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[書評]オックスフォード大ローズ銅像撤去運動から見た少女像移転問題とは

登録:2016-01-14 23:54 修正:2016-01-15 07:56
『経済学は人びとを幸福にできるか』 
宇沢弘文著、チャ・ギョンスク訳 
パラブックス(2015)
『経済学は人びとを幸福にできるか』 //ハンギョレ新聞社

 パクス・ブリタニカ(覇権国英国)時代の根っからの帝国主義者セシル・ローズ(1853~1902)。 世界ダイヤモンド生産量の90%を掌握し南アフリカの政治・経済を独占した後、今日の南アフリカ共和国を中心にジンバブエ・ザンビア(ローデシアとはローズの家の意)まで包括する南アフリカ連邦建設を夢見た彼の“栄光”がついに彼の祖国でも暮れ始めた。 先月オックスフォード大が学生たちの要求により彼の記念名札を外し、銅像も撤去することにしたという。 アフリカでも同じような動きが活発に起きている。

 オックスフォード大ローズ銅像撤去運動をリードしているのは、この大学に留学中の南アフリカ共和国出身学生クァベ。 アフリカを無慈悲に収奪したセシル・ローズの莫大な寄付金で作った“ローズ奨学金”のおかげでオックスフォードに留学中の彼を偽善者とし、金を返せという一部の批判に対してクァベは言った。 「私はローズ奨学金の受恵者ではない。 ローズが略奪した資源と奴隷で作った私の同胞の血と汗の受恵者だ」

 2014年に他界した日本の経済学者、宇沢弘文の『経済学は人びとを幸福にできるか』』にこういう話が出てくる。

 「パクス・ブリタニカは海軍力を基盤とした海賊的な資本主義が世界を制覇した時代であった(中略)。世界の随所でパクス・ブリタニカによる人間の破壊、社会の破壊、文化の破壊、歴史の破壊が起きた。 その被害は悲惨なものだった。 私はインドにしばしば行くが、その被害がまだ色濃く残っている。 インドの自然を破壊して歴史を破壊して文化と人間まで破壊した」

 1960年代中盤、英国ケンブリッジ大のあるカレッジに1年ほど教授(フェロー)を務めた宇沢氏は、悩んだ末にケンブリッジを去ることを決意する。 その理由の一つはカレッジの自由で闊達でアカデミックな雰囲気を支えているのが潤沢な配当金だという事実だった。 それはほとんど英国の植民地ローデシアに対する投資からの配当だった。 「英国の植民支配は(中略)著しく残虐で凄惨な被害を残したのであり、人間を徹底して絞り取り自然をむやみに破壊した。 その搾取と破壊を考えないわけにはいかなかった」

 宇沢の祖国である日本は違ったのか。 「良い植民支配」という形容矛盾を口にする者の意識は幼稚で稚拙だ。

 2014年1月、安倍晋三政権の報道官である菅義偉・官房長官は朝鮮侵略の元凶である伊藤博文を射殺した安重根を「テロリスト」だとして、ハルピン駅に「安重根義士記念館」を開館した中国に対して抗議した。 セシル・ローズと伊藤博文こそがテロリストではないのか。 日本の政府が安重根をテロリストと非難するのは、ドイツ政府がドゴールをテロリストと非難するようなものだ。

ハン・スンドン本の知性チーム先任記者 //ハンギョレ新聞社

 テロリストが彼らに抵抗した安重根を逆にテロリストに追い立てること、これが安倍政権の転倒した世界観の実体だ。 和解が不可能な相手は“日本”ではなく、そのような転倒した思考を持った者たちだ。

 日本軍慰安婦問題で“合意”して、そのような者から10億円(約100億ウォン)を受け取る代わりに少女像を撤去する約束をしたとのことが事実ではないことを願う。 2014年世界武器輸入1位の国が韓国だったし、その金額が何と78億ドル(約9兆1300億ウォン)だという。 情けない。 高性能米国産兵器を一つ買わないだけで10億円の10倍は出てくるのに。

ハン・スンドン本の知性チーム先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/726293.html 韓国語原文入力:2016-01-14 20:25
訳J.S(1639字)

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