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[コラム] 脅かされる表現の自由

登録:2015-05-06 22:22 修正:2015-05-07 05:59
ソウル都心で18日に開かれたセウォル号1周年集会の途中で太極旗を燃やすパフォーマンスを行っている //ハンギョレ新聞社

 政治的意思表現の方法として国旗を毀損すれば罪になるか? 1984年、国際青年党党員のグレゴリー・ジョンソンが米テキサス州ダラスでの共和党全党大会会場前で星條旗を燃やした。 レーガン政権の外交政策に抗議するためだった。 彼はテキサス州法の星条旗保護法違反で起訴されたが、1989年6月、米連邦最高裁判所は5対4で無罪を確定した。

 最高裁判事のウィリアム・ブレノンは「言論の自由の真の機能は、聴衆をして不安と不満を引き起こすような表現、聴衆を刺激するような表現を敢然と許容することである」として「アメリカ人が神聖なものと感じている星條旗に対する侮辱的な表現すらも、許容されねばならない」と明らかにした。 星條旗毀損が望ましかろうと望ましくなかろうと、それは国家が干渉するよりは国民が自ら判断すべき領域と見たのだ。 表現の自由という憲法上の価値の方が、一部の国民の星條旗毀損に対する不快感よりずっと重要であると判断したのだ。 何人かが星條旗を燃やしたからといって、アメリカという国が揺らぐはずもないではないか。 民主国家における当然の法理であろう。

 韓国では一人の青年が集会で紙の太極旗(韓国国旗)を燃やし、警察のネズミ捕り式捜査網に上がって散々な目にあっている。 保守新聞と総合編成チャンネル(保守紙系ケーブルテレビ)は 4月18日のセウォル号追悼集会報道において「太極旗を燃やすデモ隊」を浮彫りにした。 国憲紊乱と従北が疑われるので、捕まえて厳罰に処せというトーンであった。 セヌリ党のキム・ムンス保守革新委員長は「太極旗を燃やす写真を見たか? 反政府従北勢力がそれだけ多く、国を亡ぼそうとしている」と声を高めた。

 韓国の刑法は「大韓民国を侮辱する目的で」国旗を毀損すれば処罰するとして、国旗冒涜罪を規定している。 しかし国家を侮辱しようと決心して何かをするような人が、果しているだろうか? 主観的目的を立証することはほとんど不可能なため、この条項は現実性があまりない。 実際に太極旗を燃やしたと名指しされた青年は、あるインタビューで集会を暴力で阻む警察の行動に抗議する目的で、路上に落ちていた紙の小さな太極旗を拾って火を付けただけだと言った。 刑法上の国旗冒涜罪は、アメリカだったら違憲判定ものだ。

 さらに重要な問題は、この青年の人権が深刻に侵害された点である。 保守マスコミは青年を非難しながら彼の顔をそっくりそのまま露出させた。街を行き来する人の動きを軽くスケッチして伝える際にも、顔をモザイク処理するのが慎重な姿勢だ。 保守マスコミの行為は深刻な肖像権侵害だ。 後日、自由な裁判が可能な時点で青年が名誉毀損訴訟を提起すれば、十中八九は勝訴するだろう。 警察があちこち穿ってホコリ叩き式捜査をするのも人権侵害の素地が大きい。

バク・チァンシク論説委員 //ハンギョレ新聞社

 李明博(イ・ミョンバク)、朴槿惠(パク・クネ)政権になって表現の自由が深刻に脅かされている。 表現の自由はすなわち言論の自由だ。言論の自由に対する脅威は民主主義に対する攻撃となる。 表現の自由と関連するもう一つの特徴は、政治家と言論人は同じ主題を同じ強度で言及しても問題にならない一方で、無力な普通の市民が攻撃の標的になっているという点である。 朴槿惠大統領を批判するビラを撒いた市民パク・ソンス氏(彼は警察に対して犬の餌をばら撒き、犬用のガムを送り付けたことで有名になった)が、数日前に拘束された。 セウォル号沈没直後に政府の救助の乱脈さを放送インタビューで批判した女性ホン・ガヘ氏が拘束されたのも同じだ。 2009年には経済展望分析の文を書いたネチズン、パク・テソン氏(ミネルバ)が拘束された。

 言論の自由の側面から見た時、政治家や職業的言論人が犠牲になった時代と、平凡な市民が攻撃される状況とでは、どちらがより悪いだろうか? それなりの発言権が保証されている集団には手を付けず、弱い部分を狙い撃ちで締め付けるという点で、当然今日の現実の方がはるかに深刻だ。

バク・チァンシク論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/689864.html 韓国語原文入力 :2015-05-05 18:42
訳A.K(1808字)

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