韓国政府の電算システムを管理する国家情報資源管理院の大田(テジョン)本院で起きた火災により、国家行政の業務システムやインターネットでの申請サービスなどが麻痺(まひ)する前代未聞の事態となった。火災予防の観点からバッテリーの移設作業をしていた際に出火したが、国家の電算ネットワークを保護するバックアップシステムが構築されていなかったため、被害が拡大したという。情報技術(IT)強国を自任する国で、何というあきれたことなのか。2022年のカカオの通信障害の際に再発防止対策を強く要求した政府が、本来は自分たちがすべきことを適切に行っていなかったのだ。
事故は26日夕方、国家情報資源管理院本院の建物の5階にある電算センターで発生した。作業者がリチウムイオンバッテリーの過熱による火災からサーバーを保護するために、バッテリーを地下に移動したところ、火災が発生した。27日午後6時ごろに鎮火したが、「政府24」「国民秘書」「インターネット郵便局」など、国民が利用するインターネットサービスが麻痺状態になった。特に、データがリアルタイムでバックアップされるシステムではないため、データが喪失したシステムについては、復旧時期は断言できないという。
火災原因とされたバッテリーは、耐用年数(10年)を1年超過した状態だった。また、バッテリーを装置から分離する際には電源を完全に遮断しなければならないが、これが順守されていたかについても、確実ではないという。国家の電算ネットワークの心臓部をずさんに扱っていたとみなさざるを得ない。さらに根本的な原因は、政府のダブルスタンダード的な態度だ。政府は3年前にカカオの通信障害が発生した際、「(政府のシステムは)火災や地震などで一気に停止した場合、リアルタイムでバックアップされたデータから3時間以内に復旧できる」と豪語した。カカオ側に中核のサーバーの分散運用や火災防止装置など、付帯施設の二重化を強く要求した。しかし、政府の大言壮語とは裏腹に、カカオの通信障害のときよりもはるかに深刻な被害が発生した。政府は今になって「予算不足のため、二重化の作業を適切に行えなかった」ことを理由として挙げている。忠清南道公州(コンジュ)にバックアップセンターを作っても、「シャットダウン(全停止)」を防ぐ運用システムやバックアップ機能は構築されていなかったという。このような政府をどうして信頼できるのか。
今回の事態は、国家の安全保障の面でも致命的な弱点を示したものだ。政府はすみやかに被害の復旧を行い、再発防止のための根本的な対策を講じなければならない。政界も力を合わせなければならない。国家の安全保障には与野党の区別はないはずだ。しかし、国会行政安全委員会に所属する与野党議員は28日に火災現場を訪れたが、責任をなすり合うばかりだった。恥ずべきことだ。