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[ニュース分析]懲罰的損害賠償制導入“見掛け倒し”に終わるか

登録:2017-01-06 20:14 修正:2017-01-07 04:10
韓国政府、「被害額の 3倍まで賠償」に予防効果を期待 
「最大10倍までは課さねば効果なし」との反論も 
「故意性」を前提とした点も制度適用に限界 
「集団訴訟と一緒に導入して初めて効果」
オキシのアタ・シャフダル代表(前列中央)をはじめ証人と参考人が昨年8月29日午前、国会で開かれた「加湿器殺菌剤事故真相糾明と被害救済及び再発防止対策樹立のための国政調査特別委員会」聴聞会で、加湿器殺菌剤犠牲者のために黙祷している=カン・チャングァン記者//ハンギョレ新聞社

 政府が人命・身体に重大な損害を被らせた製造物事業者に対して被害額の最大3倍まで賠償責任を問う内容の「懲罰的損害賠償制」を導入することにしたのは、1000人を超える死亡者が発生した加湿器殺菌剤事件がきっかけになったと言える。韓国では実際の被害額の範囲内で賠償責任を問うのが一般的で、懲罰的損害賠償制は下請法と個人情報保護法など制限された領域にのみ導入されている。加湿器殺菌剤被害家族と市民団体はこれまで懲罰的賠償制の導入を持続的に要求して来た。参与連帯は昨年10月、懲罰的賠償法の立法請願までした。

 しかし、製造物責任法の改正で政府が期待する効果を収められるかは依然として不確実だという憂慮も少なくない。公正取引委員会のチョン・ジェチャン委員長は「懲罰的損害賠償制の導入自体が企業には相当な警告効果があるだろう」として予防効果に自信を示した。しかし既に2011年に懲罰的賠償制が導入された下請法の場合、まだ実際の適用事例は一件もない。法施行後に被害中小企業が大企業を相手にこれによる賠償を請求した訴訟は、2015年7月のCJ大韓通運不当委託取り消しに関連する1件だけだ。まだ1審判決さえ出ていない。公取委は「懲罰的賠償制が本来の機能を果すには被害者が積極的に訴訟を提起し裁判所がこれを認めなければならないが、現実的には被害中小企業が大企業の報復を恐れて顔色を伺い、裁判所も判決に慎重を期しているようだ」と話した。

 賠償限度3倍というのも論議の的だ。参与連帯は「十分な予防効果を収めるには、賠償限度を無制限にするか或いは最大被害額の10倍に引き上げなければならない」と主張した。 米国では被害額の何倍を賠償せよという判決が多いが、数百倍を課す判決もある。また、適用対象を「故意的」に重大な損害を被らせた場合に限定した点も、限界として指摘される。参与連帯の立法請願案は「故意」はもちろん「重過失」まで包括している。政府案通りでは、加湿器殺菌剤のように莫大な人命被害が発生しても故意性が立証されなければ懲罰的賠償は不可能になる。

 効果を高めるには集団訴訟制を一緒に導入すべきだという主張も出ている。集団訴訟制は被害者の一部が訴訟を提起して勝訴すれば、他の被害者も同一の賠償を受けられるようにする制度で、米国などで広範囲に活用されている。消費者事件は被害者が多くても 1人当りの被害規模が小さい場合が多く、被害者が法的対応をあきらめるケースが多い。参与連帯のアン・ジンゴル協同事務処長は「加湿器殺菌剤事件の発生から5年経ってようやく政府が懲罰的賠償制を導入しようとするのは晩時之歎ではあるが、それでも幸い」だとしながらも 「制度が本来の役割を果すには、賠償限度を被害額の最大10倍に引き上げて“重過失”被害も含めるべきで、集団訴訟制を一緒に導入しなければならない」と指摘した。

クァク・チョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2017-01-05 16:17

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/777497.html 訳A.K

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