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THAAD配備、ケリー長官が口火切りスカパロッティ司令官が既成事実化

登録:2015-05-19 22:49 修正:2016-02-23 07:23
 「韓米公式議論はなかった」
 リッパート駐韓米大使が鎮火に出たが
 韓米首脳・国防長官会談前後
 “ごり押し・ムード造成”見解
 政府は否定…国防部は資料把握中
18日、訪韓日程を終えたジョン・ケリー米国務長官が京畿道城南市のソウル空港で機上に上がって敬礼している=城南/APニューシス

 米国が再び高高度防衛ミサイル(THAAD)を巡る“ヒット・アンド・アウェイ”作戦に出た。 米国の高位要人がTHAAD問題を持ち出し、問題になればさっと手を引く、韓国政府は“事実無根”と完全否定するという、何度も見てきた演出が再び行われた。

 今回は米国の対外政策に責任を負うジョン・ケリー米国務長官が直接乗り出した。ケリー長官は18日、韓米外交長官会談後にソウル・龍山(ヨンサン)の基地を訪問し、駐韓米軍将兵に「我々はすべての結果に備えなければならない。 これこそ我々がTHAADや他のことに対して話す理由」と述べた。 婉曲にTHAAD配置の必要性を提起したわけだ。

 ケリー長官が先鞭を付けると、直ちにカーティス・スカパロッティ韓米連合司令官兼駐韓米軍司令官が後を繋いだ。スカパロッティ司令官は19日、極東フォーラム主催講演後に一部の記者たちと会って「韓米両国が(THAADを朝鮮半島に)配備する問題をそれぞれ個別的に検討しており、どの時点が配備に適切かを考慮している」と述べたという。 すでにTHAAD配備を既定事実化し、“いつ”というタイミングの問題だけが残っているかのように聞こえる内容だ。

 ケリー長官の発言が物議をかもすと、マーク・リッパート駐韓米国大使は「ケリー長官のソウル訪問中にTHAAD問題は議論されなかった」と鎮火に出た。 リッパート大使は18日夜、外交部を通じて配布した資料で「韓米間ではTHAAD問題に関する公式議論はなく、ケリー長官の話は内部行事に参加して内部の米国聴衆に向かってした話」と説明した。 典型的な“ヒット・アンド・アウェイ”だ。 米国は過去にもTHAAD問題を取り上げ、問題になれば否認しすることを繰り返した。 このような前例に照らして、ケリー長官の今回の発言は“ムード作り”だとする分析も出されている。

 THAADの問題はアシュトン・カーター米国防長官が先月10日に訪韓し「現在、世界の誰ともTHAAD配備を議論する段階ではない」と明らかにし沈静化するかにみえた。ところがケリー長官が約40日後に再びこの問題を持ち出したのは、韓国政府の決断を促す圧迫の意味が大きいと分析される。

 ケリー長官らの発言はタイミングから見ても微妙だ。北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中射出試験に成功した直後であるためだ。 米国が潜水艦発射弾道ミサイルの脅威を口実にTHAAD配備を押しつけるための巧妙な事前布石という分析も出ている。 実際、ケリー長官は18日のTHAAD発言に先立ち、記者会見で北朝鮮の潜水艦発射ミサイル射出試験と関連して「極めて挑発的」、「窮極的に制裁強化を議論せざるをえない」と脅威を強調したことがある。

 また、来月には朴槿恵(パク・クネ)大統領が米国を訪問して、今月末にはシンガポールでのアジア安保会議(シャングリラ対話)で韓米国防長官会談、韓米日国防長官会談が連鎖的に開かれる。 ケリー長官の発言が韓米首脳会談や韓米国防長官会談などでTHAAD配備問題を議題とするための事前のムード造成用ではないかという分析が出てくる背景だ。 セヌリ党のユ・スンミン院内代表は19日、院内対策会議で「北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイルが追加の脅威として浮上してきた状況で、韓米同盟は最短時間内に最適なミサイル防御を構築しなければならない。 この点が韓米首脳会談の核心議題になることを希望する」と述べた。

 政府はこれに対して「韓米間協議も、米国からの要請もなかったし、決定も下していないという既存の“3NO”立場に変わりがない」という態度だ。 しかし国防部は、軍事実務次元でTHAADの力量や効用性などを把握中であることが分かった。 国防部当局者は「米陸軍技術教範とインターネット専門資料など公開された資料を通じてTHAADレーダーの探知距離や迎撃ミサイルの射程距離、正確度などを把握している」として「THAADが議論になっているので実務的にTHAADの正確な実体を把握するべきだという次元」と拡大解釈を警戒した。 しかし、国防部のこのような動きは、THAAD配備問題を本格研究しようとする事前措置と解釈される余地があり、問題となる可能性もある。

 米国は2019年までに7基のTHAAD砲隊を配備する計画であり、今年下半期に5番目の砲隊が米陸軍に引き渡される。 昨年は駐韓米軍部隊が集結している平沢(ピョンテク)など5カ所に対してTHAAD配備候補地の調査をしたことがある。

パク・ビョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/691924.html 韓国語原文入力:2015-05-19 20:09
訳J.S(2129字)

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