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韓国最高裁、政府の「民間人不法査察」被害者に5000万円の賠償命令

登録:2016-04-04 22:51 修正:2016-04-05 07:16
キム・ジョンイクKBハンマウム代表//ハンギョレ新聞社

国と査察関係者の責任認める 
「違法な公権力の行使で損害与えた」 

李明博政権当時、政府批判する動画掲載 
公職倫理支援官室から査察される 
圧迫で代表職を辞任し保有株の売却も

 李明博(イミョンバク)政権当時、首相室による「民間人不法査察」被害者のキム・ジョンイク前KB(国民銀行)ハンマウム代表(62)に、大法院(最高裁)が国と不法査察の関係者に約5億ウォン(4851万円)の損害賠償を命じる判決を下した。

 大法院2部(主審チョ・ヒデ大法官)は4日、キム氏と家族5人が国とイ・インギュ元首相室公職倫理支援官など7人に対して起こした損害賠償訴訟で、「被告たちがキム氏と彼の家族に5億2092万ウォン(約5054万円)支払う」ことを命じた原告一部勝訴の原審を確定したと明らかにした。大法院は、「キム氏が大統領と政府の政策を誹謗する文や動画をブログに掲載したという理由で、代表取締役を辞職させ、その保有株を他人に移転するようにした行為は、違法な公権力の行使」だとして、「国は所属公務員の違法な職務執行による損害を賠償する責任がある」と述べた。

 キム氏は、李明博政権当時の2008年に首相室公職倫理支援官室が行った不法査察の代表的な被害者だ。当時、キム氏は自身のブログに、李明博大統領を戯画化した「ジュィコ」の動画を掲載したという理由で査察を受けた。公職倫理支援官室はキム氏が動画をアップロードした経緯はもちろん、会社資金を横領したかどうかなどについて内査を行った。この過程でウォン・チュンヨン元公職倫理支援室秘書官は、国民銀行労務チーム長を訪ね、「キム氏を放置すれば、国民銀行の頭取も(この件から)無関係にはいられない」と脅迫した。以後、キム氏は、ブログを閉鎖したが、公職倫理支援官室はキム氏を代表取締役に退かせ、会社の株式も放棄するように継続的に圧迫を加えた。結局、キム氏はKBハンマウムの株式75%を安値で売渡した。

 キム氏は「民間人不法査察により代表取締役を辞任し、株式を安値で他人に譲渡した。また、(査察)の関連文書を隠匿し、コンピュータのハードディスクを損傷することで捜査を妨害し、真実究明を難しくした」として、国などに対し12億8500万ウォン(約1億2500万円)の賠償を求める訴訟を起こした。これに対し、1審裁判所は、一般的な代表取締役の任期からして、キム氏がさらに3年間は勤務できたとして、キム氏が受け取れなかった給与など、3億8592万ウォン(約3744万円)と慰謝料4000万ウォン(約389万円)を認めた。 2審裁判所は「この事件における不法行為は、民主主義の根幹を揺るがすおそれがある重大な不法行為であるため、同様の事件の再発を抑制・防止する必要性などを考慮した」として、キム氏の慰謝料を1審より6000万ウォン(約582万円)高い1億ウォン(約970万円)に策定した。家族に対する損害賠償の3500万ウォン(約334円)も認めた。ただし、原審はキム氏がKBハンマウムの実質的所有者と言えず、KBハンマウム株を売渡したことで損害を被ったとは断定できないと判断した。

 キム氏を代理するチェ・ガンウク弁護士は「刑事裁判で認めたキム氏の大株主と代表取締役の地位が民事裁判で否定された。この部分は、納得し難い」と明らかにした。これに先立ち、2013年、キム前代表を不法査察し、KBハンマウム株式の移転を強要し疑い(職権乱用と強要)で起訴されたイ・インギュ元支援官は懲役10カ月を宣告された。

ソ・ヨンジ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-04-04 20:01

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/738207.html 訳H.J

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