取材・編集人材3人→常時雇用5人
「制度言論最小限の規制ために推進」
インターネットメディアの85%は追放の恐れ
文化部「登録せずとも言論活動は可能」
言論・市民団体「世論統制手段の臭いが濃厚」
京畿道軍浦(クンポ)地域に基盤を置く軍浦市民新聞は、1995年に創刊した後、20年余りの間に3回も廃業の危機を経験し、今年初めインターネット新聞として新たに出発した。 新聞の印刷にかかる費用を賄えなくなったからだ。キム・ジョンデ発行人は「地域企業も既成報道機関だけに広告を集めるので、1カ月の広告収入が60万ウォン(約6万円)程度にしかならない」と話した。月1000ウォンの購読料や市民の後援支援金でサーバー費用、事務室賃貸料、常勤者給与などに必要な財政を調達している。 記者は10人余りいるが、1人の常勤者以外には自身の生業を維持しながら時々取材・報道をして別途の給与も受け取っていない。 キム発行人は「私たちはただ地域市民の“自己犠牲”で運営されているメディア」だと話した。 そのため彼らにとって文化体育観光部が推進しているインターネット新聞の登録要件強化は青天の霹靂のような知らせだ。 彼は「私たちのように常雇いをおかずに市民の参加で取材・報道をしている小規模メディアは多いが、今回の知らせは事実上廃業しろということに他ならない」として「地域社会の小さな声が消されようとしている」と批判した。
文化部がインターネット新聞の登録要件を強化する内容の新聞法施行令改定を推進していることに対して「表現の自由と世論多様性を害する」という反発が高まっている。
文化部は先月21日、「過度な競争、扇情性増加、類似言論行為(記事を口実に企業に広告を要求する行為)」等を理由に、インターネット新聞の登録要件を「取材人材2人を含め取材・編集人材3人の名簿提出」から「取材・編集人材5人以上の常雇い証明」に変える内容の新聞法施行令改定案を立法予告した。 人員数が増えたこともあるが、「常雇い」を証明しなければならない点が大きく変わった部分だ。 立法予告期限である10月1日が過ぎれば、規制改革委員会、法制処審査などを経た後、今年中にも公表されるものと見られる。 新たに登録するインターネット新聞は、すぐにも登録要件を満たさなければならず、すでに登録されているインターネット新聞は1年の猶予期間内に基準に合わせなければならない。
21日、全羅北道民間言論連と湖南(ホナム)言論学会は今回の改定案に対して緊急討論会を開催した。 この日、提案を務めたキム・ウンギュ又石(ウソク)大教授(新聞放送学)は「文化部の新聞法施行令改定案は『群小言論=サイバー・類似言論』という歪曲された見解を前提にしている。 ジャーナリズムの機能を遂行し実現している小さなメディアが消えていくことが憂慮される」と指摘した。
今月8日にはインターネット記者協会と新政治民主連合ピョ・ヒョンウィ自由特別委員会が共同で討論会を開き文化部の改定案を批判した。 民主言論市民連合、民主社会のための弁護士会など言論・市民団体も18日に声明書を発表して「今回の改定案は言論の自由を侵害し世論を統制する手段になる可能性が濃厚だ」と批判した。
これに対してノ・ジョムファン文化部メディア政策課長は「新聞法施行令改定は制度圏言論に対する最小限の規制が必要という観点で推進された。 もし登録要件に合わせられないならば、あえて“インターネット新聞”として登録せずに言論活動を行えば良い」と話した。
しかし、小規模インターネット新聞の立場ではそんな簡単な問題ではない。 正式に“インターネット新聞”として登録を受けたか否かにより“社会的認定”のみならず、政府支援、取材活動半径などがすべて影響を受けるためだ。 例えば“女性主義ジャーナル”を旗印に掲げたインターネット新聞『イルタ』の場合、女性や性的少数者のような少数者の声を代弁してきたという価値を認められ、現在は言論振興財団から小額とはいえ運営に相当に役立つ規模の支援金を受けてきた。 もし登録が取り消されれば、このような支援はあきらめなければならない。政府、地方自治体、企業などを取材して、報道資料を受け取り、記者会見に参加するなどの活動にも制約を受けかねない。 イルタの発行人であり記者でもあるチョイ・ヨウル氏は「現在、常時取材・編集人材は3人だが、これを5人に増やすことは財政状況上不可能だ。 既成の報道機関とは異なる声を代弁する小規模インターネットメディアを政府が支援するどころか、消そうとする発想は理解し難い」と批判した。
インターネット記者協会は5人の常雇い人材にかかる年間費用を9000万ウォン(約900万円)程度と推算する場合、年間売上1億ウォンに満たないインターネット新聞は登録要件に合わせられない可能性が高いが、これらが現在インターネット新聞社の85%に該当すると分析している。
文化部はインターネット新聞の乱立のために扇情性競争、類似言論行為などが広がっているとると認識している。 だが、民間言論連などは声明で「類似言論行為、扇情性競争などはむしろ主流言論が多くしていて、新聞法施行令の改定では現在のインターネット ニュース市場の弊害を正す効果は期待できない」と指摘した。
ト・ヒョンネ インターネット記者協会事務総長は「もし文化部原案どおりに公表されれば憲法訴訟を提起するなど多様な方式で対応していく」と明らかにした。