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MERS事態で分かった公共医療が必要な理由

登録:2015-06-19 23:20 修正:2015-06-20 07:45
 自治体別のMERS対応
 「公共インフラ」の違いで地域間格差
 営利追求していた政府・民間病院
 事態悪化させて患者押し付ける
 公共医療の強化のきっかけにすべき
公共医療機関である京畿道水原市京畿道医療院水原病院(国家指定隔離病院)の正門前で19日午前、市民がこの病院で治療を受けているMERS患者の快復と医療スタッフへの応援メッセージが書かれたリボンをかけている=水原/キム・ボンギュ記者//ハンギョレ新聞社

 今月11日、江原道春川(チュンチョン)に住む50代の男性は、中東呼吸器症候群(MERS)の症状が現れると、自ら近くの江原大学病院を訪れた。江原大学病院は国家指定MERS集中治療機関だ。しかし、当時の病院には陰圧隔離病室がなかった。この男性は、保健所の救急車に乗せられて、サムスンソウル病院に運ばれたが、またもや陰圧隔離病室がないという理由で、入院も治療も受けられず、戻ってきた。

 12日、MERS感染の陽性反応が出た男性は、再び170キロを走って、陰圧病室を備えた江原道立江陵(カンヌン)医療院に“やっと”入院した。この男性は症状が急激に悪化し、ソウルポラメ病院を経て、現在、ソウル市立ソウル医療院で治療中だ。

 江原道初のMERS感染者(9日判定)だった40代の男女も、住んでいた原州(ウォンジュ)、またはより近い春川の病院ではなく、江陵医療院で治療を受けている。MERS感染確定の判定を受けた江原道民4人のうち2人は江陵医療院、2人はソウル市が運営するソウル医療院と西北病院で治療中だ。彼らは江原道の国家指定MERS集中治療機関にも、国内最高の病院とされていたサムスンソウル病院にも、助けてもらえなかった。

 MERS発生から1カ月間、中央政府と最高の民間病院が悪化させた「MERS災害」の影響を、地域の公共医療機関が軽減していると評価されている。ソウル市が運営・投資する病院8カ所のうち、3カ所がMERS拠点・治療病院の役目を果たしている。ボラメ病院は重症、ソウル医療院と西北病院は軽症の治療に焦点を当てている。これは、中央政府との協議に基づくものでもあるが、ソウル市のマニュアル通りだ。

 2011年に新たに開院したソウル医療院は「国家指定入院治療病床」として、政府の指示に応じて陰圧隔離病室5室だけ設置すれば、条件を満たすことになっていた。しかし、単独で20床の隔離分離病床を追加運営できるように設備とスペースなどを管理してきた。このような投資は、MERS事態が発生するまでは“お金の無駄”だった。国家指定入院治療病床ではないという理由で、正式の陰圧病室を一つも設置しなかったサムスンソウル病院と対比を成している。

 京畿道もまた公共医療の役割が目立った。平沢(ピョンテク)聖母病院が先月29日に自主的に閉鎖してから、入院治療中だった“難民患者”たちが発生した。転院しようとしても受けいれてくれる道内の民間病院があまりなかった。2日後、ユ・ビョンウク京畿道医療院長が病院を訪問し、MERS患者4人(疑いがある患者を含む)のうち、2人をすぐに京畿道医療院水原(スウォン)病院に移した。水原病院は今月9日から、この地域では初めてMERS患者専用の病院として運営されている。

 18日午前4時には、保健福祉部が京畿道にMERSの感染が疑われる忠清南道の病院関係者2人を受け入れてくれることを緊急要請した。該当地域の病院には、患者隔離施設はもちろん、陰圧設備が不足していた。

 釜山(プサン)医療院には合わせて10室の音圧病室が備えられている。当初は5室だったが、MERSの拡散を受け、結核・ホスピス病棟を緊急に空けて工事をして増やした結果だ。その代わりに、「MERS病院」という烙印を押された釜山医療院は、一日平均1000人だった外来患者が半分の500人に減る損失を甘受している。

 自治体首長の行政哲学、意志、財政状況などによって発生した「地域間健康不平等」は、MERS局面でも如実にあらわれた。今月3日、泗川(サチョン)市で慶尚南道地域で最初のMERS感染の疑いがある患者が発生した。泗川市で30キロメートルほど離れた晋州(チンジュ)医療院は地域拠点公立病院の役割を果たしてきたが、2013年にホン・ジュンピョ慶尚南道知事によって強制閉鎖された。国家指定病院である晋州慶尚大学病院は、あいにく陰圧設備を修理中だった。結局、この患者は、120キロメートル以上も離れた梁山(ヤンサン)市量釜山大学病院の陰圧隔離病室に入院しなければならなかった。

 仁川(インチョン)市は最近、補正予算を編成し、本予算にあった仁川医療院の運営費46億4000万ウォン(約5億1500万円)の15%である7億ウォン(約7700万円)を削減した。仁川医療院は仁川空港や仁川港から入国する内外国人まで管理しなければならず、この地域のMERS拠点病院だ。MERS事態の余波で入院・外来患者が20〜50%減少し、葬儀場収入も半分に減った。財政状況が悪くなった仁川医療院は来月から、従業員の給与支給さえ不透明な状態だ。仁川地域の市民社会団体は、仁川医療院に対する仁川市の予算削減はMERSと戦っている医療院に軍需補給路を遮断する行為だと批判している。

 多くの自治体関係者たちは「普段医療の公共性や公共医療をあまり重んじていなかった民間病院が、MERSが拡散すると、なぜ国公立医療院が積極的に出ないのかとしながら、患者を押し付けてくる」と口をそろえた。

 「健康な世の中ネットワーク」のキム・ジュンヒョン代表は「MERS事態は、これまで低所得層のための領域として認識されてきた公共医療の重要性が、改めて確認されるきっかけとなった」とし「民間が忌避する患者を自治体の医療院が受け入れたり、ソウル市のように地方政府が中央政府を圧迫して積極的な対応を引き出す事例もあったが、基本的に、地方は公共医療資源が不足しており、それさえも地域間格差が大きい。民間領域を通じて公共性を保障するのは難しいだけに、公共医療インフラの拡充が切実だ」と述べた。

イム・インテク記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015-06-19 20:09

https://www.hani.co.kr/arti/society/health/696773.html  訳H.J

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