韓米自由貿易協定(FTA)交渉の際に知的財産権分野で双方がやりとりしたすべての文書を公開せよという裁判所の判決が下った。公式交渉だけでなく、非公式交渉の過程で交換された文書まですべて公開せよという裁判所の判断は初めてだ。
ソウル行政裁判所行政7部(裁判長イ・ジンマン首席部長判事)は、ナム・ヒソプ弁理士が産業通商資源部(産資部)長官を相手取って起こした情報公開拒否処分取消し訴訟で、原告勝訴の判決を言い渡したと28日明らかにした。ナム弁理士は「韓米FTA知的財産権分野の交渉過程で、両国政府の立場資料、対応政策と争点のリスト、残りの争点に対する一括交渉構成表などが書かれた文書を公開せよ」とし、昨年3月に情報公開を請求したが、産資部が拒否したところ、同年7月に訴訟を起こした。産資部は「文書が公開されれば、韓国の交渉戦略が知られてしまう可能性があり、今後他国との交渉で交渉情報として活用され得る」と主張し、非公開の方針を固守してきた。
裁判部は、産資部の主張をほぼ受け入れなかった。まず「この件の情報は知的財産権分野の法制化に限定されるため、公開されても国家の重大な利益を著しく損ねる恐れがあるとは見られない」と指摘した。さらに、「米国政府が提供した文書が他国の交渉情報として活用される可能性があるという理由で国民の知る権利を制限するのは正当でない」とし、米国が提供した文書についても公開するよう求めた。
特に裁判部は「一括交渉構成表」も公開するのが適当だと明らかにした。一括交渉構成表は、争点を「必ず貫徹しなければならない部分」、「妥協や譲歩が可能な部分」など優先順位によって分けた後、残りの争点を一度に妥結させる案を提案する文書であり、産資部は「公開した場合は韓国政府の基本的立場と交渉戦略などが露出する可能性がある」と主張したが、裁判所は受け入れなかった。
これに先立ち裁判所は9月にも、「民主社会のための弁護士会(民弁)」が産資部長官を相手に起こした韓米FTA関連情報公開拒否処分取消し訴訟でも民弁側の手を挙げた。民弁の国際通商委員会委員長のソン・ギホ弁護士は「裁判所が公開するように命じた韓米FTA関連情報の範囲が広がっている。国益毀損の可能性を理由に国民の知る権利を無視する密室交渉手続きに裁判所が歯止めをかけたもの」と指摘した。