過去には父親が資金をねん出し、今度は息子が拠出金を出した。当時は父親の政権がカネを要求し、今度は娘が大統領としてカネを受け取った。
6日に開かれる国会「朴槿恵(パク・クネ)政権のチェ・スンシルなど民間人による国政壟断疑惑事件の真相究明に向けた国政調査特別委員会」に、ミル・Kスポーツ財団に拠出した財閥総帥9人が証人として出席する。親子2代にわたる政経癒着が、歴代最大規模の財閥総師らを聴聞会場に向かわせた。慢性疾患であることが明らかになった政経癒着の根源を突き止めて、抜本的な対策を講じるべきという声が高まっている。
民主化以前の政経癒着は政治権力の優位に基づいていた。水原大学のイ・ハング教授の『韓国財閥史』などの研究結果を総合すると、政治権力と財閥の癒着は1948年の政府樹立にさかのぼる。李承晩(イ・スンマン)政権時代の政経癒着について、イ教授は「ビジネスは政府に直結されること」だと表現した。経済活動で政府の力が強かった。日本が残した敵産と莫大な米国の援助物資を政府が企業に払い下げ・配分した。政府が樹立されてからしばらくは金融機関が国有だったが、1957年に銀行株式の売却が施行され、財閥が金融業も支配した。朝鮮戦争以降、政府発注の工事が建設需要に占める割合が大きかった。李承晩自由党政権は政府の工事を落札した建設会社から主に政治資金を受け取った。
1960~70年代、朴正煕(パク・チョンヒ)政権が官主導の経済成長を推進して政経癒着が悪化した。「腐敗と旧悪を一掃」するという5・16クーデターの「革命公約」は守られなかった。クーデター直後、朴元大統領は、政経癒着の疑惑がある企業家たちを逮捕するなど圧迫したが、すぐ態度を変えた。全国経済人連合会もこの時期に誕生した。イ・メンヒ元CJグループ名誉会長は、回顧録で「革命政府(朴正煕政権)は、発足直後からあちこちで従来の政治勢力よりひどい不正を始めた」として、「一番ひどいのが各種事業の許認可をめぐって政府が密かに賄賂を要求することだった」と明らかにした。
1980年代にも、政経癒着はさらに強化された。全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領は1963年国家再建最高会議秘書官などとして、3回にわたり朴正煕元大統領を近くで補佐しただけに、政経癒着の形も似ていた。在任中に、企業から直接政治資金を受け取り、退任に備えて日海財団を作って、強制的に拠出金を出させた。ミル・Kスポーツ財団に拠出した財閥のうち6社が、28年前に日海財団にも拠出金を納めた。日海財団にカネを出した財閥総帥とミル・Kスポーツ財団にカネを出した財閥総帥数人が親子関係だ。
1988年、日海財団の聴聞会でチョン・ジュヨン元現代グループ名誉会長は、強制性があったことを証言して波紋が広がった。 しかし、最高検察庁中央捜査部は全元大統領や当時現職の盧泰愚(ノ・テウ)大統領は捜査せず、1989年1月のチャン・セドン元秘書室長だけを起訴した。金淇春(キム・ギチュン)前朴槿恵大統領秘書室長が当時検察総長として捜査を指揮した。当時、捜査を消極的に指揮した金前室長は、皮肉にも今回の聴聞会の証人に選ばれた。
1987年の民主化以降、政経癒着の規模は小さくなったが、完全に根絶されたわけではなった。政党の運営は比較的透明になったが、大統領選挙の資金が問題だった。全・盧元大統領は、企業から数千億ウォン台の政治資金を受け取って、1987年12月の大統領選挙資金として使用した疑いが明らかになり、処罰された。1997年の大統領選挙当時、サムスンなど大手企業が与野党に不法政治資金を提供した事実が「サムスンXファイル事件」によって後に明らかになった。2002年の大統領選挙資金を捜査した結果、当時、ハンナラ党が800億ウォン(約77億8千万円)台、新千年民主党が100億ウォン(約9億7千万円)台の資金を受け取った事実が明らかになった。 ハンナラ党が現金で巨額を受け取った「賄賂事件」もこの時の話だ。
2000年代に入って、政経癒着は企業の力が強化された状況で「ギブアンドテイク型」に変形される。企業が過去のように露骨に政治資金を納めることは減った。1993年に施行された金融実名制も影響を与えた。代わりに、事業許認可などをため、合法的形で密かな取引が行われているとの疑惑が多い。イ・ハング教授は「2000年代の政経癒着の重要な違いは、財閥の力が政府より強くなったという点」だとし、「過去の関係が縦の関係だとするなら、今は財閥の力がさらに大きくて過去のように『カネを出せ』の一言で直ちに従うことはなく、(企業が)寄付金を出すのは取引レベルでギブアンドテイクしている」と分析した。
総帥が国会の証人に採択された財閥が、まさにこのような疑惑の的になっている。サムスンとロッテなどが国民年金の議決権や免税店事業、総帥の赦免など、自分たちの利益のために政権の不当な要求に応じたのではないかという見方だ。
政経癒着を根絶するためには、力を伸ばした企業の体質改善が優先されるべきという指摘もある。漢城大学のキム・サンジョ教授はメディアへの寄稿で「不法・不当行為をためらわない総帥一家こそ陰の実力者の恐喝・脅迫を招いたのだから、財閥は政経癒着の被害者ではなく共犯」だとしたうえで、「(政権が)カネを要求する余地がない企業を作らなければならない。それが支配構造の改善であり、財閥改革であり、経済民主化」だと主張した。捜査機関を含め、政府に対する国民の監視がもっと必要だという主張もある。イ・ハング教授は「政府と企業が(カネを)差し出すことも、受け取ることも同時に止めなければならない」として、「行政がより透明になり、民主化がさらに促進されなければならず、権力機関に対する国民的監視がさらに必要だ」と話した。