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MERS拡散の背景、政府は専門家に責任押しつけ専門家は過小評価

登録:2015-06-19 10:06 修正:2015-06-19 11:02
MERS防疫失敗を糾弾する「病院労働者当事者証言大会」が国会前で開かれた18日午後、参加者が破られた防疫を意味する「穴の開いたマスク」を感染者が出た病院の写真に重ね合わすパフォーマンスをしている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「保健福祉部が初めて『尋常でありません。強力に対処しなければなりません』と報告したのが6月1日夜でした。そこでチェ・ギョンファン首相代行が6月2日午後1時の飛行機で経済協力開発機構(OECD)閣僚会議に発つ直前、慌てて朝8時に初めての緊急関係長官会議を主宰したといいます」

 政府高官関係者が18日ハンギョレに伝えた話の中から、この1カ月間で起きた、中東呼吸器症候群(MERS)より怖い“無政府事態”の背景が浮かび上がった。最初の患者がMERSの陽性反応を示したのは5月20日のことだ。それから11日が過ぎていても主務部署である福祉部は「感染は制限的」と安易に判断していた。朴槿恵(パク・クネ)大統領が、最初の陽性反応が出てから6日後にムン・ヒョンピョ保健福祉部長官から対面報告を受け、13日後の3日に初めてMERS関連民官合同点検会議を主宰したのも、こうした脈絡から説明が可能となる。

 政府がようやく気づいた時には、1日夜に死亡者2人が発生し、2日には初の三次感染者2人が確認されるなど、息つく暇もなくMERS感染が広がっていた。インターネットでは朴大統領の写真に「すでに何もしないでいるが、さらに激烈で積極的に何もしたくない」という文句をつけて皮肉るほど、民心は悪化した。政府が7日までMERS感染者が立ち寄った病院名の公開を遅らせるなど右往左往する間に、不安な国民の間では未確認のうわさが広まった。朴大統領は9日の閣僚会議で、こうしたデマに厳正対処せよと注文し、逆に国民の反発だけを呼び起こした。

初めての感染から12日も過ぎ
福祉部「尋常でない…強力な対処」
サムスンソウル病院信じて動かず
専門家も迅速対応できず
隔離対象者管理の不手際を認める
政府パニック…感染急速拡散

 初期防疫ばかりか疎通にも失敗した政府は「MERSとの戦争」最前線に公務員の代わりに専門家を登場させ、信頼度を高めようとした。毎日MERSのブリーフィングをする時も、公務員のクォン・トクチョル福祉部保健医療政策室長(中央MERS管理対策本部総括班長)と共にキム・ウジュ大韓感染学会理事長など専門家を前面に出したのも、こうした背景があるためだ。さらに朴大統領は8日、専門家中心の即刻対応チームに“全権”を付与すると明らかにした。

 MERS最大の感染地になったサムスンソウル病院のソン・ジェフン院長は感染内科教授出身で、政府はもちろん民間専門家の誰もが彼の権威を否定できなかったという。公務員らがサムスンソウル病院を過信し、MERS拡散にまともに対処できなかったと指摘される理由がここにある。また別の政府高官関係者は「ソン・ジェフン院長は国内で感染学の最高権威だというので、ソン院長の説明を政府はそのまま信じるほかなかった」と語る。

 サムスンソウル病院が経営上の損失を憂慮し「病院閉鎖」といった極端な措置を取れない可能性も高かったが、政府はこれを見逃した。サムスンソウル病院は当初、隔離対象者の範囲を政府予想より広く捉え、信頼度も高い状況なので、政府は同病院の決定に任せていたことが分かった。しかし数日後、サムスンソウル病院から隔離対象者の選定と管理に穴があったことを知らされると、政府はすぐに恐慌状態に陥り慌てて収拾に出たと伝えられた。

 政府は今になってMERS事態の初期対応失敗の責任をサムスンソウル病院に押し付けようとする雰囲気だ。朴大統領は17日、ソン院長と直接会い「透明に公開して早く知らせれば(中略)責任をとって行うことを望む」と叱責した。

 ウ・ソッキュン保健医療団体連合政策委員長は「感染を治療する感染学と感染の原因を明らかにして感染経路を遮断する感染疫学はまったく異なる分野」だと指摘し、「韓国で疫学調査に関連する最高権威機構は疾病管理本部なのに、サムスンにまかせて放置した政府の責任は大きい」と批判した。

 政府の無能さとは別に、平沢(ピョンテク)聖母病院がMERSの一次震源地になった時も、国内の多くの感染専門家たちは、その名声を発揮できなかった。専門家らは「感染者と2メートル以内、1時間以上の接触」など中東地域で通用した感染公式を国内にそのまま適用した。このため密接接触者範囲を「最初の患者と同じ病室を使った患者や保護者」に限定し、初期防疫失敗の原因を提供した。政府は「MERS伝染力が平均0.6~0.8人程度」という専門家たちの指摘に基づき、密接接触者などに対する施設でない自宅での隔離措置を下した。しかし18日午前までに「14番目の患者」1人が81人に感染させたことが確認されるなど、中東MERSの公式が韓国MERSにそのまま通用することはなかった。蓄積されたデータが不足する新種の感染病の場合、新しい情報に柔軟に対処することが必要なのに、専門家らはMERSの危険を速断する誤りを犯した。

 チャン・ジェヨン亜洲大予防医学教室教授は18日、医療ポータル「青年医師」の寄稿文で「国内には今回の事態が発生する前にMERS患者を診断したり研究して人がなく、MERSの専門家は存在しない。一般人だけでなく多くの医師もMERSという病名さえ今回初めて聞いた人がほとんどだろう」と明らかにした。

チョン・ジョンユン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-06-18 22:37

https://www.hani.co.kr/arti/society/health/696679.html 訳Y.B

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