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韓国国会立法調査処、雇用減少対策で基本所得の議論を提案

登録:2016-04-10 22:34 修正:2016-04-11 07:10
2014年6月27~29日にカナダのモントリオールにあるマギル大学で開かれた基本所得地区ネットワーク世界大会の参加者たちが、欧州連合の基本所得制度の導入に向けた署名運動とスイスの事例について話し合っている//ハンギョレ新聞社

国会立法調査処の報告書で
製造業の割合高く社会保障弱い
変化に対応しないと長期不況の懸念

欧州では基本所得の議論活発
フィンランドは来年から施行
スイスは国民投票
国内でも「生活のセーフティネット」導入の主張

 国会立法調査処が、韓国でも基本所得(basic income)についての議論を始めるべきとする内容の報告書を発表し、注目を集めている。

 国会立法調査処は、10日に発表した報告書「基本所得導入の議論と示唆点」で、「韓国は産業構造の製造業の割合が50%に迫る代表的な製造業の国であり、自動化などの影響を大きく受ける可能性がある一方、雇用の減少に対応する社会保障は充分に整っていない」と診断した。そのため「構造的雇用減少の対応策の一つとして、基本所得について議論を始める時期」だと主張した。基本所得は、資産、所得、働いているかどうかに関係なく、すべての国民に一定の所得を保証する制度だ。

 同報告書は、欧州での議論の経過を紹介しながら、基本所得が不可能な制度ではないという事実を明らかにした。フィンランドは昨年10月から基本所得のための予備研究を始め、今年下半期に実験モデルを決定した後、2017年から施行する計画だ。フィンランド政府は、「完全基本所得」や「部分基本所得」、「マイナス所得税」(一定の基本所得に満たない場合、所得を保全する制度)など、さまざまな基本所得保障案について研究を進めている。スイスは今年6月、すべての国民に月2千500フラン(約300万ウォン)を支給する基本所得案をめぐり、国民投票を実施する予定だ。同報告書は英国とオランダなどでも基本所得の導入をめぐる政策づくりが進められていると伝えた。

 同報告書は、基本所得に注目すべき理由として、技術発展に伴う雇用の変動を第一に挙げた。自動化と人工知能(AI)などによる雇用減少の危機感が基本所得の議論に主に影響しているということだ。

 今年1月、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)で発表された「未来雇用報告書」は、人工知能とロボット、モノのインターネット(loT)、自律走行車などの技術革新により、今後5年間で、全世界で500万の仕事が消えると予測した。同報告書は技術の進歩による「第4回産業革命」が進行しているとして、急激な変化に適切に対応しなければ、高い失業率や所得格差、消費の減少に伴う長期不況を経験するだろうと警告した。米国の代表的なシンクタンクのブルッキングス研究所も最近、ホームページに「基本所得を真剣に検討してみる時期」という文を掲載し、議論を主導している。

 国内でも基本所得の導入を求める主張が出てくる。韓神大のカン・ナムフン教授(経済学)など、革新志向の経済学者たちが中心の「基本所得韓国ネットワーク」は、先月「総選挙における基本所得の議題化」を求めた。彼らは「人工知能が人間の労働を代替する現実で、不安定労働と失業は今後さらに大きな問題になるだろう」とした上で、「これまで以上に切実に生活のセーフティネットが必要だ」と主張した。

 国会立法調査処の報告書は、「基本所得の導入を通じて貧富の格差の減少と福祉管理費の削減、福祉死角地帯の解消など、様々なプラスの効果が予想される」と指摘した。ただし、「韓国の公共福祉予算の割合(2014年末基準、OECD平均21.6%、韓国10.4%)などからして、欧米の福祉国家とは(条件が)異なるだけに、基本所得の議論は死角地帯の解消などの福祉制度の強化に重点を置くべきだろう」と提案した。

ノ・ヒョンウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2016-04-10 20:27

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/739094.html 訳H.J

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