければならない。
数百人の命が危機に陥った重要な時に、7時間を浪費した大統領が、自分だけは処罰を避けようと調書を7時間も読んだという事実に国民は怒っている。セウォル号が上がってきたこの時点に、朴槿恵(パク・クネ)氏に7時間に対する告白と率直な謝罪を改めて要求する。