「大統領を批判するビラを少し配っただけでここまで...。実刑宣告を受けるかも。ハハハ」
15日午前10時30分頃、大邱(テグ)拘置所面会室で会ったパク・ソンス氏(42、全羅北道群山<クンサン>在住)は虚しく笑いながらこう言った。草色の囚人服を着た彼の胸には「1084」という数字が太く書かれていた。パク氏は朴槿恵(パク・クネ)大統領を批判するビラを作って配ったことで、昨年5月11日拘束起訴された。ビラの内容のうち「チョン・ユンフェとのスキャンダルを隠すために公安政局づくりに乗り出したのか?」という部分などが朴大統領の名誉を毀損したという疑いだ。彼は群山の自宅から250キロメートル離れた大邱(テグ)拘置所に閉じ込められて8カ月目を迎えた。今月22日午前10時、1審宣告が予定されている。
大邱セヌリ党の前でのパフォーマンスが発端
当事者の朴大統領は告訴せず
警察が勝手に名誉毀損を捜査
出頭要請を送る度に容疑変わる
2回延長され6カ月間拘束
期間終了間際に集示法違反の追加令状
「こんなに信頼できない裁判は初めて
大韓民国の国民であることが恥ずかしい」
先月24日の結審公判で検察は、パク氏に懲役3年を求刑した。当時、パク氏は最後弁論でこう述べた。
「失笑が漏れそうになりましたが、結局笑えませんでした。 70年代の維新政権ならあり得るような裁判が、2015年、世界経済の10位に入ると言う大国である大韓民国で起こっているという事実について、惨憺たる思いを禁じ得ません。(中略)こんなに信頼できない裁判は初めてです。(中略)ところが、そこにとどまらず、私が拘束され、7カ月間も裁判を受けています。ここに立つことを恐れているわけではありませんが、大韓民国の国民であることがあまりにも恥ずかしいです」
人権団体などはパク・ソンス氏の捜査と裁判の過程に対し、韓国の人権が後退した象徴的な事件だと評価する。ソ・チャンホ大邱・慶尚北道人権週間組織委員会執行委員長は「基本的な人権の一つが、市民の表現の自由だ。パク・ソンス氏事件を見れば、現政権が自分と異なる考えを持っているだけで、団体を超えて個人にまで恐怖と抑圧で抑制している。パク氏の事件は、韓国社会の人権状況の大きな基準点になるだろう」と述べた。
民主社会のための弁護士会は、世界人権の日を迎え、今月7日に開催された人権報告大会で「(パク氏が)大統領を批判したという理由で、名誉毀損罪で捜査と裁判を受けるなど、(民主主義の根幹である)表現の自由が弾圧されている」と主張した。今年5月7日、大邱地方弁護士会(会長イ・ジェドン)は「批判の自由という民主社会の基本的人権が侵害される余地がある」として、パク氏の弁論を無料で引き受けると発表した。これについて、朴大統領の主要支持基盤である大邱で、保守派と評価されてきた大邱地方弁護士会が名乗り出るほど、人権状況の悪化が深刻であることを裏付けるものとみられる。
警察と検察がパク氏を捜査し、裁判にかけた過程は、異例であり、執拗だった。この事件は、今年2月16日、パク氏からビラを手渡された人たちが、大邱市寿城(スソン)区セヌリ党大邱市党の入り口で、ビラ約40枚をばら撒くパフォーマンスをしたことから始まった。通常、被害者が告訴しなければ、捜査に乗り出さない、ほとんどの名誉毀損事件とは異なり、朴大統領の告訴がなかったにもかかわらず、警察が自らの判断で捜査に乗り出した。
軽犯罪処罰法の違反、出版物による名誉毀損、名誉毀損など、警察がパク氏などに送った出頭要請に書かれた疑いは毎回変わった。パク氏は「政権の顔色を窺った過剰捜査」として大邱寿城警察署の入り口にドッグフードをばら撒いて抗議した。パク氏は、結局、4月28日に逮捕された。検察は、裁判で「チョン・ユンフェとのスキャンダルを覆い隠すために公安政局づくりに乗り出したのか?」などのビラの内容が朴大統領の名誉を毀損したと主張した。
人権保護のために人身拘束に慎重を期すべき裁判所にも、本来の役割を果たせなかったとして、批判の声があがっている。1審裁判を担当した大邱地裁刑事2単独キム・テギュ判事は、パク氏の拘束期間を2カ月ずつ2回も延長し、6カ月間拘束した。拘束期限が迫るとキム判事は、検察が追加起訴した集示法違反の疑いについて、職権で令状実質審査を行い、パク氏の勾留状を再び発行した。パク氏の保釈請求も棄却した。
パク氏の弁護を引き受けたリュウ・ジェモ弁護士は「パク氏が作成したビラの内容は批判的な意見の表明に過ぎず、事実の適示ではないと思われる。たとえ事実の適示だとしても、大統領の職務遂行に関する批判であるため、名誉毀損に当たらないことが、大法院(最高裁)の判例として残っている」と述べた。
韓国語原文入力: 2015-12-15 21:35