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識者に問う慰安婦合意の法的拘束力(3) 「日本は少女像移転を求められない」

登録:2016-01-15 12:24 修正:2016-01-15 12:51
[週刊ハンギョレ21] 
川上詩朗・人権弁護士
今年初めての1212回目の水曜集会が1月6日、ソウル鍾路区の「平和の少女像」を囲み開かれた=チョン・ヨンイル記者//ハンギョレ新聞社

 弁護士の川上詩朗氏(58)の最初の言葉は敢然としていた。「評価に値するものなどあるのか疑わしい。慰安婦被害者のお婆さんたちが要求したものが、一つも実現されなかった。今回の合意はきわめて不充分な内容であり、問題も多い」

 川上弁護士は12・28合意を条約でなく政治的妥結、または合意を宣言したものと解釈した。「ただし国家間合意であるから、国家の立場で見れば尊重しなければならない部分がある。今回の合意の拘束力問題に対しては、批准が必要な条約だと見る人はほとんどいないようだ。だから条約なのかどうかという議論自体はされていないようだ」

 川上弁護士は日本弁護士協会人権擁護委員会副委員長、人権救済調査室長などを歴任した。2010年から韓国人慰安婦や強制動員の問題解決のため韓国人弁護士たちと交流している。1月5日、国会で開かれた討論会「緊急診断2015年韓日外相会談の問題点」に参加した川上弁護士に会った。

 条約でなく政治的妥結・合意と解釈しても問題があると川上弁護士は考える。「これで韓国政府の外交権が放棄されるのかという問題について考える余地がある。最終的かつ不可逆的な解決という文言が入ったためだ。これで外交権が放棄されたとみなされるのか検討する必要がある。『最終的かつ不可逆的』に終結するには、日本政府が名誉回復などの措置を着実に実行することを前提とする。逆に言えば、その前提を満たせなければ最終的かつ不可逆的でないということになる」

 合意内容を川上弁護士は二つの側面から分析した。「安倍政権の慰安婦問題に対する姿勢は、歴代内閣が継承してきた『河野談話』自体を修正しようと試みるものだった。それ自体で悪いものだが、今回の合意前まで(自身の思い通り)整理できなかった。安倍政権の姿勢を軸に考えれば、今回の合意は予想を超え(安倍首相の思い通り)一歩踏み出したと言える。しかし、日本政府が慰安婦問題に対し負わねばならない責任の認定と謝罪問題を軸に考えれば、過去に逆戻り(後退)した感じがする」

川上詩朗弁護士は「慰安婦問題の責任は今回の合意と関わりなく日本にある」と指摘した=ホン・ソクチェ記者//ハンギョレ新聞社

■日本から少女像の移転を求めることなどできない

 川上弁護士は被害者の賠償請求権は今も有効と考える。「韓日請求権協定第2条1項でも最終的解決という文言が問題になった。国家間合意を外交法上どう扱ったかとは別に、被害者個人の請求権問題は区別して議論されねばならない。従前の韓国政府の基本的な立場は『慰安婦被害者の個人賠償請求権は韓日協定で解決されていない』とのことだった。今回の合意で賠償請求権が放棄されたとし、それがどんな影響を及ぼすのかが一つの論点になるだろうが、結論から言えば、それは影響がなく放棄されるものではない」

 川上弁護士は平和の少女像の問題も国家間合意の問題ではないと断言する。「少女像は日本大使館前の水曜デモ1千回を記念して作られた。日本政府の慰安婦問題での対応がまともにされなかったのでできたものだ。したがって少女像移転は日本側から話せる問題ではまったくない」

 川上弁護士は今回の合意に関連し、解決方向がある程度決まっていると語る。「慰安婦問題の責任は今回の合意と関わりなく日本政府にある。現段階では、日本の外相の発言が単発的(漠然と)にされているだけの状態だ。再び合意をして、被害者が要求する内容を本当に受け入れるのか話し合わねばならない。被害者と市民の立場としては、この部分をずっと問い続けていかなければならない。その部分を確実にせず問題を(いい加減に)解決しようとすれば、合意の欺瞞性が明らかになるだろう」

 最後に川上弁護士はこう言い切る。「こんな形の合意は真の解決ではない。被害者と彼女たちを支援する団体、さらに幅広く韓日両国民が納得できて初めて最終的な解決になる。それは国家間合意と関係ない問題だ」

チョン・ジンシック、ホン・ソクチェ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-01-14 14:57

https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/726183.html?_fr=mt1 訳Y.B

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