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知能情報社会で減る雇用…代案はベーシック・インカムか

登録:2016-07-19 00:16 修正:2016-07-19 07:37
未来創造科学部「知能情報社会対策」の草案に含める 
福祉部も内部で関連内容を検討 
共に民主党代表、「アジェンダ2050」など政界でも関心 
「理念から制度や政策の段階に移行すべき時」
7月7日、ソウル麻浦区の西江大で開かれた「基本所得地区ネットワーク」世界総会で話を交わす共に民主党の金鍾仁・非常対策委員会代表(右)とカン・ナムフン教授=イ・ジョンウ先任記者//ハンギョレ新聞社

 先月初め、K教授は政府主宰のワークショップに参加し、政府の配布した文書を見て驚いた。このワークショップは、政府が準備中の「知能情報社会に対する中長期総合対策」の草案をもとに、各界の専門家や関係部処の意見を聞くために未来創造科学部が主宰したものだった。この総合対策は10月に発表される予定で、人工知能(AI)など未来の知能情報技術の変化に備え、政府の各部処ごとの実行戦略が盛り込まれる計画だ。

 この日、未来部が配布した草案には、知能情報社会の対応策の一つとして「ベーシック・インカム」が提示されていた。K教授は「ワークショップに参加した保健福祉部の関係者が『ベーシック・インカムが対策に含まれているという話を聞いて驚いて駆けつけた』と言い、ベーシック・インカムの導入について否定的な意見を打ち明けた」と話した。K教授は「政府がベーシック・インカムを取り上げたという事実自体が驚くべきことで興味深い」と語る。未来部の関係者は18日、ハンギョレの電話取材に対し「総合対策と関連して専門家と議論する過程で、雇用と福祉の面からベーシック・インカムの議論も必要だという意見が出たため概念を整理しただけ」とし、「最終案には含まれないようだ」と答えた。ベーシック・インカムは、財産の多寡や労働をしているかどうかに関わらず、すべての国民に一定の所得を条件なしで支給する制度だ。先月初め、スイスがすべての成人に月2500スイスフラン(約27万円)を与える案を国民投票にあげ、韓国でも大きな関心を集めた。雇用がなくなる「アルファ碁時代」において、ますます必要性の高い福祉制度だという声も上がっている。草案とはいえ、政府の対策の一つとして取り上げられたのは、ベーシック・インカムが一部の学界や市民団体で議論されるレベルを超え、政策の検討対象になっていることを裏付け注目される。ベーシック・インカムともっとも政策的な関連の深い部処である保健福祉部もベーシック・インカムの議論に注目し、部内で関連する内容を検討している。福祉部の関係者は「スイスの国民投票をきっかけに上部(長官、次官)もベーシック・インカムについて気にしはじめ、各国でどう推進されているかなど内部で勉強を行った」と話した。キム・ヘジン福祉部福祉政策課長は「国ごとにも条件が異なり、一国家の中でも保守陣営と革新陣営が構想する内容が異なるので、関連してどのような意見があるのかを把握している」としたうえで、「ただし福祉部が何か具体的な政策を推進したり検討しているという段階ではない」と述べた。保健福祉部傘下の国策研究機関である韓国保健社会研究院も、自主的にベーシック・インカムの研究を計画していることが分かった。

 政界の関心も高まっている。共に民主党の金鍾仁(キム・ジョンイン)代表は、先月27日、国会交渉団体の代表演説で「世界的に不平等と格差を解消する方法の一つとしてベーシック・インカムについての議論が始まったということに注目しなければならない」と述べたのに続き、7日、ソウルで開かれたベーシック・インカム地球ネットワーク大会でも祝辞を述べたことで注目を集めた。セヌリ党のキム・セヨン議員は、自ら主導して先月発足した超党派国会研究会「アジェンダ2050」の主な議題としてベーシック・インカムを提案した。国民の党の政策委員会も11日、ベーシック・インカム関連の日々懸案報告書を準備し、内部で議論を行った。

 ベーシック・インカム韓国ネットワークのアン・ヒョサン理事は「賛否を超え、政府や政界など各界でベーシック・インカムについての関心が増えたのは、既存の成長と福祉のパラダイムが限界に達したことが認識されるようになったためと見受けられる」と指摘し、「いまやベーシック・インカムの議論は理念的、倫理的な論議から制度的、政策的な段階に移行すべき時だ」と語った。

イ・チャンゴン専任記者、ノ・ヒョンウン、ファン・ボヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2016-07-18 21:56

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/752864.html 訳M.C

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