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今も続くドイツ統一の後遺症...韓国は今後に備えるべき

登録:2015-11-19 01:41 修正:2015-11-19 08:10
2015年ハンギョレ・釜山国際シンポジウム 
ドイツ・オスナブリュック大ゲオルギ・セル教授が「ドイツ統一の教訓」を報告
ゲオルギ・セル名誉教授//ハンギョレ新聞社

 「韓国とドイツの地政学的状況は異なる。韓国の統一には、ドイツよりもはるかに多くの準備をしなければならない」

 「ハンギョレ・釜山(プサン)シンポジウム」初日の18日、東アジア平和のための南北関係を取り上げた2部で「ドイツ統一の教訓」というテーマで発表したゲオルギ・セル(György Széll)名誉教授(ドイツのオスナブリュック大学)は、そう強調した。韓国の経済・福祉水準がヨーロッパに及ばないうえに、南北の政治対立が激しく、韓国の軍事独裁の名残が依然として残っているという理由からだ。セル名誉教授は「ドイツの社会的分裂は、25年前(統一当時)に比べあまり改善されていない」とも述べた。ドイツの失敗を繰り返さないためにも、南北統一に数十年がかかる可能性を認め、「遅く小さな段階」別に、体系的に準備する必要があるということだ。

 ベルリンの壁が崩壊した1989年、統一ドイツの最初の首相だったヘルムート・コール首相はこう述べた。「2年以内にすべての土地に花を咲かせる」。しかし、この約束は守られなかった。むしろ旧東ドイツ地域には“失敗”の雰囲気が漂っていた。

 セル名誉教授が伝える旧東ドイツ地域の実状は惨憺たるものだ。失業率は旧西ドイツ地域より2倍も高く、生活費も高くなったが、賃金は平均より30%低い。旧東ドイツへの郷愁、いわゆる「オスタルジア」(Ostalgia)が広がっている。総合病院、技術学校、幼稚園、保育所などの社会システムも崩壊した。特に女性は「ドイツ統一の敗北者」だったとセル名誉教授は説明する。システムが整っていない社会で、女性たちは仕事を辞めて専業主婦になるしかなかった。出生率は低下した。

「旧東ドイツが事実上植民地化 
失業率は2倍高く 
生活費はよりかかるが 
賃金は平均より30%低く 
東ドイツへの郷愁広がる 
25年前の統一当時から 
社会分裂も改善されていない」

 厳しい現実は、誰かに向けた憎悪につながった。昨年10月にドレスデンで「西側のイスラム化に反対する欧州愛国者」(PEGIDA)運動が始まり、他の地域の支持者たちをリードした。旧東ドイツ地域に外国人嫌悪と人種差別主義が蔓延していることを裏付けている。国家民主党(NPD)とドイツのための選択肢(AfD)が最近の地方選挙で10%、昨年欧州議会選挙で7%の票を獲得するなど、旧東ドイツ地域の5つの地方議会では「新ファシズム」の政治勢力が存在感を強めている。

 「統一失敗」の背景と関連して、セル名誉教授は「杜撰に管理された経済と社会の統一政策は、25年が経過した今でも影響を及ぼしている」と政策の失敗を指摘した。例えば、実際の価値では、4対1が適正比率と言われていた東西ドイツ間の通貨統合は、旧西ドイツの中央銀行の反対にもかかわらず、気前がいい政治家たちにより1対1で強行され、結局、腐敗につながった。統一後に行われた東ドイツ経済の解体は、人口の3分の1が仕事を失う大規模な失業事態に帰結した。旧東ドイツ側の経済活動の利益がほとんど旧西ドイツの企業のものとなり、政治、司法、科学分野の高位層は全員旧西ドイツ出身で埋められるなど、事実上の植民地化も、慢性的な差別からの脱出を妨げる原因となっている。

 セル名誉教授は、統一に先立って、韓国が準備すべき具体的事案として、まず南北双方には、信頼構築▽経済協力の強化▽軍事支出の削減▽統一後の経済、政治、行政、教育、文化、社会保障などの各分野の青写真を用意▽国境開放と通信を許可▽文化と科学教育の強化などを求めた。そして北朝鮮側には市民社会の出現を容認▽言論自由化▽独裁終息▽ミサイル実験の中断▽イランの事例に倣って、原子力発電の生産に関連する協定の締結などを、韓国側には太陽政策の再開▽国家保安法の廃止▽米国との軍事訓練中止などを、それぞれ求めた。

釜山/キム・ウェヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-11-18 19:42

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/718051.html 訳H.J

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