サード(THAAD/高高度防衛ミサイル)の朝鮮半島配置議論が政界を中心に広がっている。セヌリ党のユ・スンミン院内代表などが公論化に乗り出したことについて、一部の「親朴槿恵(パク・クネ)系」がブレーキをかけたうえに、大統領府が直接鎮火に乗り出したことで、与党と政府、大統領府と対立に飛び火する様子だ。
ミン・ギョンウク大統領府報道官は11日のブリーフィングで、「韓国政府の立場は、3NO(No Request、No Consultation、No Decision)」と「(米国からの)要請がなかったため、協議もなく、決定されたこともない」との従来の立場を再確認した。議論が拡散することを望まないという意味だ。しかし、ユ・スンミン セヌリ党院内代表はこの日、「予定通り(今月末)議員総会を開き、サードの問題を非公開で論議するつもり」だと明らかにした。
■ リッパート駐韓米国大使襲撃事件以降増幅
国会国防委員会で長く活動したユ・スンミン院内代表など、セヌリ党の一角で韓国にサード導入を主張する声は以前にもあった。しかし、このような主張が最近になって急に大きくなったのは、5日のマーク・リッパート駐韓米国大使の襲撃事件が事実上直接的な影響を及ぼしたものと見られる。韓米同盟が強調されて保守的アジェンダに友好的な世論が形成されたことで、サード配置をめぐる議論もこれまで以上に簡単に急流に乗ったのだ。
今月7日から8日にかけてウォン・ユチョル セヌリ党政策委議長、ナ・ギョンウォン外交統一委員長、チョン・ビョングク議員などがサードの導入に賛成する立場をそれぞれ示したうえに、9日ユ・スンミン院内代表が「今月末政策議員総会を経て、党内の意見を集約する」とし、公論化に乗り出したことで、政治的な議論に急浮上した。国防委員会で6年間議員活動をしながら、委員長を歴任したユ院内代表は昨年11月、国会対政府質問でもサード導入を強く主張した。別の国防委員長出身であるウォン・ユチョル議長なども北朝鮮のミサイルの脅威に対応するため、サードの導入が必要だという立場だ。
ここには、サードの朝鮮半島導入を促す保守言論の報道も一役買った。 朝鮮日報は7日、専門家たちの言葉を引用して、「政府があいまいな態度を捨て、中国を積極的に説得しなければならない」とサードの配置を促す企画記事を出した。
■ 与党内の議論、混乱を招く可能性も
しかし、米国がサードの朝鮮半島配置を公式化していない状況で、政権与党が世論攻勢のように公論化に乗り出すのは、混乱を煽るだけという懸念もある。米国は現在、米国本土とグアムなどにサードを配置している。これから本土と海外基地に追加配置する計画で、韓国も有力な対象地域の一つとして検討されていることが分かった。しかし、サードを朝鮮半島に配置するかどうかを決めるのは、韓国ではなく、米国政府だ。米国の公式決定が出ていないのに、韓国でこれをめぐって議論するのは次期尚早なうえ、国益にもつながらない。むしろ議論が過熱した場合、サードの朝鮮半島配置を警戒する中国との外交関係だけこじらせる公算が大きいという指摘が提起されている。
大統領府はサード公論化の動きに困っている様子だ。大統領府関係者は「議論自体が時期尚早の面がある。慎重に取り組まなければならない事案」とし、公論化に線を引いた。当分「戦略的なあいまいさ」を維持する意向を明らかにしたものである。政権発足後、韓中関係に格別に力を入れてきた朴槿恵大統領が、長期課題であるサード配置問題を早期に持ち出して外交的な立地を狭める必要はないと判断したようだ。15日に予定された与党と政府、大統領府間の政策調整会議で議論する事案ではないというのが大統領府内部の雰囲気だ。親朴系議員らがサード配置の公論化に否定的な態度をとっているのも、このような大統領府の立場を反映したものと見られる。
しかし、大統領府の立場表明も関わらず、議論が収まるかは不透明である。党指導部のユ・スン民院内代表をはじめとする「非朴系」議員らが公論化を主導しているからだ。ウォン・ユチョル政策委議長は15日、与党と政府、大統領府間の政策調整会議で、この問題を提起する計画であるこが伝えられており、ユ院内代表も今月末議員総会で議題として取り上げる意向を引き続き示している。
一方、サードをめぐるセヌリ党内の議論は11日にも続いた。党最高委員・重鎮議員連席会議でイ・インジェ最高委員が「サード問題は、公開的に議論して決定される問題ではない」として公論化に反対の立場を示し、イ・ジョンヒョン最高委員も「時期や手続き、方法を議論するのに国益を総合的に考慮する必要がある」と述べた。
韓国語原文入力: 2015.03.11 20:17