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[インタビュー]「日本軍慰安婦問題の主犯は日帝植民支配と親日勢力」

登録:2015-03-12 09:06 修正:2015-03-12 11:04
『朝鮮人軍慰安婦と日本軍慰安所制度』著者、尹明淑・忠南大学国家戦略研究所主任研究員(博士)
尹明淑博士 シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「金学順(キム・ハクスン)さんが私の研究人生を変えてしまった」

 『朝鮮人軍慰安婦と日本軍慰安所制度』(チェ・ミンスン訳、イハクサ刊)の著者、尹明淑(ユン・ミョンスク)氏(54・写真)の言葉だ。彼女にこの本を書かせる決定的な契機となったのが、まさに1991年8月14日に日本軍慰安婦強制動員の被害事実を初めて世に暴露した被害者の金学順お婆さん(1924~97)の公開証言だったためだ。

 「その年に日本の一橋大学修士課程に進学した。しかし植民地時代の女性知識人を念頭にした研究主題に懐疑的になり、研究を続けるべきか深刻に悩んでいた時だった。それは必然だったのか、同年9月に金学順さんに会って直接インタビューする機会を持てた。それ以前は慰安婦の存在自体を知らずにいた」

 85年の渡日2年後に東京外国語大に入学した尹氏は、91年に在日同胞の歴史学者、姜徳相(カン・ドクサン)教授が在職した一橋大学大学院に進んだ。“金学順ショック”の中で日本軍慰安婦問題に研究主題を変え、94年に修士、2000年に博士学位を得た。

 1991年の金学順お婆さんの公開証言に衝撃
 研究主題を変え慰安婦問題に9年間没頭
 日本軍慰安所制度の博士論文を本に

 業者通じた人身売買や就職詐欺の徴募
 なぜ朝鮮の少女が売られていったのかを糾明
 「強制連行」は日本右翼によるフレームにすぎない

 今回出された本は、2003年に日本で書いた博士学位論文を若干加筆した『日本の軍隊慰安所制度と朝鮮人軍隊慰安婦』(明石書店)を、12年後に韓国語版として再出版したものだ。慰安婦問題研究の方向を示したと評価されるほど注目をあびた本である。

 「慰安所問題が提起され25年が過ぎたが、いまだに研究は活発ではない。韓国で出版されたそれほど多くない本まで、ほとんどが日本人研究者の翻訳本だ。そのうえ慰安所制度の糾明を主な内容とする。朝鮮人軍慰安婦がなぜ生まれたのか、その背景やメカニズムを明らかにする本はほとんど見当たらない。そのためなのか、韓国では慰安婦問題がメディアを通じて広く知られ誰でも知っているかのようだが、実際に話をしてみると正確に知らない人が多い。きちんと知らせなければならない必要性を切実に感じることになった」

 尹氏は本の1章で日本軍慰安所設置・運営、慰安婦徴募・移送、運用と統制などに日本政府と軍が介入した事実を、日本陸軍省兵務局兵務課の起案文書「軍慰安所従業婦等募集に関する件」などの資料を通じて実証的に明らかにし、その責任の所在を明確にした。だが、彼女がより力を注いだのは2章の「朝鮮人軍慰安婦の形成に関する考察」だ。

 「日本政府と軍が奴隷狩りのような慰安婦“強制連行”に直接介入したかどうかに焦点を合わせるのは、日本右翼のフレームに陥るようなもの」と前提とした彼女は、「私は日本軍慰安所制度の糾明を通じて帝国主義軍隊(国家)の暴力性を、そして朝鮮で日帝が行った慰安婦の徴募実態の糾明を通じて、植民主義、植民性、暴力性を解明しようと思った。そのことで(植民地朝鮮の)徴募過程で就職詐欺、人身売買が高い比率を占めることになった原因を明らかにしようとした。この植民支配の責任を問うことこそ慰安所問題解決の根本であるため」と主張した。

 尹氏は「軍と統治機関が背後に隠れて業者を通じ統制・監督し、就職詐欺や人身売買という方法で徴募したこと、それ自体が暴力だ。また『本人の意志に反して連れて行かれた』ことは強制と言える」とした。

 彼女は収奪や搾取と差別を土台にした日帝の朝鮮植民支配自体が、当時の朝鮮の人口の80%を占めた農村の絶対貧困化を加速させ、農民の70%が食事さえとれない貧農に転落した事実を暴き出した。その結果、農民は都市周辺の極貧層に追い込まれ、慢性的な失業と低賃金、飢餓にさらされた朝鮮人の多数が生きる道を求めて満州など国外で彷徨わねばならなかった。そうした状況の中で数多くの10代の少女が家政婦、保母、接客部、妓生、女工になる他なくなり、彼女らのうち相当数が工場に就職させるといった嘘に騙されたり、明らかに偽りだと思いながらも売られてしまい、慰安婦などに転落する他なくなった。それほどに略取誘拐が横行していた。尹氏は被害者の証言を通じ、こうした植民地下の経済的・社会的要因を一つひとつ確認した。

 「慰安所問題が初めて提起された時、韓国では民族主義的観点が、日本では女性主義的観点が強かった。しかし私が注目したのは植民支配そのもの、すべての問題の根底にある最も核心的な問題である犯罪的植民支配自体にあった」

 初めから階級問題として接近した尹氏には、植民支配自体が慰安婦転落を“強制”する主犯だった。だが日本の知識人、さらには国内の進歩的な人々さえ、日帝植民支配については鈍感だったり、その責任を認めようとしないと彼女は指摘した。慰安婦徴募過程で登場した朝鮮人業者、また貧困のため子供を売り払った両親たちについても彼女は確認した。だからといって「そうした事実が日本政府と軍、国家の責任を軽減させたりしない」と彼女は釘を刺した。

 慰安所問題は民族内部の矛盾をも白日の下に晒す。強制連行はなかったとする安倍政権や日本右翼の主張に反論するため、教科書における強制連行の記述を強化するという韓国政府の方針を尹氏は憂慮した。「強制連行というフレームには注意しなければならない。それを強調すると軍人が朝鮮の少女を銃剣の前で連れ出していくイメージに閉じ込められ、そうした徴募を可能にさせ彼女たちを唆した親日勢力(慰安婦徴募・移送に関与した朝鮮人道知事や班長、区長、警察など)の存在を隠してしまう可能性がある。私たちは親日勢力の責任も忘れてはならない」

ハン・スンドン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.03.11 19:14

https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/681811.html 訳Y.B

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