全国民的退陣要求にもかかわらず、朴槿恵(パク・クネ)大統領が大統領府に「居座る」姿勢を示しており、「弾劾を進めるべきだ」という声が高まっている。国会での弾劾訴追案の成立から保守性向の裁判官で構成された憲法裁判所の審判に至るまで、成否の予測が難しい長い道程が予想されるが、野党が朴大統領の辞任を要求することで意見の一致を見た以上、弾劾カードを切るのは時間の問題とみられる。
■弾劾カードに手を伸ばした民主党・正義党
共に民主党の秋美愛(チュ・ミエ)代表は18日、最高委員会議で「朴大統領の辞任拒否は確実となった。朴大統領が下野しなければ憲法によって大統領に付与された権限を停止させる措置に入る。後続の法的処置も計画している」と述べた。朴大統領が居座り続けるならば、弾劾訴追を通じて引きずりおろす意向を示したものと見られる。民主党指導部が弾劾の可能性を公に言及したのは初めてだ。
ただ、秋代表は同日、「法的処置が弾劾を念頭に置いたものなのか」というハンギョレの質問に「弾劾に言及するのは(まだ)早い」と慎重な態度を示した。党指導部のある関係者は「実際に弾劾を実行に移す時期ではないが、予備・検討・予熱段階として受け取ってもいい」と話した。朴大統領の違憲・違法行為を明らかにする「朴槿恵・チェ・スンシルゲート」の特検と国政調査がまだ始まっていない状況で、急いで弾劾訴追に乗り出すことはなくとも、弾劾カードを握って圧迫しながら水面下で実行の準備を進めていくものと見られる。
正義党はさらに積極的に「弾劾訴追の手続きを準備しなければならない」と主張している。朴大統領が公式日程を再開し、国政に復帰する手順を踏んでいるだけに、弾劾訴追を通じて大統領の権限行使を停止させるべきということだ。シム・サンジョン正義党代表は同日、記者会見を開き、「正義党は朴大統領が最後まで国民に抵抗する状況に備え、憲法による弾劾も慎重に検討している。もし国会の弾劾訴追が容易でなければ、任期を短縮する改憲など『国民による弾劾』の方法も検討していかなければならない」と話した。今月14日に開かれた民主党議員総会でも「水面下でも弾劾の可能性を打診し、備えなければならない」という声があがった。
■「黄教安大統領権限代行」のジレンマ
野党が積極的に弾劾の手続きに着手しないのは、現実的考慮によるものだ。野党3党の議員と野党寄りの無所属議員の数をすべて合わせても171人で、弾劾案可決のための定足数(200人)には及ばない。国民の党の朴智元(パク・チウォン)非常対策委員長は17日、「野党(議員)を全部合わせても(弾劾案が可決されるためには)29議席が野党側に乗り換えななければならない。また、野党内部にも大統領の退陣に反対する人たちがいる」として、「もしそこ(国会本会議)で否決されれば、すべてが終わってしまう」として、懸念を示した。
弾劾案が国会で可決されると同時に、朴大統領の「アバター」(ゲームなどで自分の分身となるキャラクター)と呼ばれる黄教安(ファン・ギョアン)首相が大統領権限代行を務めることになるという負担もある。このため、朴智元委員長などは「まず国会が推薦して新しい首相を任命しよう」と主張する。しかし、弾劾を主張する正義党のシム・サンジョン代表は「問題認識はよくわかるが、まず、(弾劾のための)法律的、政治的要件を十分に準備する作業を急がなければならない」と話した。
弾劾案が憲法裁判所で棄却される可能性もある。憲法裁で弾劾が決定されるためには、裁判官9人のうち6人が賛成しなければならないが、現在裁判官のうち7人は、保守性向の人物と分類される。
様々な障害にもかかわらず、朴大統領が自ら辞任を宣言しない限り、唯一残された道は弾劾だけだということには、政界でも共感が形成されている。民主党院内幹部のある議員は「憲法裁の性向からして、弾劾の結果は不透明だ。しかし、弾劾はそれが分かっていてもやらなければならない戦いになった。回避する方法が見つからない」と話した。この議員は「一応国会を通過し、憲法裁まで行けば、これまで類を見ない滔々たる民心に憲法裁も逆らえないだろう」と付け加えた。
■セヌリ党の「弾劾賛成」はどれほどいるだろうか
今週末チェ・スンシル氏の起訴状が公開され、今後特検チームが構成されて朴大統領の憲法違反行為がさらに明らかになり始めると、弾劾に向けた発煙点は超えると見られる。その後は、セヌリ党議員がどれだけ離脱して弾劾という列車に乗り込むかがカギとなる。セヌリ党内では、非朴槿恵派を中心に弾劾論が広がってきた。弾劾論の中心に立った金武星(キム・ムソン)前代表は同日、「政権退陣の試みは、政府を転覆させることであるため、野党はそのような行為を中断し、国会で大統領の憲法違反の事案に対する弾劾訴追を進めなければならない」として、大統領弾劾を重ねて主張した。
今月15~16日「国民日報」の調査に応じたセヌリ党議員101人のうち27人が、弾劾の手続きに入るべきだと回答し、このうち18人は弾劾案の可決に賛成する意向を明らかにした。最近、非朴(槿恵)系一部の離党が現実化する兆しと弾劾論がかみ合う可能性も排除できない。特検・国政調査の進行に合わせて連鎖的離党が行われれば、弾劾の動きが急浮上する可能性もある。