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[ルポ] 沖縄の悲劇、そして朝鮮人性奴隷(2/6)

登録:2015-08-08 06:20 修正:2015-08-16 07:45
1. 米軍基地に占領された沖縄(上)

■ 那覇空港は軍用飛行場?

 12月15日正午頃。浅い海に広がる珊瑚礁を見られる澄んで青い沖縄の海の上をかすめるように飛んで行った飛行機が滑走路に軽やかに着陸した。  那覇空港の庁舎側に近付く飛行機の窓を通じて、空港周辺の風景が次々と目に映った。 印象的だった。

 陸上自衛隊、海上保安庁などの大きな文字が記された格納庫のような建物が現れ、その前には大小の軍用機が立ち並んでいた。明らかに民間旅客機が着陸した滑走路なのに。あれは訓練機、偵察機、輸送機、そして戦闘機、ヘリコプター、あれはP3C? 那覇空港は民軍共用か?

 後で地図を見ると、その周辺には陸上自衛隊訓練場、航空自衛隊高射訓練場、陸上自衛隊駐屯地、航空自衛隊と海上自衛隊の基地が広がっていた。

 そこに米軍機の姿はなかった。

 だが、那覇空港を出てリムジンバス(仁川空港に行く時に乗ったバスに較べれば圧倒的に遅かったが)で50分ほどかかる北側の北谷地域にある宿舎に行く時、道の両側に見えるのはすべて鉄条網をまいた米軍基地だった。

沖縄那覇の北側にある北谷近隣にある東アジア最大の米空軍基地 嘉手納 =ハン・スンドン記者//ハンギョレ新聞社

 先ず沖縄米軍基地問題の象徴のようになってしまった宜野湾の普天間米海兵隊基地、キャンプ瑞慶覧(フォスター)、キャンプ桑江(レスター)、キャンプバトラーと続き、北谷のすぐ北側は東アジア最大の米空軍基地である嘉手納があった(写真説明2-1)。

沖縄の海岸地域の相当部分を占めている米軍基地を囲んでいる鉄条網 =ハン・スンドン記者//ハンギョレ新聞社

海岸沿いにある米軍基地 キャンプキンザーの正面 =ハン・スンドン記者//ハンギョレ新聞社

鉄条網に囲まれた沖縄の米軍基地 =ハン・スンドン記者//ハンギョレ新聞社

展望台から米軍普天間基地内を見下ろす人々 =ハン・スンドン記者//ハンギョレ新聞社

 また、その北側の読谷からはトリイ通信施設、瀬名波通信施設、読谷補助飛行場、嘉手納弾薬庫、その右にはキャンプコートニー、さらに上側の名護市まで巨大なキャンプ ハンセン、キャンプ シュワブ、辺野古弾薬庫…(写真説明2-2,2-3,2-4,2-5)。

 道路に接する普天間基地の鉄条網の内側には、淡いクリーム色の階数不明な直方体の低いブロック建物が並んでいた。 建物の周辺には勤務者たちが乗ってきたと見られる車がびっしりと駐車していた。済州島(チェジュド)の小さな坂道のような、芝で覆われたやや高く突き出た石油貯蔵タンクもあちこちに見えた。だが寂しく感じられるほどに人の姿はほとんど見当たらなかった。

 リムジンバスに乗る前、空港のバス停留場でバスが来るのを待っている間、補助員の名札をつけた愛想の良い青年と立ち話をした。

 30代初めと見える中坊さんはバスの配車時刻から沖縄観光に至るまで、どんな話でもよどみなくさらさらと説明してくれた。ところが、普天間基地移転の問題についてどう思うかと尋ねると、しばらく躊躇って「それについては私は何とも言えません」とはっきり断った。なぜだろうか?

 「お母さんが嘉手納基地で仕事をしている。ここにはそんな人が多い」。普天間基地の話を持ち出したのは、まさにその10日後辺りに仲井真弘多沖縄県知事が普天間基地を北側の名護市辺野古のキャンプ シュワブの海岸側に移す問題に対する最終決定を下さなければならない期限が迫っていたし、それが沖縄の住民たちの最大関心事になっていたからだ。

 辺野古への基地移転に対して沖縄住民の64%が反対しているという世論調査内容がその数日後である12月17日、現地の二大有力日刊紙の一つである沖縄タイムズの1面トップ記事であった。

 それはすなわち、沖縄住民の3分の2が米国と日本政府が要求する辺野古への基地移転、すなわち辺野古近海埋立てを仲井真知事が承認してはならないと考えているという話であった。

 だがその10日後、仲井真知事は住民たちのそのような願いを裏切った。住民は激昂し、県議会議員は賛成多数で知事の退任決議案を通過させた。

 法的拘束力はないが、沖縄の歴史でそんなことは初めだった。沖縄タイムズ、そして一緒に沖縄の世論を主導してきた琉球新報は社説で、辺野古への基地移転を飽くことなく推進する安倍晋三自民党政権の懐柔(お金)と圧迫に屈服した仲井真知事をを裏切り者として強く糾弾した。

■ 米軍基地の沖縄経済への寄与度はせいぜい5%

 沖縄到着当日の夕方に会った若林千代・沖縄大教授(政治学)は「米軍基地の沖縄地域経済への寄与度は5%に過ぎない」と話した。

 1993年に創刊された沖縄住民の平和運動を代弁する季刊誌『けーし風』(けーしかじ)の編集長である岡本由希子氏、沖縄恨之碑の会の共同代表である安里英子氏など、その日一緒に会った人々も在日米軍基地の74%が集中している沖縄、その沖縄本島の約20%を覆っている米軍基地が沖縄経済に占める比重は急速に低下しているとし、そのため沖縄の保守層さえ最近では米軍基地反対側に転じていると話した。安里氏は恨の碑の花こう岩に彫られた碑文を書いた人だ。

 基地に雇用されている住民たちが受け取る賃金も、結局は日本政府が米軍に提供するお金(思いやり予算)で支払われている。彼らの話を総合すれば現地米軍基地に雇用されている沖縄住民は7~8千人程度。外来客である私に自ら話しかけて「米軍基地が今撤収してしまえば日本を守ることはできない」と話した高齢のタクシー運転手が話した米軍基地に雇用されている現地住民数もその程度であった。平均3~4人と推算される関連家族を全て合わせても米軍基地と直接的な関係を持っている沖縄の人は2~3万人。140万人いる沖縄全体の人口の3%にも満たない。

 「沖縄平和ネットワーク」事務局の稲福勉氏とともに、第2次大戦末期に20万人以上が亡くなった沖縄中南部の激戦地における住民虐殺現場を案内してくれた岡田耕子 「沖縄平和市民連帯」活動家は、「沖縄経済のためには米軍基地が不可欠と考える人たちの中には新聞を読まない人が多い」として次のように話した。

 「今、日本で米軍基地に反対している人は日本全体の人口の1%にしかならない。その1%とはまさに沖縄の住民たちだ」

 少なくとも沖縄住民の圧倒的多数が普天間米海兵隊基地の沖縄県内移転、すなわち沖縄北東部名護市の辺野古への移転に反対しているのは明らかだった。 彼らの大多数は米軍基地そのものに反対していた。

 しかし岡田耕子氏の言葉にさらに胸が痛むのは、その話には、沖縄がほとんど全面的に負担を抱え込んでいる米軍基地の沖縄駐留に日本本土の人たちは賛成している、いや本土の日本人たちはこれまでその問題による沖縄人の苦痛には全く関心さえないと考える沖縄住民たちの離反感と自嘲、冷笑が含まれているためだ。

■ 日本人ではなく沖縄人

 「日本人」ではなく「沖縄人」と呼ばれることを願う、彼らのそのような心情を普天間基地正門前や市庁前広場で「NO!」「OUT!」を叫び、連日基地反対、辺野古移転反対デモを行っていた65歳以上の老人たちからも読むことができた。

宜野湾の普天間にある米海兵隊基地ノダケゲート前で「NO!」と書かれた大きなプラスターを持って基地反対デモを行う老人たち。後に見えるのが普天間基地の正門 =ハン・スンドン記者//ハンギョレ新聞社

普天間基地前での反対デモ現場 =ハン・スンドン記者//ハンギョレ新聞社

 米兵が乗った車が基地から出てくるたびに、運転席のすぐ前で手を上げて「NO!」「OUT!」と叫んでいた風景、「NO FLY ZONE!」「OSPREYS OUT!(新型垂直離着陸輸送機オスプレイ配備反対)」「MARINES OUT!」(米海兵隊撤収)などの旗が無数に翻っていたその風景の上を、すぐ後方の普天間滑走路から離陸したC-17と見える巨大輸送機が轟音を響かせてデモ現場側に向かって飛び上がっていった(写真説明2-6,2-7)。その瞬間の非現実的に映った奇妙な光景が鮮やかに目に浮かぶ。

■ 沖縄ではそのような輸送機や戦闘機が終日飛び回る

終日沖縄上空を飛び回る米軍の全天候戦闘機F-15Cイーグル、または戦闘爆撃機F-15Eストライクイーグル =ハン・スンドン記者//ハンギョレ新聞社

 通常2機が一緒に飛び回り、最も耳をつんざくような騒音を立てる小さく敏捷な機種は、ボーイングが改良した全天候戦闘機F-15Cイーグルや戦闘爆撃機F-15Eストライクイーグルのようだった(写真説明2-8)。

 嘉手納空軍基地を眺望できる近隣の簡易サービスエリアである道の駅嘉手納の4階で、天地を振るわせて滑走路を疾走し急上昇するそのような戦闘機2機を見た。何という飛行機かと尋ねると、稲福勉氏はF-15Cイーグルだと言った。

 2千ヘクタールで嘉手納市の全面積の83%を占めている嘉手納空軍基地は、米軍に収容される前は地元の農民が耕作していた広々としたサトウキビ畑だった。強制動員された多くの朝鮮人軍夫も米軍が拡張する前に日本軍がそこに建設した飛行場建設工事に動員され、「奴隷のように使役された」という記録が残っている。

 

普天間基地から出てくる車の中の米兵はすぐ外で自分たちに向けられたデモ参加者のヤジと叫びにすっかり慣れたように目もくれずに表情も一切変えずに話を続けていた。そうだ、無表情、無関心。 それが彼らの戦略だ。

ハン・スンドン ハンギョレ文化部記者

韓国語原文入力:2015/08/15 18:04 訳J.S(3640字)

https://www.hani.co.kr/arti/culture/religion/704569.html

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