国立中央医療院が中東呼吸器症候群(MERS)コロナウィルス感染の隔離・治療拠点病院に指定されるとともに、他の疾患で入院治療中の貧困層患者などが全員退院または転院措置となった。 “災難状況”が迫ると、ただでさえ医療・福祉の死角地帯に置かれている貧困層に負担が課せられるという状況を正すべきだという指摘が出ている。
「健康な世の中ネットワーク」「健康社会のための薬剤師の会」「人道主義実践医師協議会」「人権運動サランバン」などは 10日、「初期対応の失敗でMERS拡散をほう助した政府が、今度は未熟で性急な対策により貧しい人々の治療機会まで剥奪する結果を生んでいる」として、貧困層患者の健康権保護対策を要求する公開質疑書を政府と保健福祉部に提出した。 「健康な世の中ネットワーク」で活動するキム・ジョンスク氏は、「公共医療機関が極めて不足している韓国の現実で、何らの対策もなしに既存の貧困層患者を出て行かせるのは、災難状況で貧しい患者に一方的に犠牲を強要することだ」と指摘した。
実際、国立医療院を退院した貧困層患者の相当数は入院治療が必要な状態だが、経済的負担とMERS感染の憂慮を理由に他の医療機関への入院ができずにいる。 ソウル市は「国立医療院に入院していたホームレス患者16人のうち、5人は他の病院に入院したが 11人は退院した。退院者がどうなっているか現況を把握中」と明らかにした。
国立医療院で入院治療を受けていた13人のエイズ患者もばらばらになっている状態だ。多くが保護者のいない基礎生活保障受給権者だ。 エイズ感染者に対する偏見と経済的負担が大きいため、国立医療院は彼らが留まることのできる“最後の医療機関”だ。 国立医療院は彼らに移る病院を斡旋はしたものの、3人は経済的負担などを理由に入院をあきらめたという。 一部は縁故の全くない慶南・忠北地域の病院に入院した。
「エイズ人権連帯ナヌリ+」のクォン・ミラン氏は、「政府の政策のために病院を移るのに、月に49万ウォンの支給を受けている基礎生活保障受給者に数十万ウォンの救急車費用まで負担させた。もともと数が少ない公共医療機関が、MERS専門担当病院に転換される状況で、既存の患者が安全に治療を受けるための対策も立てるべきだ」と語った。