「今まで言いたくても勇気がでず口に出せませんでした。いつかは明らかにしなければならない歴史的事実なのだから、打ち明けることにしました。むしろ気が晴れる思いです。今でも日章旗を見たら悔しくて、胸が痛みます。テレビや新聞でこの頃、日本が従軍慰安婦を連れて行った事実はないという話を聞く度に悲嘆に暮れます」
1991年8月14日。記者団に向かって話す間、金学順(キムハクスン)さん(当時67歳)は涙をおさえることができなかった。国内に住む「日本軍慰安婦被害者」で初めて真実を暴露した会見。ハルモニ(お婆さん)の金学順さんは毎月政府から米10キロと3万ウォンを受け取る生活保護対象者だった。ハルモニはこう話した。「政府は日本に従軍慰安婦問題に対する公式謝罪と賠償などを要求すべきだ」
この日以降、政府に登録された被害ハルモニの数は238人。歳月は無残に流れ、192人が亡くなり、現在生存している人は46人になった。みな90歳前後の高齢だ。金学順さんも耐え難い記憶を世に知らせた6年後の1997年に亡くなった。そして2015年12月28日。韓日外相が記者団の前に立った。誠実な履行を前提に「最終的かつ不可逆的」な合意妥結を宣言した。
ハンギョレ時事週刊誌「ハンギョレ21」は、12・28合意の法律的争点を探るため、国際法と人権法を専門にする韓日と在日コリアンの3人の識者に会った。結論は一つ、「無効」だった。なぜ12・28合意が、外交不祥事であり、屈辱的な合意であり、第2の売国的韓日協定であり、政治的取り引きであり、政権の野合なのか、識者の声を通じて明らかにされる。(編集部)
「政権が変われば破棄できる」。パク・チャンウン教授(54)の言葉は断固としていた。マスコミの報道資料があるだけで、公式的な「合意文書」が本当にないなら、今回の合意は法的拘束力がないためだ。「もし今回の合意が条約なら、韓国政府はこれ以上、日本政府に慰安婦問題を問えなくなる。だが非常に妙な合意形式をとった。むしろ条約の形式にしなかったのが幸いだ」
大韓弁護士協会人権委員会副委員長、国家人権委員会人権政策局長などを歴任したパク教授を、1月5日、漢陽大法学専門大学院研究室に訪ねた。
パク教授は法的な観点から、大統領府は“王手”をかけられたと指摘する。まず、条約でないと否定した場合。「大統領府が『法的拘束力がない政治的宣言』と認めたら、野党と市民団体はすぐに合意の破棄を要求できる。政府間の政治的宣言はいつだってひっくり返せる。そうした例は国際社会で多々ある」
反対に、単純な政治的宣言ではないと大統領府が主張した場合。その時は法的拘束力ある合意として成立する道が開かれるというのが、パク教授の説明だ。文書で合意内容を明示しなくても、口頭だけで法的効力を持つということだ。「条約という名称を使わず文書で合意しなくても、法的拘束力を持つ場合がある。『条約法に関するウィーン協約』第3条でその可能性が残されている」
■今回の合意で大統領が弾劾対象になる可能性がある
しかし今回の合意で大統領府が「法律的効力」を認めたら憲法違反となり、政府は違憲責任を負わねばならないとパク教授は主張した。「この合意は慰安婦被害ハルモニの権利を制限するため、憲法上、条約として締結して国会の同意を得ねばならない。だが政府は合意文もなく、両国外相がマスコミ発表という形をとる方便で国民の権利を制限する合意を日本と交わした。これは憲法違反だ」。パク教授は外交通商部長官の解任はもちろん、大統領も弾劾対象になると付け加えた。
パク教授は、朴槿恵(パククネ)政権と安倍晋三政権が合意の効力を主張し続けても、「無効」と正面から抗すことができる根拠があると説明した。国会同意を得ていないからではなく、国際法でも十分に可能だという。
「それが強行法規(jus cogens)の法理だ。これは絶対的規範であり、これに違反するいかなる行為も認められない。ウィーン協約第53条は、条約締結が強行法規に違反すれば無効だと規定している。戦時性奴隷犯罪は国際法上の強行法規に違反する代表的な犯罪だ。したがって、その犯罪の歴史的事実を隠したり、慰安婦被害ハルモニと同じ被害者の救済を制限する国家間条約や合意は、強行法規を違反するとみなせる」
パク教授は、結論的に12・28合意を法律的性格がある条約とはみなせないと語った。「合意内容が非常に粗雑で抽象的で多義的だ。語法も幼稚な水準だ」
韓国語原文入力:2016-01-14 14:57