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「基本所得が不安定労働時代の危機を克服する最善の代案」

登録:2014-07-06 21:04 修正:2014-07-07 07:36
基本所得地球ネットワーク大会 参加記
カナダ モントリオールで最近開かれた基本所得地球ネットワーク世界大会で、参加者がヨーロッパ連合の基本所得制度導入のための署名運動とスイスの事例について話を交わしている。

労働中心の福祉制度は限界に直面
インド8ヶ村での実験事例 大きな反響

 6月27~29日(現地時間)の3日間、カナダ モントリオールのマクギル大学で‘経済(財)民主化’という主題で、第15回基本所得地球ネットワーク(BIEN)世界大会が開かれた。 ‘基本所得’は国家が年齢、性別、貧富、職業の有無に関わりなく人間らしい暮らしが可能な現金所得を国民全員に保障する制度を称する。 1986年基本所得ヨーロッパネットワークから出発した基本所得地球ネットワークは、50余ヶ国に会員団体があり、基本所得韓国ネットワーク(BIKN)もその一つだ。 会員団体はこれまで2年に一回ずつ集まって、各国の福祉、労働、移住、性不平等、財政、生態、金融資本主義の問題など多様な主題と事案を共に討論してきた。

 今回のカナダ大会には、基本所得地球ネットワークの創立者であり<無償昼食の何が問題か?>の著者であるベルギーのフィリップ・ヴァン・パリース教授、カール・ポランニーの娘であり経済学者であるカリ=レヴィット博士、アメリカの著名なフェミニスト政治学者キャロル・ペイトマン教授など約150人が参加した。 韓国からもカン・ナムン韓神(ハンシン)大教授、クァク・ノワン ソウル市立大教授ら会員たちと筆者も共に発表者として立った。

 参加者たちは新自由主義にともなう富の両極化が全世界的に加速化していることを確認して、私的消費が増加した反面、政府の公的消費は減るという危険な傾向に対して集中的に話を交わした。 特に今年は不安定労働者(プレカリアート)の急増、民主主義の悪化、市民的自律性の悪化、労働中心の福祉制度の限界などに対する議論が関心を引いた。

 基調演説の一つとして2010~2013年の間に二度にわたり進行されたインドの基本所得実験事例に対する発表は大きな反響を呼び起こした。 インドの‘自営業女性組合’(SEWA)会長であるレナナ・チャバラと、基本所得地球ネットワーク名誉共同議長であり英国ロンドン大学開発学科教授であるガイ・スタンディング教授が一緒に行った発表であった。 発表によれば、ユニセフ(UNICEF)、ニューデリー市、UNDPの基金を受けて合計8か村で大人は200ルピー(1人月生計費の30%に該当)、児童は100ルピーを1年間毎月現金で支給した結果、家庭経済と地域経済が活性化したことはもちろん、教育参加度が高まって貧困階層と女性の自律性が強化されるという非常に大きな変化が起きたという。 これは基本所得が単なる夢想ではなく、現実的企画であることを証明する成果だ。 チャバラ会長は「基本所得をいくつかの小さな村を対象に低水準で実施した結果がこういう変化をもたらすならば、国家全体を対象にきちんと実施された時にはどれほど途方もない肯定的変化をもたらすのか、容易に描いてみることができる」として、基本所得の社会変革的効果について力説した。 この結果は今年末に本になって出版される予定だ。

 不安定な境遇に置かれた人々を称する‘プレカリアート’階級の急増を分析してきたガイ・スタンディング名誉共同議長は、不安定労働者の急増に対して「現在、全地球的資本主義経済体制が持っている体制の問題による結果」だとして「十分な福祉体制が用意されている社会であれ、そうでない社会であれ、プレカリアート化の流れが共通して現れている」と強調した。 今回の大会で福祉国家の限界に対する話があふれ出たのも、それだけでは不安定労働の急増は解決されないという問題意識と関連している。 例えば、今回大会が開かれたカナダは、貧困層など疎外階層支援福祉だけでなく、65才以上のすべての市民に少なくともカナダドル貨で1000ドル(約100万ウォン、10万円)を毎月生活費として支給している。 無住宅老人には月30万ウォン(約3万円)程度で賃貸アパートを貸与し、無償訪問薬配達など福祉制度がよくできている社会だ。 しかし、カナダ医療協会前会長であるエナ・リード博士は「疾病の70%が貧困と関連があるにも関わらず、カナダでは全国民の6分の1、全児童の7分の1が貧困状態に置かれていて、75才以上の女性老齢人口もまた急増している」と説明した。 彼は「貧困は個人の問題ではなく構造的暴力の結果であり、国民が病気に苦しむほど社会的費用もまた大きくなるということを全ての政府が直視しなければならない」と力説した。 カナダで1970年代に実施し、現在一つの基本所得モデルとして提示されてもいる「‘年所得保障政策’(Guaranted Annual Income)を実施した間、入院・事故率が減少した」という。

 資本主義が経済体制として席を占めて以来、すべての人々は賃金労働者、または資本家として生きていく人生だけを想像してきたし、国家はこれ以外の例外的状況に置かれた個人を支援する方式として福祉制度を運用してきた。 スウェーデン、フィンランドなど水準の高い福祉制度から、アメリカなどの低い水準に至るまで、これまでの社会安全網は‘正規職種完全雇用’を前提としたいわゆる労働福祉(workfare)に他ならなかった。 しかし1997年以来、韓国でも登場し始めた多様な非正規職雇用形式が急激に拡散しており、労働貧困層(ワーキングプア)と非雇用あるいは無所得状態の労働(インターン、映画スタッフなど)もまた急増している。 地球全体がこのような状況に置かれている中で、基本所得は世界的にますます強力で唯一の代案として評価されつつある。 モントリオール/文・写真 パクイ・ウンシル 韓神大研究教授・基本所得韓国ネットワーク運営委員

https://www.hani.co.kr/arti/culture/religion/645661.html 韓国語原文入力:2014/07/06 19:59
訳J.S(2554字)

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