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教育現場を知らない教科書国定化に教師たちは反発「検定制で授業レベル大きく向上」

登録:2015-10-22 22:48 修正:2015-10-23 09:36
「最高の国定教科書」を作ると言うが所詮は独占体制 
競争を経る検定とは比べ物にならない
歴史学界の元老たちが21日、ソウル鍾路区東崇洞の興士団講堂で行なった歴史教科書国定化行政予告撤回要求記者会見で、アン・ビョンウク元カトリック大名誉教授(左端)が「政府は歴史と教育に対する統制を直ちに中断せよ」と要求している =イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 「正直言って国定教科書だった時代は、生徒たちは大変で教師は楽だったんです」 「検定体制に変わってから、多様な資料を作るなど授業準備が完全に変わりました」 「私たちは農村地域なので非文字要素の多い教科書を選んでいます」

 韓国史教科書の国定化転換に賛成する側からは「8種類の検定教科書があると言っても、結局個々の生徒の学ぶ教科書は一つではないか」として、検定体制と“多様性”とは無関係であるという論理を立てる。 しかし実際の現場で歴史の授業を担当する教師たちは、検定体制への転換が教室の風景を完全に変えたと口をそろえる。

■ 教師の授業準備が変わった

 歴史担当の教師たちは、2010年に中学校歴史教科書、2011年に高等学校歴史教科書が初めて検定に切り替えられた当時、学校の授業現場に変化が起きたと回想する。

 生徒たちの理解を助けるために教科書の他に別途の授業資料を作ることが普遍化したというのは、検定体制がもたらした代表的な変化だ。 ソウルのP教師は「授業準備が(国定時代に比べ)天と地ほどに変わった。 子供達にまともに教えようとすれば国定の時は別に論文や史料を探さなければならなかったが、検定では教科書だけ見ても多様な史料を見つけることができてずっと良い授業ができた」と語った。 キム・ユックン歴史教育研究所長(ソウル禿山<トクサン>高教師)は「教科書の本文を要約して筆記して暗記する授業方式から、教師が多様な学習資料を作って思考力と探求力を中心に授業する方向に変わったのには、検定教科書が非常に重要な影響を及ぼしたとられる」と話す。

 特に高校教師の場合、大学修学能力試験が各種の教科書が共通に扱っている要素から出題されるので、多様な教科書を参照して授業をせざるを得ない状況だ。 仁川のP教師は「正直なところ、国定の時代は子供達に年度まで丸暗記させた。 国定が子供たちには大変で教師には楽だったのは事実だ」として「もちろん検定でも相変らず暗記する部分は多い。しかし検定体制では教育放送(EBS)連携教材も8種類の共通要素を中心に問題を出す。高3はEBS教材だけで授業をするとしても、韓国史教科書で教えなければならない 1・2年生の授業で試験と連携させて説明しようとすれば、教師が全ての教科書を参照せざるを得ない」と説明する。

入試で共通要素出題のため8種類全て参照
思考力・探求力中心の授業へ
随時募集か定時募集かにより異なる選択

■ 教科書間の競争が質の向上をもたらした

 教育部は「国定教科書を最高品質の教科書に作り上げる」と公言しているが、教師たちは「多様な教科書が出されて善意の競争をすることで質的改善が成される」と指摘する。

 ある高校の韓国史教科書執筆者は「国定教科書で教えていて、検定教科書が出てきた時の子供たちの反応が違っていたことを今もはっきり覚えている」として「教科書を開発する時、1次的目標は子供達が面白く読め自己主導学習ができるようにすることだ。 理念が入り込む余地はない」と言った。 採択率が最も高いM出版社の教科書執筆者の一人は「今年私たちは全ての単元に6コママンガを入れた。私たちだけでなく、2015年の教科書は2011年の最初の検定教科書に較べて進歩している。出版社が採択を巡って競争した結果、お互いに良い点をベンチマーキングする過程で教科書の質が全般的に高くなったようだ」と話す。

 国定体制だった2008年に多様な教室授業を試みた経験を『私の歴史授業』という本に著したことのあるユン・ジョンベ教師(ソウル水落<スラク>中学)は「2000年代の国定の時は、歴史新聞、歴史ニュース、ロールプレイ、討論と生徒たちがより多く参加できる多様な面白い授業を模索する事が、個々の教師の意志にかかっていた」として、「検定への転換で教科書自体が教師と生徒の観点から面白い授業ができるように変わる中で、教師たちが多様な授業を試みることが一般的になった」と説明する。

■ 大学入試の随時募集・定時募集によって教科書選択も異なる

 国定化を強行する側では検定教科書の理念的偏向性を問題視して「多様性の確保に失敗した」と主張する。 しかし実際のところ、検定教科書は生徒たちの学習水準や学校が力を注いでいる入試類型など多様な需要に応じて選ぶことができるほどに多様化されている。

 慶尚北道のある郡の高校教師は「ソウルの子供と農村地域の子供とでは学習水準や興味を持つ部分が異なる。私たちは子供たちの活動を無理に要求しないで、非文字資料が鮮明な教科書を選択した」として「執筆者により教科書の構成形式や活用した非文字資料が全く異なるという点が検定教科書の持つ長所だ」と話した。

 大学入試戦略も教科書の選択に影響を及ぼす。 2012年から歴史サークルを指導している仁川のP教師は「校内サークル活動を強化するなど随時募集(大学修学能力試験を通さず大学が独自に行う募集)に重きを置く学校は活動主題をたくさん持っている教科書を採択する。一方、定時募集に力を注ぐ学校では、修学能力試験に備えるのに適した根拠史料の提示や概念整理がよくできている教科書を採択する」と話した。

チン・ミョンソン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-10-22 11:34

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/713966.html
訳A.K

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