密陽(ミリャン)事態で地域発展基金の威力
工事反対懐柔のために露骨に活用
海南門内面~珍島郡内面間の14.5キロ拡張
24の村に30億ウォン…土地補償費の3倍
地域により反発の大きな村にはさらに上乗せ
韓電・住民の軋轢が村同士・住民同士の対立に
“甲の横暴”の手段に悪用される憂慮、法制化の声
セマングム送電線路(345kV)建設事業が進行中の全羅北道群山(クンサン)市でも似たような状況だ。 送電線と近い群山市米星(ミソン)洞の住民パク・ヨンチル氏(77)は「半月前、韓電職員が近隣の村にやって来て発展基金の話をして回るので、言い争いになったことがある。 韓電の住民誘引策と関連して、未確認のさまざまな話が聞こえてくるので混乱している」と話した。 別の住民は「韓国電力は『今賛成すれば、発展基金をより多く受け取れるが、後から賛成しても発展基金額は少なくなる』と言って、金で工事反対住民を懐柔している」と主張した。
群山市沃溝 (オック) 邑送電塔反対対策委員会のチャン・ヒョンチャン委員長(68)は「鉄塔に近い所は、電磁波のせいで人が住めなくなる。 生活の基盤を失うことになるのに、発展基金が何の役に立つか。 沃溝邑で生産したコメはソウルなどに給食用として出荷し輸出もしている。 送電線路を田畑のある所じゃなくてセマングム側に迂回させればいいのに、なぜこのような沃土をなくそうとするのか理解できない」と話した。
韓電はこのような工事反対の声をもみ消すための武器として、地域発展基金を活用している。 これは全国的に注目された慶尚南道密陽でも強力な威力を発揮した。 村に撒かれた発展基金はいつも韓電対住民の軋轢、村と村、住民と住民の摩擦に変えてしまう魔法になった。 密陽765kV送電塔反対対策委員会のイ・ゲサム事務局長は「地域発展基金は事実上、反対する住民を買収するものだ。 発展基金が登場すれば村は一瞬で受取るか否か、どう分けるか、などを巡って分裂してしまう。 密陽でも逆機能が如実に現れた」と語った。
さらに、韓電の地域発展基金は、原発やゴミ埋立地・下水処理場などの環境基盤施設の周辺地域への支援金とは違って、法律的な根拠がなく、事業者である韓電が恣意的に執行できる道が開かれている。 韓電は93年から内規の「送・変電設備建設周辺地域の特別支援に関する規定」に基いて、特殊補償費を使ってきた。 韓電は市場型公企業として、目的の事業にかかる予算を別途の法令の根拠なしに執行できるという態度を取っている。 韓電が支援する特殊補償費は通常年に100億ウォン台だったが、密陽事態の影響で住民の警戒心が高まり2013年232億ウォン、2014年236億ウォンに増えた。
しかし、これを現場で「泣く子には餅をもう一つ」スタイルで運営するため、雑音が絶えない。 反発が強ければ上乗せし、なければ無視するなど、どんぶり勘定で対応するために、765kVの路線より電圧が低い154kVの路線地域の方が多く受け取ったり、離隔距離や鉄塔の数など客観的条件が悪いにもかかわらず補償額が少ないといったケースがいくらでもある。
また韓電は、金額が決まったら「追加の苦情は提起せず、工事を一切妨害しない」という合意書を要求する。 農道破損、騒音や粉塵誘発、電磁波発生など、送電線路建設に伴う被害に対して住民に当然補償しなければならないのに、まるで恩恵を施すように“降伏文書”を強要する。
このような問題が生じているにもかかわらず、産業通商資源部は特殊補償費については手を拱いている。 産業通商資源部の電力産業課側は「地域発展基金について問題意識を感じてはいるが、不法ではなく、事業者の自律領域だと考える」という反応を見せた。
政府が無策傍観する中で、全羅南道麗水(ヨス)、蔚山市蔚州(ウルチュ)、慶尚北道清道(チョンド)郡、忠清南道唐津(タンジン)、済州朝天(チョチョン)など全国約10カ所で、依然として送電線路をめぐる韓電と住民が対立中だ。 あちこちで地域発展基金が“甲の横暴”の手段に悪用される余地が大きいだけに、法制化を急ぐべきだという声が出ている。
キム・ジェナム正義党議員は「韓電の恣意的な支援は村の間の公平性問題を巡る軋轢と村共同体の分裂を招く可能性が高い。 正確な法的根拠と被害範囲調査、住民間の合意を通して地域発展基金を出すようにすべきだ」と指摘した。
韓電側は「通常、建設費の0.15%を現場での苦情対策費に使うが、周辺の村に支援する特殊補償費は別途に執行する。 密陽以来、住民の権利意識が高まり、建設工事が難しくなって支援額も増えたのは事実だ」と明らかにした。