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教育部が国定教科書を諦め切れない三つの理由

登録:2017-02-06 01:20 修正:2017-02-06 06:45
朴大統領弾劾政局で保守を結集 
“歴史取り戻し”目指すニューライトと癒着 
国定化失敗による責任回避も 
 
研究学校選定15日に最終発表 
現場の反応は冷ややか…野党、「禁止法」推進する予定
学界と国会での廃止の声が高まっている国定歴史教科書=資料写真//ハンギョレ新聞社

 中高校国定歴史教科書の最終本は、偏向的歴史叙述として批判されているだけではなく、数百カ所の誤りが見つかり、完成度まで低いことが分かった。国民多数の反対世論にもかかわらず、教育部が研究学校の指定を強行し、来年の国定・検定混用方針を維持するなど、国定教科書政策を放棄しない背景には“政治的意図”があると指摘されている。

■伝統支持層結集の切り札

 まず、(教育部は)国定教科書を通じて伝統的な支持層の結集を誘導していると見られる。徳成女子大学のハン・サング教授(歴史)は5日、「朴槿恵(パク・クネ)大統領の支持率は4%台に過ぎないが、国定教科書への賛成世論は17%台に達しており、大統領の支持率の4倍を超えている」とし、「保守陣営からすると、国定教科書は危機の原因ではなく、危機から救う解決策であり、保守層を結集できる最高の切り札」だと指摘した。国会教育文化体育観光委員会のある野党関係者も「現在、弾劾審判を受けている朴大統領に注がれている国民の憤りを理念論争が激化している国定教科書を通じて分散させ、これによって保守層を結集して、反撃に乗り出すことができると見ている」と話した。政府としては、国定教科書を強行しても損はないということだ。

■“歴史取り戻し”の圧迫

 教育部が、約10年間にわたり一つの政治・社会勢力に成長したいわゆる「ニューライト」勢力のしつこい要求を、忠実に遂行しているという指摘もある。延世大学のハ・イルシク教授(歴史)は「李明博(イ・ミョンバク)、朴槿惠政権につながる保守政権の間ずっと、ニューライトが執拗に中高校教科書を通じた“歴史取り戻し”を試みてきた点を注目しなければならない」としたうえで、「彼らが主張するいわゆる『左派との歴史戦争』を中心に朴槿恵大統領からセヌリ党、ニューライトにつながるカルテルが形成されており、教育部はこれを忠実に遂行する役割を担っていると見るべきだ」と話した。共に民主党の関係者も「イ・ジュンシク社会副首相兼教育部長官が国定教科書にこだわるのは「“朴大統領と公安検事出身の黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行、ニューライト系列の自由経済院事務総長出身のチョン・ヒギョン・セヌリ党議員に代表される極右性向のセヌリ党議員ら”という三角コネクションの影響から自由ではないためと見られる」と指摘した。

■国定化の失敗責任論から逃れるため

 教育部が国定化推進の失敗責任を問われるのを避けるため、国定教科書の現場投入を強行するという分析もある。全国歴史教師の会のチョ・ハンギョン教科書研究チーム長は「国定教科書の製作だけで少なくとも44億ウォン(約4億3千万円)以上の予算が投入され、韓国社会は幾多の対立と混乱を経験しなければならなかった」とし、「教育部は、国定教科書が完全に取り止めになった場合、提起されるであろう責任論から逃れるため、どんな手を使ってでも国定教科書を採択した学校を増やそうとするだろう」と話した。

 教育部は10日まで、国定教科書を希望する学校の申請を受けて、15日に研究学校選定結果を最終発表する予定だ。しかし、全国17の市・道教育庁のうち、実際、教育部の国定教科書研究学校の申請が盛り込まれた公文書を学校に送った教育庁は、大邱(テグ)、大田(テジョン)、蔚山(ウルサン)、忠清北道、全羅北道、全羅南道、慶尚北道、済州(チェジュ)など8カ所に過ぎず、このうち、教育長が国定教科書に賛成の立場を明らかにしたのは大邱、慶尚北道、蔚山など3カ所だけだ。研究学校の申請がごく一部地域の少数学校に止まると見られているのも、そのためだ。

 一方、野党は現在、国会法制司法委員会に係留されている「国定教科書禁止法」を、チョン・セギュン国会議長を説得して今月23日、国会本会議に職権上程する案を推進する方針だ。

キム・ギョンウク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/781395.html 韓国語原文入力:2017-02-05 19:26
訳H.J(1837字)

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