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[コラム]南北統一の天の時、地の利、人の和

登録:2015-02-09 01:31 修正:2015-02-09 08:21

 今年で南北は光復70週年と分断70周年を迎える。

 南北関係の改善の適期だといわれている。孟子が言った「天の時」といえる。南北の首脳は年初から首脳会談の可能性まで言及し、統一と南北関係改善への意志を強く示した。しかし、孟子が言った「地の利」のためなのか。まるで釘をさすようにバラク・オバマ米大統領がいきなり「北朝鮮崩壊論」を持ち出し、南北関係に水を差した。幸い孟子は「天の時は地の利に如かず地の利は人の和に如かず」とした。そのためだろう。一部では南北関係さえ上手く行けば、何事もうまく行くという。南北関係がまさに「人の和」であるためであろう。南北は果たして光復70周年という天の時に人の和で新しい世界を描けるだろうか?

 朴槿恵(パク・クネ)政権にとって南北関係における最大の関心事は統一のようだ。今年を「統一時代を開幕する年」と規定して統一憲章を制定し、朝鮮半島縦断と大陸鉄道の試験運行を推進することにした。ソウル発の列車が京義線を通じて、新義州(シンウィジュ)や羅津(ナジン)まで走ることも構想しているそうだ。この統一列車には北朝鮮全域で行われる統一準備のためのおびただしい努力が積まれているようだ。すべてが統一を念頭に置いて行われているみたいだ。

 しかし、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党第1書記は、「(韓国が)北南間の不信と対立を煽る制度統一を追求してはならない」と述べた。北朝鮮の最大の政治的目標は、やはり体制を守ることだ。北朝鮮が南北対話の前提条件としてビラ散布を禁止し、韓米合同軍事訓練を中止するように強く求めているのも、そのためだろう。

 結局、南北は「南轅北轍(なんえんほくてつ)」(車の梶棒は南に向かうのに、車輪は北に転がっていくという意味で心と行動が一致していないことを比喩する諺)であるわけだ。南北関係がぎくしゃくしするしかない理由が、まさにここにあるのではないか。そのために韓国の「統一準備委員会」が統一の熱気を帯びれば帯びるほど、北朝鮮はこれをあたかも政権を接収しようとする「引き受け委員会」と看做すこともあり得る。

 当初朴槿恵大統領は、朝鮮半島信頼プロセスを対北政策の基調として掲げた。孟子が言った「人の和」といえる。北朝鮮の3回目の核実験と戦争騒動を経験しながらも、信頼を掲げ、対話を通じて問題を解決しようと強調した。しかし、チャン・ソンテク事件を経験してから、信頼プロセスは徐々に姿を消し、「統一大当たり論」が基調をなしてきた。なぜなのか。金正恩政権が不安だという判断と、中国の対北朝鮮政策が変わったと判断に基づいて統一を成し遂げる「天の時」と「地の利」が揃ったと看做したのではないか。実際、今が統一を成す千載一遇の敵期だとする見方も多いようだ。

 振り返ってみると、過去、金大中(キム・テジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権では統一よりも平和が強調された。北朝鮮を共存の相手として認めたのだ。今は統一と共存を別々に考える見方があるようだ。北朝鮮が韓国の統一の熱気に敏感に反応する理由はここにあるのではないか。

 再び孟子の言葉を借りると、統一には天の時、地の利、人の和が揃わなければならない。実際ユン・ビョンセ外務部長官は「もう統一の日が近づいている」と述べた。天の時が備わったという意味だろう。朴大統領は、機会があるたびに統一のための国際社会の支持を訴えてきた。地の利を備えるための行動のようだ。地の利は地理に通じる地政学的な要素を意味するからだ。

 しかし、天の時と地の理は見えるのに、本来猛者が最も重要視した「人の和」が見当たらない。統一する相手である北朝鮮の姿も見えない。天の時と地の利だけで統一ができるだろうか。三国志の魏蜀吳三国は天の時、地の利、人の和で総合的な実力をあまねく備え、「三足鼎立」(鼎の足のように三者が互いに対立していること)の局面を形成したが、吳蜀両国は、最終的に人の和を失ったことで敗れ去った。

金景一北京大学教授//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮の統一も人の和を除いて論ずることができないだろう。たとえ天の時と地の利のおかげで統一を成し遂げたとしても、人の和がないと人禍に見舞われるかもしれない。人の和の和は和解と平和の和である。その土台は、まさに、朴大統領が強調した信頼だ。信頼を捨て統一だけを強調すると、統一はただのイベントに終わる可能性がある。70年間続いた分断を一日で飛び越えられるはずもないだろう。

金景一(ジン・ジンイ)北京大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.02.08 18:52

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/677386.html  訳H.J

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