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訪韓した国連事務総長、大統領選に向けあからさまな選挙活動

登録:2016-05-30 02:40 修正:2016-05-30 06:23
「忠清待望論」に応え「嶺南連合論」にも同調 
「与党に大統領候補いない状況で 
潘事務総長が機先を制す効果」
29日午後、慶尚北道安東河回村を訪問した国連の潘基文事務総長(中央)と夫人のユ・スンテク氏が西涯・柳成龍宗家宅の忠孝堂で慶尚北道と河回村が用意した樹木を記念植樹している=安東/聯合ニュース

 

 国連の潘基文(パンギムン)事務総長が、週末の28〜29日の2日間にわたり、あからさまに政治的な動きを展開した。忠清圏(忠清南道と忠清北道)の政界を代表してきた金鍾泌(キムジョンピル)元首相に会い、与党支持基盤の慶尚北道地域を訪問した。政界周辺では「訪韓の目的自体が大統領候補としての自分の位置を印象付けるためではないか」と言われている。

■憚ることない政治的な動き

 29日、潘氏が訪れた慶尚北道安東(アンドン)河回村の入り口には、満面の笑みをたたえる彼の顔が印刷された横断幕がかかっていた。乗用車から降りる彼を、この地域が選挙区のセヌリ党のキム・グァンリム党政策委議長が迎えた。潘氏は、壬辰倭乱(文禄慶長の役)当時に領議政を務めた西涯・柳成龍(リュソンリョン)の宗家宅の忠孝堂で記念植樹をした後、「西涯・柳成龍先生の深い忠義の精神と透徹した公職者の精神をたたえ、みんな一緒に国の発展のために進んでいくことを願う思いでここを訪問した」と述べた。芳名録にもそうした趣旨の文章を書き残した。潘氏は「大統領選挙への挑戦と関連するのか」という取材陣の質問に、笑顔を見せるだけで、何も答えなかった。潘氏はキム・グァンヨン慶尚北道知事とキム・グァンリム議長などとの昼食会後、河回村から車で5分の距離にある慶北道庁新庁舎を予告もなく訪問した。夕方には慶州(キョンジュ)に移動し、国連NGOコンファレンスの歓迎夕食会に出席した。1日でセヌリ党の支持基盤となる慶尚北道の二つの地域を訪れたのだ。

 前日の動きはさらに異例なものだった。忠清北道陰城(ウムソン)出身の潘氏は28日午前、ソウル・新堂(シンダン)洞の金鍾泌元首相の自宅を電撃訪問した。「来年に韓国市民に戻ったら何をすべきなのかよく考える」と大統領選挙への出馬を強く示唆してから3日後に、忠清を代表する政治家の金元首相に会ったのだ。当初、政界では、潘氏が「忠清待望論」など様々な政治的解釈を懸念し、金元首相と会わないというのが大方の予想だった。しかし、面会を提案したのは潘事務総長側だった。2人だけで30分間話し合ってから、潘氏は記者団に「国家の元老であり大先輩だから挨拶を申し上げるために立ち寄った」と述べた。 大統領選挙や忠清待望論に関して話をしたか」との問いに「そのような話はなかった」と答えた。しかし、金元首相は「秘密の話をした」と答え、含みを持たせた。潘氏は重要な問題がある度に、金元首相と相談してきたとされる。仁川大学のイ・ジュンハン教授は「忠清出身で政界を目指す人は、ほとんど忠清の盟主としての象徴性がある金元首相を訪ねる。大統領選挙出馬を既成事実化するためでなければ、会う理由がない」と指摘した。

 同日の夕方、潘氏はコ・ゴン、ノ・シニョン、イ・ヒョンジェ、ハン・スンス元首相と辛東彬(<シンドンビン>重光昭夫)ロッテグループ会長、キム・デジュン「朝鮮日報」顧問など、政財界、言論界の元老級人物14人とソウル小公洞(ソゴンドン)のロッテホテルで、2時間ほど夕食会を開いた。参加者は「主に国連の活動について話しただけで、大統領選挙や国内政治に関連した話は全くなかった」と言及を控えた。ノ・シニョン元首相は潘氏が師と仰ぐ人物だ。

国連の潘基文事務総長が28日午前、ソウル・新堂洞の金鍾泌元首相の自宅を訪ねた=連合ニュース

■「半々ではなく『大統領選挙70%の事務総長』」

 政界では、潘氏の動きが予想よりあからさまで、早いうえに、緻密な準備の下に行われていると分析する向きがある。あるセヌリ党のソウル地域の議員は、「潘事務総長は事実上、大統領選挙への出馬宣言を決心して訪韓したと思われる」とし、「総選挙惨敗後に党内に大統領選挙候補がいないなか、はっきりと自分の存在を際立たせることで機先を制す効果を狙ったようだ」と述べた。明知大のキム・ヒョンジュン教授は「大統領選挙までの日程を考えると、今年の年末までには出馬準備、来年7月までには党内の予備選挙、8〜12月が本選だ。潘事務総長としては第1段階である今、来年の大統領選挙に出馬することを知らせるのが最大の戦略」と指摘した。彼は「セヌリ党が総選挙で勝利したなら、来年の初め頃に出馬宣言を先送りしただろうが、状況が変化したため前倒ししたようだ」と分析した。

 セヌリ党の親朴槿恵(パククネ)派の一部が構想する「大邱・慶北(TK)と忠清」連合の構図に、潘氏が積極的に応えているという分析もある。忠清北道が選挙区のチョン・ウテク議員は「潘事務総長はもはや『半々事務総長』ではなく、大統領選挙出馬に傾いた『60〜70%事務総長』になった」とし、「特に金鍾泌元首相に会い、慶尚北道の安東と慶州を訪れたのは『大邱・慶北と忠清』というメッセージを送ることを意味する」と指摘した。

 事前に大統領府との疎通があったとする分析もある。潘氏の広範な動きは、朴槿恵大統領がアフリカとフランス歴訪で国内不在の状況で行われている。明知大のシン・ユル教授は「総選挙敗北後、権力と党内秩序も維持するための方法で、大統領府が潘事務総長に『あなたが未来の権力だ』というメッセージを送り、潘氏もこれに応えた可能性がある」と分析した。

 しかし、あからさまで、何憚ることのない彼の政治的な動きをめぐり懸念の声も高まっている。特に地域主義に頼ったような動きには批判が多い。あるセヌリ党のソウル地域の議員は、「国連という国際機関の首長である人が、自ら金元首相に会って忠清待望論という地域感情を煽り、慶尚北道地域を訪問して地域情緒に頼っている。典型的な旧態依然とした政治」と批判した。潘氏を迎え入れるのに積極的なセヌリ党のホン・ムンピョ事務総長も「忠清待望論を強調しすぎではならない」とし、「度が過ぎると逆効果になる可能性があるため自制すべきだ」と懸念を示した。潘氏の言葉と行動が先走ることで、早くから検証されるようになり、今後予想される政界再編の過程で「親朴派候補」として孤立するおそれもある。

ソン・ヨンチョル記者、安東/キム・イルウ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-05-29 21:17

https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/745951.html 訳H.J

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