南北当局の開城(ケソン)工業団地賃金交渉が膠着状態に陥った中で、統一部が政府の方針に反し北側の要求どおり3月分賃金を支給した入居企業に対し、制裁に乗り出した。4月分賃金の支給日が翌々日(10日)に迫っており、南北当局の脅迫に入居企業は頭をかかえている。
韓国側の開城工業団地管理委員会と北朝鮮側の中央特区開発指導総局は、北朝鮮労働者に対する賃金支給と関連して先月28日に協議を行ったが進展なく終わり、後続協議が行われていない。
7日、開城工業団地入居業者のある関係者は「統一部制度改善チームが4日、韓国政府の方針に反して3月分賃金を先に支給した18の企業の開城現地法人に出向き、賃金台帳を確認し賃金支給の経緯を把握しようとしたが、北側が入国を許諾せず調査はできなかった」と話した。 別の入居企業関係者は「統一部が6日、開城工業団地企業協会関係者との面談で18の企業に対しては経緯を把握し、相応する制裁を行うと繰り返し明らかにした」として「10日から支給が始まる4月分賃金は韓国政府の指針に従ってほしいという要請もした」と伝えた。
入居企業の間では南北当局間の交渉は遅々として進まないのに、統一部が入居企業に対する制裁だけを急いでいるという不満が出ている。 ある入居企業の関係者は「北側はあからさまには話さないが、自分たち要求どおりに賃金を支払わなければ怠業や残業拒否を行うこともありうるというニュアンスを臭わせた」として「統一部が北側との賃上げ問題に結着をつけなければ、企業は北側の要求に従わざるをえない境遇」と訴えた。
南北当局間の賃金引き上げ率の差が1%にもならず、数百ウォン(数十円)に過ぎないのに、統一部が交渉に柔軟さがないという不満もある。開城工業団地企業協会のチョン・ギソプ会長は「すでに昨年末基準で開城工業団地労働者の平均賃金が189ドル台なのに、数百ウォンの金額は経済的に大きな負担ではない」とし「統一部が開城工業団地のこのような賃金現実を認め、協議にはいることを願う」と話した。
だが、開城工業団地企業協会副会長がチョン会長とは異なる意見を出すなど、企業間でも利害関係により賃金問題に見解の違いがある。
開城工業団地企業協会の副会長の一人は「統一部が制裁方針を明らかにしたので、企業はこれを理由に団結して賃金支給を先送りできたのに、先に賃金を支払う企業が出たためにその機会を逃した」と遺憾を表明した。また別の協会関係者も「設備投資をしない企業は北との葛藤が生じれば直ちに撤収でき、賃金を多く払っても何ら問題ないかもしれないが、大きな設備投資をした企業は賃金引き上げが今後続く場合、採算性が下がり工場の稼働継続可否を検討しなければならなくなる恐れがある」と話した。