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韓国地方自治体で横行する“細切れ契約” 解決されない公共部門の非正規雇用問題

登録:2015-12-15 23:46 修正:2015-12-16 17:32
広域自治体の期間制労働契約、全数調査

#1 仁川(インチョン)広域市に住むソン・ジェヨン氏(仮名、54)は、2014年3月1日からある区役所所属の施設管理公団で勤務を始めた。 地域の観光地区を1日8時間清掃する業務だった。キム氏は特別な問題なく働けば正規雇用に切り替えるという管理者の言葉に、それまで勤めていた結婚式場のビュッフェ食堂の仕事を辞めて職場を変えた。 仕事を始めて7カ月ほど経った2014年10月頃、公団はキム氏に初めて「勤労契約書」を提示した。 契約期間は2015年1月31日までだった。 キム氏は「公団側が 勤労契約書に署名しなければ再契約しないと言うので、言われる通りにするしかなかった。国のする仕事だからそれでも安定的だろうと思って職場まで変えたが、今になって見れば、退職金も払わずに済むように11カ月だけ雇用したようだ」と言った。 公団はその後も「11カ月」の 職員を採用して区内清掃を続けている。

7大広域自治体の期間制契約を見ると
2013~2015年に計4万1642件
10件に1件が「短期契約」と推定

1年を超えないようにして退職金支給せず
2年を超えないようにして正規雇用転換回避

朴大統領「2015年までに公共部門
全て正規雇用転換」の公約と全く違う

広域地方自治体の“細切れ契約”比率(2013〜2015年)//ハンギョレ新聞社

#2 同じ公団で働いていたキム・ガブファン氏(仮名、53)は、2012年1月から公団所有の公営駐車場を管理する業務に就いている。 1年の労働契約だったが、真面目に勤めれば正規雇用に転換されるだろうと信じた。 実際、公営駐車場管理職員20人余りのうち経験の長い職員は勤務期間2年を超えて無期契約職に転換されていた。 ところが2013年1月に勤労契約が満了すると、公団は6カ月の勤労契約書を提示した。6カ月後には3カ月の契約書、その次は2カ月。 結局キム氏は2014年12月、勤務を始めてから23カ月で契約期間満了を理由に仕事を辞めることになった。キム氏は「先輩が全員無期契約職に転換されていたので自分もそうなるだろうと思っていたが、私の時からは全員2年を満たせずに切られた。どうしてよりによって私からなのかと悔しかったが、食べていくために他の職場を探すしかなかった」と言った。

 14日、民主労総公共運輸労組がソウル・釜山・仁川など7大広域地方自治体から情報公開請求により確保した「2013~2015年 期間制労働契約現況」の全数調査資料によれば、各地方自治体はソン氏やキム氏の場合のようにいわゆる「細切れ契約」を広範囲に活用していることが確認された。 上記期間に7大地方自治体が結んだ期間制労働契約は全部で4万1642件だったが、そのうち明らかに退職金回避目的の短期契約と推定される「10カ月1日~11カ月30日契約」は3790件(9.10%)、正規雇用転換回避が目的の短期契約と見られる「1年10カ月1日~1年11カ月30日契約」は380件(0.91%)に達した。 二つのケースを合わせれば4170件で、期間制労働契約全体の10件に 1件という割合になる。非正規雇用問題解決に率先垂範すべき公共部門が、細切れ契約を通して費用の節減にばかり没頭していることの傍証である。

 現行「期間制及び短時間勤労者保護等に関する法律」は、原則的に2年以上の期間制労働ができないよう規定しており、期間制労働期間が2年を超えれば直ちに無期契約職に転換されたものと見なしている。細切れ契約は、このような正規雇用転換の負担を避けるために2年未満になるよう契約期間を分割するやり方を言う。 細切れ契約は退職金の支給を回避する手段としても活用されている。 使用者は1年以上勤めた労働者には退職金を支給しなければならないが、それを避けるために数カ月単位に労働契約を分割する。 現行法上、これを処罰する規定はない。

 細切れ契約を活用する頻度は、地方自治体により違いがある。 仁川は計5738件のうち1374件(23.95%)が細切れ契約と推定された。 次いで光州(クァンジュ)(10.10%)、大田(テジョン)(9.89%)、大邱(テグ)(9.38%)の順であった。 蔚山(ウルサン)は計4177件のうち細切れ契約が165件(3.95%)にとどまり最も少なかった。 細切れ契約の比率が仁川で特に高いのは、仁川アジア大会や松島(ソンド)新都市など大規模開発事業などで負債が急増し市の財政状況が劣悪なためと推定される。 実際、各広域市の債務比率(2014年末基準)を見れば、仁川は36.1%で、釜山(28%)、大邱(27%)、光州(20.8%) などと比べて断然一位を占めている。

 問題はこのような細切れ契約の実態が、非正規雇用問題を解決するという政府方針に反しているということだ。 朴槿恵(パク・クネ)大統領は、2012年の大統領選挙当時「公共部門の常時・継続業務従事者は3年以内に全員正規雇用に転換する」と公約した。 政府は 2013年9月、公共部門(中央政府、地方自治体、公企業など)の非正規雇用の正規雇用転換を国政課題として定め、2015年までに期間制労働者6万5711人を無期契約職に切り替えると発表した。

 公共運輸労組のキム・ミンジュ非正規戦略組織部長は「非正規労働者の問題を改善しなければならない公共部門が、細切れ契約を広範囲に活用しているという事実が全数調査を通して初めて確認された」として「朴槿恵大統領は現在推進中の労働市場改編の代わりに、公共部門における非正規雇用の問題解決という公約から守るべきだ」と指摘した。 韓国非正規労働センターのイ・ナムシン所長は「細切れ契約はこれを処罰する法的強制手段がない一種の脱法慣行だが、非正規雇用の問題解決が遅滞しているのは実はこういう“穴”があちこちにあるためだ」として「公共部門から『常時・継続続業務正規職化』という既に公表した原則を確立するために率先垂範しなければならない」と話した。

ノ・ヒョンウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/721796.html 韓国語原文入力:2015-12-15 11:45
訳A.K(2635字)

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