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[寄稿] 北朝鮮核問題の辺境化と米国の構想

登録:2015-06-01 09:53 修正:2015-06-02 07:35

 ここ数年で中日間の釣魚島(日本名:尖閣諸島)、南シナ海での中米の葛藤が本格化する一方で、北朝鮮の核問題が関心外に押し出され“辺境化”しているという。中国が野心をもって推進する一帯一路戦略の「沿線」国家64カ国に南北朝鮮はなく 韓米同盟が米日同盟の圧力を受けるなど、あらゆる意味で朝鮮半島問題そのものが辺境周辺に追いやられている。

 別の見方をすれば、北朝鮮核問題の郊外化は、はるか以前から始まっていたといえる。4年間続いた6カ国協議はもう8年も開かれないでいる。第1次・第2次オバマ政権で北朝鮮核問題は忍耐を伴う政策となった。北朝鮮の核の脅威は化け物のように膨れ上がっていくが、代案といえるのは制裁と圧力だけだ。単純に優先順位から外れてしまったためか、それとも北朝鮮核ゲームの戦略的目的が達成されるためなのか?

 自意であれ他意であれ、北朝鮮の核は朝米の合同作品だ。互いに核を利用して今日の北東アジア情勢を築き上げた。その結果、北東アジアの国際政治は比較的“安定”した葛藤の態勢を維持していると言える。域内の中米、朝米、中日、南北、中朝の葛藤のすべてが、当分改善される兆しはない。といって直ちにより大きな葛藤になるようでもない。

 いったい誰に有利な状態なのか。少なくとも中国と韓国が望む状態ではなさそうだ。米国と日本はどうか? どう転んだところで米国は、韓国と中国に高高度防衛ミサイル(THAAD)配備問題で一石を投じ、問題を増幅させている。日本は今のところ、あえて北朝鮮の核を口実にせずとも、米国の保護の下で自衛権行使と普通の国家を実現させるため、よどみなく政策を押し進めている。米国としては、中国にだけ北朝鮮の核問題解決の負担を押し付けた、今のような核問題の辺境化が有利ではなかろうか? 中米葛藤が朝鮮半島で早期に衝突すれば、その葛藤は一気に終末を告げることになる。朝鮮半島を葛藤の震源地として残しておき、他の場所でゲームを行うほうが有利であるに違いない。そのためだろうか。南シナ海での中米武力衝突説が取り沙汰される。これから中国が一帯一路戦略を本格化させれば、中米間の葛藤もそれに合わせて深まるものと思われる。

 では北朝鮮の核の辺境化は北朝鮮にとり有利だろうか? 北朝鮮は過去20年間、核で瀬戸際に追い込み“辺境化”を防いできた。北朝鮮は瀬戸際戦術を動力とする地政学的要素を「明堂」と呼ぶ。静かな辺境化の動きを望むはずがない。そこで戦略的価値を高めようと核兵器の小型化・軽量化を宣言する。しかしもう飽きてしまったのか、それとも北朝鮮をオオカミ少年と見ているためなのか、その効果はあまりないようだ。

北朝鮮は「戦略的価値が下がった」という論理に対し「先が見えない愚かな人の忘言」と非難した。北朝鮮の核の初心が「安全保障」だったとすれば、今は地政学的な明堂の場として、自らの核で世の中を動かすことができると考えているのではないかと思う。結局、北朝鮮の「辺境化脱皮イベント」が、この地域に適当な緊張が必要な米国の思惑と戦略的に合致することになった。

 事実、北朝鮮核問題や朝鮮半島問題が辺境化されるということは、大国の戦略が朝鮮半島をある程度離れることにつながり得る。朝鮮半島の地政学的重要性が弱まり、もう一つの価値である「地経学」の要素が浮上することを意味するのだ。それだけ国際社会の圧力が緩和され、南北経済協力に新しい視空間が広がる。ただし、昨今の“辺境化”は米国が望む小康状態なのであり、地政学的要素の弱化を意味しない。誰か見ても域内の中米、朝米、南北、中日、韓日の葛藤は地政学的に固定化されつつある。突破口は見当たらない。これらすべてが北朝鮮の核問題の辺境化と視空間を共にしている事実は、吟味してみる必要がある。

 北朝鮮の核問題が朝鮮半島と北東アジアの平和に最も大きな脅威になっているのは言うまでもない。にもかかわらず北朝鮮の核問題が辺境化するのは、核の脅威が最も大きい脅威ではないという矛盾した論理を展開させることになる。

金景一北京大教授//ハンギョレ新聞社

 なぜこういう現象が起きるのだろうか? 北朝鮮の核が米国の戦略に組み込まれたためではあるまいか? 北朝鮮が核を保有すれば明堂の場として世界の政治を思うままにできると考えること自体が、米国の戦略の枠組みから抜け出せずにいることにもなる。米国が戦略的に接近すれば、北朝鮮核問題の解決ははるかに遠ざかるしかないだろう。米国を説得しなければならない理由だ。

金景一(チン・ジンイ)北京大教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-05-31 18:54

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/693580.html 訳Y.B

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