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[ルポ]盈徳原発の沖合で獲れたズワイガニ、召し上がりますか?

登録:2015-11-12 23:59 修正:2015-11-13 05:56
11~12日に原発誘致賛否投票を控えた盈徳

「ズワイガニで有名な清浄地域に原発を誘致したら
損害の方が大きいんじゃないですか」
街のあちこちに賛否の横断幕
10年前の放射性廃棄物処分場誘致では住民の80%が賛成
福島原発事故後、反対世論拡散
最近の世論調査では反対60% 賛成30%
政府・道・郡は「法的根拠なし」と投票引き止め

8日午後、慶尚北道盈徳郡江口港につながる江口橋と江口大橋に、原発誘致とこれに対する住民投票に賛成または反対を主張する横断幕がかかっている =キム・イルウ記者//ハンギョレ新聞社
8日午後、慶尚北道盈徳郡江口港につながる江口橋と江口大橋に、原発誘致とこれに対する住民投票に賛成または反対を主張する横断幕がかかっている =キム・イルウ記者//ハンギョレ新聞社

 「盈徳(ヨンドク)は工場一つなくズワイガニで有名な清浄地域で、今後観光地として成長する無限の潜在力を持っている。 政府からいくらかの金をもらって原発を作ってみたところで、利益より損害の方が大きい。長期的には原発がないことで盈徳の価値が上がる」(キム・ジンギ盈徳天地原発反対汎郡民連帯共同代表)

「過去に原発誘致に賛成しておいて今になって反対するのは岩に卵を投げつけるようなものだ。 どうせやって来る原発なら、住民が一生暮らせるくらいの経済的支援策を要求して原発建設を受け入れるべきだ」(ク・チョンシク盈徳天地原発運営対策委員会委員長)

 8日午後、慶尚北道盈徳郡の江口(カング)港につながる江口橋と江口大橋は原発関連の横断幕で覆われていた。「原発早期建設で地域経済を生かそう」 「清浄な盈徳、守り抜いて子孫に残そう」 大型建設会社が掲げた「盈徳での仕事、韓水原(韓國水力原子力)と建設協力社が一緒に作って行きます」などの字句が書かれた横断幕も見えた。

 盈徳は海辺にある人口4万人の小さな町だ。釜山から東海岸を国道7号に沿って北上し、蔚山(ウルサン)、慶尚北道慶州(キョンジュ)、浦項(ポハン)の次が盈徳だ。東海岸にある慶尚北道の4地域(慶州・浦項・盈徳・蔚珍)のうち、唯一原発も工業団地もない所でもある。保守的な傾向が強く、地方区国会議員と郡守、区議員の7人が全員セヌリ党所属だ。何年か前までは原発に友好的な地域であった。

 そんな盈徳で11日と12日、民間主導で原発誘致に対する賛否を問う住民投票が行われる。住民投票を控え、原発誘致賛否に分かれた住民間の葛藤はさらに高まっている。政府と慶尚北道、盈徳郡は法的根拠のない住民投票だとして住民に対し投票に参加しないよう説得している。 しかし盈徳郡議会(議長イ・ガンソク)は住民投票を支持し政府・地方自治体と対立する立場を表明している。

 盈徳では既に盈徳原発反対汎郡民連帯(代表ソン・ソンムン)、盈徳天地原発反対汎郡民連帯など原発誘致に反対する団体が、盈徳天地原発運営対策委員会などの賛成団体と摩擦を起こしている。 今年6月、36人の住民が盈徳原子力発電所誘致賛否住民投票推進委員会(常任委員長 ペク・ウンヘ)を立ち上げた。先月14日には盈徳原子力発電所誘致賛否住民投票選管委(委員長ノ・ジンチョル慶北大教授)がスタートし、政府と地方自治体の手を借りずに住民投票を準備中だ。

 盈徳郡は2005年8月、慶尚北道浦項市と慶州市、全羅北道群山(クンサン)市とともに低中レベル放射性廃棄物処分施設を誘致するほどに原子力に好意的だった。 同年11月にこれら4地域で放射性廃棄物処分施設の敷地選定のための住民投票が同時に行われたが、 盈徳では住民の79.3%が賛成した。 しかし放射性廃棄物処分施設は最高の賛成率(89.5%)を記録した慶州市がさらって行った。

 放射性廃棄物処分施設の誘致に失敗した盈徳郡は、5年後に原発誘致に挑戦する。盈徳郡議会は2010年12月に原発誘致申請同意案を満場一致で議決し、盈徳郡はその翌日韓国水力原子力に原発誘致申請書を提出した。

 しかし原発誘致申請の2カ月後である2011年3月11日に起こった日本福島原発放射能漏出事故により、世論は変わり始めた。 韓国水力原子力の提案を受けていた全羅南道海南(ヘナム)郡と高興(コフン)郡が原発誘致申請をしなかったため、2011年11月、盈徳郡は三陟(サムチョク)市とともに原発誘致に“難なく”成功した。

 昨年10月、江原道三陟市で行われた原発賛否住民投票で反対が85%に達すると、翌月、当時のチョン・ホンウォン首相は住民をなだめるため盈徳を訪問した。世論は冷ややかだったが政府はこの7月、盈徳郡盈徳邑ソク里、メジョン里、ノムル里一帯(324万平方メートル)に1500メガワット級の原発2基を2027年までに建設するという内容の第7次電力需給基本計画を定めた。追加で必要な原発2基を2029年までに盈徳または三陟に建設するという内容まで含まれていたため世論は一層悪化した。

 実際、4月8~9日の盈徳郡議会の世論調査では原発誘致反対の回答(58.8%)が賛成の回答(35.7%)より多かったが、8月12日の盈徳原発反対汎郡民連帯の世論調査では反対(61.7%)と賛成(30.6%)となり格差はさらに広がった。先月29日の汎郡民連帯二回目の世論調査でも、反対(60.2%)が賛成(27.8%)よりはるかに多かった。

 住民投票推進委常任委員長を務める住民ペク・ウンヘ氏(52)は「日本福島原発事故以前に原発誘致賛否の住民投票をしたなら、おそらく賛成世論が多かっただろう。しかし住民たちは今は原発の安全性に疑問を感じており、政府が約束する各種支援についても、本当に約束が守られるという信頼を持っていない」と話した。

盈徳/キム・イルウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/area/716532.html 韓国語原文入力:2015-11-09 10:24
訳A.K(2555字)

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