公務員年金の改編で始まった「年金論争」の火種が国民年金に飛び火している。与野党が公務員年金の改編合意とともに、所得代替率(対所得比の年金額)の引上げなど、国民年金強化案を出したことに対し、大統領府と政府は困惑の色を隠せずにいる。 2100万人が加入している国民年金制度に、下手に手を加えたくないという与党側の本音とは裏腹に、野党と多くの福祉・年金分野の専門家は、公的年金の強化議論を本格化する機会として捉えている。
朴槿恵(パク・クネ)大統領は4日、大統領府首席秘書官会議で与野党の国民年金所得代替率の引き上げ合意について「国民の負担が大きく増えるため、まず、国民の同意を求めなければならない問題だ」と述べた。与野党が2日、公務員年金の改編合意案と一緒に出した国民年金の強化策に対し、ブレーキをかけたのだ。当時の合意文には、国民年金の名目所得代替率を現行の40%から50%に引き上げて、公務員年金改革で生まれる財政削減額の20%を公的年金制度の改善に活用するという内容が盛り込まれた。失業、軍服務、出産クレジット(低出産問題を解決するため、二人目から出産の度に親の一人が国民年金の1年分を納付したことに認める制度)の拡大など経歴断絶の加入者への支援策も含まれている。与野党はこのために「公的年金の強化および老後の貧困解消のための社会的機構」を設けて、8月末までに運営することに合意した。
昨年初めから1年以上も続いてきた公務員年金制度の改編論議が、国民年金の方に広がることを望まない与党と大統領府の思惑とは裏腹に、せっかく訪れた国民年金制度改革の機会を無視してはならないという主張も多い。
新政治民主連合は、大統領府と与党を相手に、国民年金の強化の約束に基づく実践を圧迫し、「年金政治」の主導権を握るという判断だ。国民年金の死角地帯の解消を通じて年金をきちんと納められない低所得層を、国民年員所得代替率を現行の40%から50%に引きることで、私的年金に目を向ける中流階層を、それぞれ引き入れるというのが野党の布石だ。
福祉・年金の専門家も、国民年金の老後の所得保障機能をどのように向上させるかに関する判断はそれぞれ異なるが、与野党が口を揃えて「国民年金の強化」を約束したのは望ましいと指摘している。オ・ゴノ「私が作る福祉国家」運営委員長は「国民年金などの公的年金の強化をめぐる議論が予告もなく突然行われたが、どうせ取り組まなければならない社会的課題だった」とし「個人的には、名目所得代替率を50%に上方修正することに固執することなく、国民年金の死角を解消するための実質的方案を模索するために集中してもらいたい」と指摘した。
イ・クォンヌン福祉国家ソサエティ研究委員は、「老後の所得保障の手段としての公的年金制度の重要性を改めて強調したという点で、今回の与野党の合意の意味は大きい」とし、「国民年金の実質所得代替率が20%をわずかに上回る状況で、一度に実現できなくても、所得代替率の引き上げに関する議論は着実に行われなければならない」と述べた。
韓国語原文入力: :2015-05-04 20:45