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[コラム]米国がTHAADの性能を知らせない理由

登録:2015-06-12 09:09 修正:2015-06-13 15:06
朝鮮半島に配備されるTHAADレーダーの中国ICBM探知概念図。MIT大シオドア・ポストル教授、コーネル大ジョージ・ルイス主任研究員提供の資料から//ハンギョレ新聞社

 米国で高高度防衛ミサイル(THAAD)に関連する米当局者の話を聞くと、一つの共通点を発見することになる。THAADが韓国に配備されれば中国にまで影響を及ぼすのではないかという質問に対し、「THAADは北朝鮮の核・ミサイルに対応する防衛」と答える。THAADレーダーは中国領土や中国が米国に向け発射する長距離弾道ミサイルを探知できるのではないかと尋ねると、「中国との戦略的均衡に影響を及ぼさない」とか「それは事実でない」ときっぱり答える。

 それで終わりだ。具体的な理由や論拠は示さない。フランク・ローズ国務省次官補はセミナーで「日本にすでにTHAADレーダー2基が配備されているので、韓国に配備しても中国に追加で影響を及ぼすことはない」とする要旨の返答をしている。しかし、朝鮮半島に配備されるレーダーは日本に配備されたレーダーより、ざっと1000キロ以上も中国に近い場所に位置し、より精密な探知が可能という点から論拠としは貧弱だ。アメリカ人は幼い頃から多くのスピーチ教育を受ける。そのため高等教育を受けなかった人でも、理路整然とした返事をすることが多い。しかしTHAAD問題に関する限り、そうはいかないようだ。

 私はその理由を、米国が公開しにくい何かを行っているためだと考える。もちろんTHAADの性能が軍事機密に属すためでもあろう。しかし、同盟国で1年近く大きな政治的議論の的になった事案に対して、曖昧な態度で出ては引くやり方で、韓国が決めることだという話ばかり繰り返すのは、同盟国に対する礼儀ではない。

 そんな状況の中で相次いで疑問が浮かぶ。前線陣地でのTHAADレーダーは配備モードと終末モードの2種類があるが、前者の探知距離は1800~2000キロで後者は600~900キロという出処不明の話が飛び交っている。さらに“匿名の関係者”により韓国には終末モードが配備されるので中国には影響がないとの主張が飛び出す。

 しかしハンギョレの取材結果、この主張は事実でないことが明らかになった。米国防省が議会に報告した文書には、二つのモードを8時間以内に切り替えることができると指摘されている。危機状況では対北朝鮮用が対中国用に変身できるのだ。米マサチューセッツ工科大(MIT)のシオドア・ポストル教授(科学・技術・国家安保政策)とコーネル大のジョージ・ルイス平和・葛藤研究所主任研究員のミサイル防衛専門家2人の分析結果、THAADレーダーは中国から米国に向かう長距離ミサイルを3000キロ以上の距離まで探知・追跡できると予測された。またある者は、韓国を防御するのに役立つ強力な武器なら、たくさん持てば持つほど良いはずだと話す。主に韓国国防部側の人々の主張だが、片方の理解しかされていない。

パク・ヒョン ワシントン特派員//ハンギョレ新聞社

 問題はTHAADが米中パワーゲームに利用される戦略兵器だいう点にある。このレーダーは探知した情報を即座に米本土早期警報レーダー網に伝送できるというのがポストル教授とルイス研究員の分析だ。一言で、韓国が米国のミサイル防衛システムに本格的に統合されることを意味する。そうなれば韓国と関わりのないことで米中間に軍事衝突が起きた時、韓国は中国の潜在的打撃対象になりえる。中国の軍事戦略家はTHAADレーダーを中国に対する潜在的脅威要因と見なすためだ。

 米国は今後、THAAD配備を韓国に公式要請する際にも、THAADの性能と運用方式について正確に話さない可能性がある。そのまま話しては韓国が配備を敬遠するかもしれないからだ。THAAD問題に関する限り、私は韓国政府が拒否する意思をはやく明らかにすれば明らかにするほど良いと考える。米国が公式要請する段階までことが進行してしまえば、今までの韓米同盟と現政権の性格上、その時になって拒否することはさらに難しくなりかねない。

パク・ヒョン ワシントン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-06-11 18:21

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/695524.html 訳Y.B

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