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脱北者にもなれない無国籍者の境遇…韓国に定着した少女の悲しい現実

祖母と孫の中秋の願いは学校に通うこと
脱北者の祖母と無国籍となった孫が24日、ソウル蘆原区の家で手を強く握り合って窓の外を眺めている=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 「学校に通うのが願いです」

 24日、ソウル蘆原(ノウォン)区の賃貸アパートで出会ったウンジュさん(仮名、15)はそう話す。ウンジュさんは同じ年頃の女の子たちが着る制服を自分だけ着れないのが恥ずかしいと言った。そんな彼女を祖母のパク・ヒョンスンさん(仮名、70)が悲しげな表情で見つめていた。

 学ぶことが山ほどある年齢のウンジュさんは学校に通うことができない。銀行の通帳も作れず、アイドル歌手のコンサートのインターネット前売り券の予約もできない。病気になっても我慢するだけで病院に行く気にもなれない。無国籍状態の“不法滞留者”だからだ。

 ウンジュさんは脱北者の祖母と2人きりで住む。祖母は先に北朝鮮を脱出した6人の娘を頼り、2000年に中国に脱出した。長女が中国朝鮮族と結婚して産んだ子がウンジュさんだ。ウンジュさんの母は、2006年に2人の妹と共に韓国行きを試みたが行方不明になった。父は翌年事故で亡くなった。中国で幼い孫娘を引き取り育てることになった祖母は、他の2人の娘が北朝鮮官憲に捕まったり行方不明になった上、韓国行きに成功した末娘まで癌にかかったという消息を聞き、2012年に自分も韓国行きを決心する。ウンジュさんを人に預け、ラオスとタイを経て決死の思いで韓国にたどりついた。パク・ヒョンスンさんは「幼い子を残して韓国を目指す間、涙が止まることがなかった」と話す。

朝鮮族の父が死に脱北した母は行方不明
先に韓国を目指した祖母が昨年密入国
両親なしで国籍取得はできず不法滞在の境遇
学校どころか病気になっても病院さえ行けない
祖母は遺伝子検査までしたが効果なし
似た事例は少なくない…制度改善至急

 祖母は昨年7月、ウンジュさんを連れ出してきた。その際に、脱北者定着教育施設のハナ院から受け取った定着金400万ウォン(約40万円)のうち300万ウォン(約30万円)を脱北ブローカーに支払った。そして、かけがえのない孫娘を暗い船底に隠して密入国させることができた。1週間の航海の末に会えた2人は抱き合った。「その時は泣くまいとできる限り明るく笑おうとしました」。ウンジュさんはその時、祖母と一緒に笑いながら生きていけることを実感した。

 しかし今、ウンジュさんの“存在”は韓国の領土のどこでも認めてもらえない。脱北者でもなく中国人でもない無国籍者にすぎない。祖母はウンジュさんが韓国籍を得れるよう区庁や警察署、出入国管理事務所まで訪ねたが、「両親が死亡したか行方不明である状態で祖母だけいるのでは、現行法上、国籍取得は不可能」という話しか聞けなかった。「私の孫であるのが間違いないことを証明しようと遺伝子検査までしました。だけど何の効果もないのです」。ウンジュさんは最近熱を出し、話もろくにできないほど首が痛くなった。薬局に行ってもまず病院に行ってくださいと言われるだけだが、住民登録がされていないので我慢するしかなかった。「去年の春も3週間も病気で寝たきりになるほどひどく熱を出したけど家で休んでいるほかなかった」と話す。

 スチュワーデスとか女優になりたいという夢多いウンジュさんは今、学校に通いたくて仕方ない。ソウル北部ハナ院の援助で代案学校で勉強しているが、検定試験を受ける資格さえない。ウンジュさんは「同じ年頃のみんなが羨ましかったり、自分が恥ずかしくなることがある」と淡々と話してくれたが、祖母は「ウンジュだけはしっかり学んで幸せに暮らしていけるようにさせてあげたい」と目がしらを赤らめた。

 チャン・ポクヒ鮮文大教授(法学)は「脱北者の両親が行方不明になったり死亡して無国籍状態におかれる子供を、祖父母など親戚が面倒をみる事例が発生する可能性が多い点から制度改善が必要だ」と訴えた。

 ウンジュさんは韓国で2回目の秋夕(中秋節)を迎える。今後、韓国国民と認められるか分からないが、2人の表情は決して暗いわけではない。

 「中国にいた時は名節の時に家の主人の顔色を見なくてはならないのが嫌だったけど、今はお婆さんと一緒にいるだけで本当に幸せです」。ウンジュさんはそう言って笑った。そんな孫を見て祖母はこう話した。「ウンジュなしで名節を祝う時は一人でどれほど悲しかったか。すべてうまくいくと信じています」

コ・ハンソル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-09-25 01:09

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/710437.html 訳Y.B

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