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[記者手帳]病院費が心配になる韓国の健康保険

登録:2016-04-20 01:09 修正:2016-04-20 07:40

 健康保険に加入していても、2014年基準で病院費の63%程度を健康保険で賄い、残りは患者の個人負担だ。 病院費が100万ウォン(約10万円)だったとすれば、37万ウォンは患者が払わなければならないという話だ。 この程度の支援比率は軽い疾病ならば患者の負担も大きくはないが、突然の重病で数千万ウォンの病院代がかかれば、特に庶民層の患者には支払い負担が非常に大きい。 借家保証金を取り崩したり、銀行などから金を借りて信用不良者になったり、家計破産に至ることもある。 家計破産に陥るほどの災難的な医療費を払わなければならない家計の比率は、韓国の場合は米国に比べれば低くはあるが、2008年基準で経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の7倍に達するという調査結果もあるほどだ。 結局、健康保険や政府など公共部門で支援する医療費比重が低いという話だが、2014年のOECD保健医療資料によれば、国民医療費のうち公共部門の支出比率はOECD平均が72%で、韓国は55%水準だ。 OECD加盟国の中で韓国より低い国は米国とチリのみだ。 高い国に属するデンマークやノルウェーは85%以上であり、その国で生まれたら例え病んでも病院費の心配はしないで暮らせる。

 健康保険の診療費支援比率が低い結果、国民はやむを得ず自己救済策として民間医療保険に加入した。 金融監督院の資料によれば、昨年上半期基準で韓国国民5人に3人の割合の約3150万人が実損填補型保険に加入している。 実損填補型保険をはじめとする民間医療保険に加入した世帯の比率は2012年基準で約80%に達し、世帯当り4.64種類の保険に加入して、月平均で約34万ウォン(約3万3千円)の保険料を払っていた。 2014年に世帯当りの月平均健康保険料が9万1000ウォンであることに比べれば、民間医療保険に3倍の保険料を払っていることになる。 最近では実損填補型保険の場合、保険金の支払いが大幅に増え損失が出ているとして、保険料を20~40%程度引き上げた。 民間保険会社の損害を算定する方式は保険加入者にはよく分からないので、保険料が上がってもやむを得ず払っている。 ところで健康保険公団が民間保険会社の損害率計算方式を見たところ、民間医療保険が中心の米国とは異なり保険会社に有利に策定されているという。 米国式計算法では20%ほどの利益を得ていた。 健康保険の場合、加入者が平均10万ウォンを支払い18万ウォン程度が返っていることに比べれば、民間保険の加入者が払った保険料が保険会社を肥らせているだけという批判も出ている。 近い将来、金融当局が民間保険会社の損害について点検をしてみるというので、それをじっくり見守らなければならない。

キム・ヤンジュン医療専門記者 //ハンギョレ新聞社

 より根本的な解決策は、民間保険に加入しなくても済むようにすることだ。 60%台はじめに留まっている健康保険の病院費支援比率を、ヨーロッパの多くの福祉国家のように80%以上に上げれば良い。 難しいことでもない。 現在多くの世帯で加入し、民間医療保険に払っている保険料を健康保険に回せば、今以上に払わなくてもヨーロッパ福祉国家のように病院費を心配せずに暮らせる。 だが、健康保険料の賦課方式の問題を直さなければ国民を説得するのは難しい。 所得と財産が多くとも、家族の中の誰かの被扶養者になりさえすれば健康保険料を一銭も払わずに済み、一方で所得がなくても保証金付き借家に住んで財産があると評価され月に5万ウォンずつ払うという現行賦課方式のままならば、健康保険料をより多く出すどころか現在の保険料を出すことも厭うだろう。 今回の総選挙で野党3党が健康保険料の賦課体系を改善すると公約した。 直ちに「三人の母娘」のような庶民の保険料負担は減らし、多く稼いでいる人からは保険料を多く集めるのが、健康保険の恩恵を広げる基礎になるので、必ず守るように願う。

キム・ヤンジュン医療専門記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/740404.html 韓国語原文入力:2016-04-19 19:14
訳J.S(1769字)

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