徴用。1965年韓日協定で作られたいわゆる“65年体制”の心臓を衝くもう一つの争点は、強制動員被害者の“個人請求権”問題だ。
日本の裁判所はこの間、日帝強制占領期間になされた強制動員被害を賠償・補償せよとの韓国原告の求めに対し、1965年6月に締結された請求権協定2条により「完全かつ最終的に解決された」という態度を見せてきた。 韓国政府もこの見解に従い2010年3月「対日抗争期強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者等の支援に関する特別法」を作り、強制動員被害者には1人当り最大2000万ウォンまでの慰労金を支給してきた。 強制動員被害者に対する賠償・補償問題は、韓日協定によって解決されたので、それに関して慰労金などを支給するのは韓国政府の責任という認識にともなう措置であった。
日本企業対象に強制差し押さえ措置の可能性
1965年に韓日協定が締結された後、朴正煕(パク・チョンヒ)政権は日本政府から受け取った請求権資金を活用して本格的な経済開発に乗り出した。 朴政権は韓日協定が締結されて10年が過ぎた1975年に関連法を制定し、強制動員で亡くなった8522人に対して30万ウォンずつ“請求権補償金”を支給し、すべての補償措置を終わらせた。 韓国政府が2010年に新たに特別法を制定したのは、朴政権時に一個人に対する補償が極めて不十分だったため特別法を通じて強制動員被害者に追加措置を講じる必要を感じたためだ。 この事業に投入された韓国政府の予算は、今年4月末現在で約5900億ウォンに達する。
しかし2012年5月、大法院(最高裁)はこの問題に対する日本の裁判所と韓国政府の見解を根元から揺るがす破格的な判決を出した。 大法院は判決文で「日本の裁判所の判断は日本の朝鮮半島に対する植民支配が合法的なものだったという認識を前提としたもの」なので「承認し効力を認めることはできない」と判断した。さらに「日本の国家権力が関与した反人道的不法行為や植民支配と直結した不法行為による損害賠償請求権が、請求権協定の適用対象には含まれ難い」として、三菱重工業などを相手にした韓国原告の個人請求権を認めた。
この判決以後、ソウル高裁と釜山高裁で進められた破棄控訴審で各裁判所は大法院の判決を受け入れる方式で原告勝訴判決を下した。 この判決が大法院で最終確定すれば、日本企業を相手に強制差し押さえ措置を取ることができる。 この場合、韓日関係はさらに一段大きな荒波に巻きこまれることになりうる。