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大統領の意向に沿う北朝鮮情報を生産する国家情報院

登録:2016-05-12 00:43 修正:2016-05-12 07:20
情報当局が出した過去の誤報事例 
大統領府//ハンギョレ新聞社

大統領が「崩壊」と言えばその通りに 
代表的な失敗が「金日成死亡説」 
「ソウル水没」貯水量は6倍に増えたことも

 韓国政府が「死亡した」と発表した北朝鮮人が生きて帰ってきた事例は、李永吉(リヨンギル)前朝鮮人民軍総参謀長が初めてではない。過去にも多いが、代表的な事例は1986年の「金日成(キムイルソン)死亡説」だろう。 1986年11月17日、当時のイ・フンシク国防部報道官は、「北朝鮮の対南拡声器から金日成が銃撃で死亡したという放送が流れた」と発表した。その日の夕刊1面は「金日成銃撃で死亡」(東亜日報)、「金日成殺害」(京郷新聞)の一色だった。翌日まで待てなかった朝刊は号外を配った。「金日成死亡説」を(他紙より)1日早い11月16日付で報じた「朝鮮日報」は、11月18付の12面のうち、7つの面を「スクープ記事」を含め、金日成の死亡記事で埋め尽くした。

 ところが、11月18日、UPI通信が北京発で金日成主席が平壌(ピョンヤン)順安空港でモンゴルの国家元首、ジャムビン・バーツムンフ総書記を迎接したと打電した。夕刊は前日の報道を180度ひっくり返し、「金日成、平壌空港に現れる」(東亜日報)、「金日成は生きている」(京郷新聞)という記事を1面トップに掲載した。

 「失敗した情報」には理由がある。よくある誤解とは異なり、その情報には価値が介入していた。情報は党派的である。すべての国の情報機関は、「最上位の情報ユーザー」である最高権力者の政策基調や好みに「情報」を合わせる。最高権力者が、北朝鮮の崩壊を確信していると、その確信を支える「情報」が量産される。 1994年の金日成主席死亡後、当時の金泳三(キムヨンサム)大統領が北朝鮮を「故障した飛行機」に喩えたとき、安全企画部(現国家情報院)は、北朝鮮崩壊の「証拠」を相次いで提示した。当時の高官は「早ければ3日、長くても3年」と北朝鮮の崩壊を予測した。

 最高権力者の意向に合わせた「情報ねつ造」も少なくない。 金日成死亡誤報事態の1カ月前の1986年10月、全斗煥(チョンドゥファン)政権は、1988年のソウルオリンピックを妨害するために北朝鮮が建設している金剛山ダムが破壊されれば、ソウルが水没すると発表した。安全企画部は当初、このダムが農業・工業・生活用水の供給と水力発電のためのダムと判断したが、全斗煥政権のナンバー2であるチャン・セドン安全企画部長が北朝鮮の「水攻リスク」を強調するよう指示した。安全企画部は、米国工兵水路局が37億トンと推算したこのダムの貯水量を、「最大200億トン」まで膨らませた。このような事実は、1993年に行った監査院の監査で明らかになった。

 2001年の米同時多発テロ直後、イラク侵攻の口実を見つけるのに血眼になっていたジョージ・ブッシュ米政権も、躊躇うことなく「情報ねつ造」を行った。米国防情報局(DIA)が「カーブボール」というコードネームを付けたイラク反政府人物の「フセイン政権が生物化学兵器など、大量破壊兵器(WMD)を多量持っている」という主張を検証もせずに、パウエル国務長官が国連安全保障理事会の会議でイラク攻撃の名分として提示した。以降、ブッシュ政権は、イラクからいかなる大量破壊兵器も発見できなかった。

イ・ジェフン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-05-11 19:16

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/743411.html 訳H.J

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