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[コラム] “ヒョン・ヨンチョル諜報”と国家情報院の情報商売

登録:2015-05-18 08:12 修正:2015-05-18 10:33
朝鮮中央テレビが11日放送した記録映画「敬愛する最高司令官金正雲同志が人民軍事業を現地で指導、主体104年(2015年) 3月」に先月30日粛清したと伝えられたヒョン・ヨンチョル人民武力部長(円内)が登場している=朝鮮中央通信・聯合ニュース

 ヒョン・ヨンチョル北朝鮮人民武力部長粛清説が報道される過程は、非正常な現在の国家情報院のあり方をそのまま露呈させた。我が国(韓国)の最高情報機関である国家情報院が、確認されない諜報で本格的な“情報商売”を始めたからに他ならない。

 国家情報院は13日午前8時30分、国会情報委に「ヒョン・ヨンチョル北朝鮮人民武力部長が反逆罪で銃殺された」と報告した。急ごしらえで報告日を定めたため、与野党の議員もあまり集まらず、報告も30分ほどで持参した資料を読む水準で終わったという。その1~2時間後、国家情報院北韓部長は、見学のため国家情報院を訪れた約30人の記者に同じ内容をブリーフィングした。この場にハン・ギボム1次長が直接現れ、記者の前でマイクをとり“ヒョン・ヨンチョル銃殺説”に関する詳しい説明までしたという。

 国家情報院を訪ねるだけのつもりで何週間か前に見学申請をした記者たちは、思いがけない特ダネを得るこになった。国家情報院はヒョン・ヨンチョル処刑説がまだ諜報レベルという但し書きを付けたが、まもなくマスコミで大々的に報じられた。以後、我が国は言うまでもなく全世界で主要なニュースになっていく。

 こうした流れは2013年12月3日の国家情報院のチャン・ソンテク失脚説の報告の時とも様相を異にする。当時も国家情報院はマスコミプレイを疑われる行動をしたが、今回のように露骨な行動はとらなかった。今回のマスコミプレイは、国家情報院が情報機関として犯してはならない一線を越えてしまった。

 何より、国家情報院のこうしたマスコミプレイは、国家情報院本来の任務を考慮すれば不適切だ。国家情報院は、国家の発展および尊位に関連した重要な情報を収集している。 その情報はまず、大統領府や統一部など政府に報告され「国家戦略」を組むために活用されねばならない。“日陰”で働き、国の発展に役に立つことをするのが、国民が期待する真の国家情報院の姿だ。ところが国家情報院は、前回の大統領選挙時のコメント工作などで国民の信頼を失い、本来の任務を忘れ、自らの存在感を誇示しようと、世間を驚かす演出に重点を置こうとしているようだ。そんなことなら規模の大きな興信所であるにすぎず、国家情報機関とは呼べない。

 第二に、諜報を利用した“商売”はいずれ国家情報院の信頼にも大きな傷となるだろう。国家情報院も認めたように、ヒョン・ヨンチョル処刑説は情報ではない“諜報”だ。 諜報を利用した彼らの商売に接した国民は、国家情報院の意図に大きな疑惑を持つようになる。今回も「ソンワンジョン・リスト」隠しのためではないかといった様々な疑惑が沸き起こっている。

 さらに問題なのは、諜報が誤っていた場合の時だ。諜報は間違えることもあるので、情報ではなく諜報と分類される。ヒョン・ヨンチョル処刑説が間違った諜報だったなら、国家情報院が被る被害は甚大だ。さらに我が国が世界から受けることになる不信も計り知れない。南北関係の犠牲は言うまでもない。にもかかわらず情報でもない諜報で“商売”を敢行した国家情報院の本音が何か伺い知れる。

 第三に、国家情報院の今回のマスコミプレイは、国会情報委員会の地位と関連した議論も呼び起こすことになる。情報委は国会が国家情報院を微力ながら統制する装置として設けられた。ところが今回のヒョン・ヨンチョル処刑説のマスコミプレイのあり方は、国家情報院がマスコミプレイをしながら情報委をアリバイ用機構のように活用した。国民からはこんな情報委がなぜ必要なのかと疑問をもたれる。

キム・ボグン ハンギョレ平和研究所長 //ハンギョレ新聞社

 今回の国家情報院のマスコミプレイは、イ・ビョンホ国家情報院長体制で初めての作品だと言われる。初めての作品だから「良く育つ木は双葉を見れば分かる」という諺を想起させる。イ院長体制の国家情報院に対する国民の憂慮がより高まる前に、国家情報院は諜報商売の誘惑から抜け出し、本来の任務に戻ればよい。

キム・ボグン ハンギョレ平和研究所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-05-17 20:42

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/691564.html 訳Y.B

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