取り立ててごちそうのなかった与党の秋夕(チュソク)の祭祀の膳に、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長という「贈り物セット」が再び舞い込んできた。「来年1月中旬以前に帰国」、「(国民に報告する)機会があればうれしい」など、大統領選に向けた動きと解釈できる政治的メッセージが多かった。支持率5%(韓国ギャラップ調査)の敷居を越えられないセヌリ党の大統領選候補者らにしてみれば、これに伴い自分の名前が上がり下がりする「苦い楽しみ」を味わいながらも「潘基文主流論」をどうすることもできない厄介な状況が繰り返されている。
秋夕の連休最終日の18日、政界は米国にいる潘総長を再び話題に上げることになった。15日、議員外交の折に米国を訪問したチョン・セギュン国会議長と与野党3党の院内代表がニューヨークで潘総長に会った際に話が持ち上がったためだ。「お膳立て」を主導したのは、潘総長と同じ忠清道圏出身であるセヌリ党のチョン・ジンソク院内代表だった。チョン院内代表は「国際舞台で10年間積み上げた経験と経綸、知恵を国内問題と未来世代のためにも使っていただきたい」と注文したうえで「帰国した後、国民に大々的に報告すべきではないか」と話し、潘総長は「(そのような)機会があればうれしい」と答えた。同院内代表はまた、「決心したら、歯を食いしばってしなければならない」という金鍾泌(キムジョンピル)元国務総理のメッセージを潘総長に伝えた。同院内代表は、訪米直前にソウルの青丘(チョング)洞の金前総理の家を訪問し、このようなメッセージを預かったものと伝えられる。
また潘総長は、共に民主党のウ・サンホ院内代表が帰国時期を聞いたところ「1月中旬以前」と答えた。任期が今年12月31日であることを考えると、10年の国連生活を終えてすぐに帰国するという意志を表わしたものだ。潘総長は昨年5月、わずか6日間の訪韓日程の間に大統領選出馬を強く示し、政界を沸かせた。以後、6~9月の4カ月連続で韓国ギャラップの「次期政治指導者」選好度調査で、与野党あわせて1位(支持率26~28%)を占めた。同じ期間、セヌリ党の有力な大統領選候補であるオ・セフン前ソウル市長(5%)、キム・ムソン前セヌリ党代表(2~3%)は勢いを伸ばすことができなかった。 ユ・スンミン議員、ナム・ギョンピル京畿道知事、ウォン・ヒリョン済州道知事もすべて5%以下にとどまっている。
あるセヌリ党の忠清地域の議員は「今回も嶺南(慶尚道)圏出身が大統領になれば、盧武鉉(ノムヒョン)、李明博(イミョンバク)、朴槿恵(パククネ)大統領に続き4回連続となる。『また嶺南圏か』、『嶺南圏はもうないだろう』という世論が多い」と語った。潘総長を単に「忠清(出身大統領)待望論」の候補としてでなく、「非嶺南圏」と規定し、拡張性を最大化する意図とみられる。同時に、セヌリ党のキム・ムソン、ユ・スンミン議員をはじめ、共に民主党のムン・ジェイン前代表やパク・ウォンスンソウル市長、キム・ブギョム議員にも「また嶺南」というレッテルを貼ろうとの本音も読み取れる。
ほとんどが非朴槿恵系であるセヌリ党の大統領選候補としては、党指導部が米国まで行き「潘基文祭り上げ」をすることに対し、「現在としては仕方がない」という反応だ。オ・セフン前ソウル市長はハンギョレとの通話で「国外におられる方が適切な時期ごとにメッセージを送り、国民の期待感を高めるポジティブな側面がある。セヌリ党の大統領選候補の党内選挙に大きな活力の素になるものと思われる」と述べた。キム・ムソン前代表側は「現在の与党の厳しい難局を突破する唯一のカードは潘総長しかない。野党の有力な大統領選候補に注がれる国民の関心を与党に引き込むには良い」と述べた。
しかし、結局「潘基文=焚き付け」という認識は依然としてある。潘総長がいざ選挙舞台に上がれば、検証の過程で持ちこたえられないだろうという見通しだ。ともすれば、これが潘総長以外のセヌリ党候補らの「期待混じりの本音」に近いだろう。ある大統領選候補側関係者は「まだ政界に足を踏み入れていない状況で20%後半の支持率は評価すべきだが、逆に30%を超えられないという限界も明白だ」とした。別の大統領選候補側の人物は「2002年1月の李会昌(イフェチャン)、2007年1月の高建(コゴン)、2012年1月の安哲秀(アンチョルス)も、すべて支持率1位だったが、その年の大統領選では誰も大統領になれなかった」と語った。
キム・ナムイル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
韓国語原文入力:2016-09-18 21:51