「まあ、小麦も植え終わって時間もあるから...行こう!」
全羅南道宝城(ポソン)で農業を営んでいたペク・ナムギ氏(68)は、「農民大会に行こう」という仲間の誘いにこう答えた。宝城でカトリック農民会長を務めている彼は、14日朝早く、農民約120人と一緒にバスに乗った。同日午後3時頃、民衆総決起大会が開かれるソウルに到着したペク氏は4時間後にアスファルトの地面に倒れ込んだ。ソウル鍾路区庁前の交差点で車両の車壁を張って立ちはだかった警察は、同日午後6時57分頃、デモ行進途中で車両の壁に近づいたペク氏に向かって放水銃を撃った。ペク氏は強い水圧の放水銃に直接撃たれて地面に頭をぶつけた。噴射は、彼が倒れてからも約20秒間続いた。当時近くでこの状況を見ていたイ・ジェシク民主労総組合員は「(ペク氏の)鼻と口から血が流れ、意識はない状態だった。ペク氏を運び込む間にも、噴射が続いた」と話した。
病院に運ばれたペク氏は、現在外傷による脳出血で意識がない状態だ。病室を訪れた家族や仲間たちは「頭だけでなく、鼻も折れたようで、膨れ上がっており、意識を取り戻しても左半身に麻痺が残る可能性があるといわれた。ペク氏は、(体に繋がれた管を通じて)数十種類の薬物が投与されている状態で、横たわっている」と伝えた。
ペク氏を知る人たちは、長い間農民運動の先頭に立ってきたペク氏の負傷を悲しんでいた。ペク氏と30年以上付き合いのあるチェ・ヨンチュ氏は「学生運動に身を置いてからカトリック修道院生活を経て、1981年から宝城に移り住み、環境に優しい有機農業を始めた人だ。純粋な農民であり、この地域の農民運動の先駆者のような人」とした。ペク氏は有機米と小麦、大豆を育て、自ら手作りしたコチュジャンやテンジャンなどを売っていた。同僚は、ペク氏がこの日も「経済の論理に押し出される韓国の米を守るためにソウルに出てきた」と話した。
保健医療団体連合は15日、「ペク氏を含めて14日の集会で脳震盪による短期記憶喪失、骨折、虹彩出血など重傷を負った参加者が、確認されたものだけでも15人に達する」と発表した。同日、警察も報道資料を通じて、「デモ隊の暴力行使によって、警察官113人が怪我をして、警察バス50台が壊れるなど、かなり被害を受けた」と明らかにした。
韓国語原文入力: 2015-11-15 19:37