公務員・警察2200人余 押し寄せて
住民たちを引きずり出し、掘っ立て小屋など撤去
ハルモニたちのまっ白い髪の上に、土ぼこりがうっすらと落ちた。 しわになった目じりから涙があふれた。 「先祖代々ここで生きてきたのに、どこへ行けというのか」として泣き叫んだハラボジ(おじいさん)は、押し寄せてきた警察官6人に手足を掴まれ小屋から引きずり出された。
慶南(キョンナム)密陽市(ミリャンシ)と警察が11日、765kV送電塔建設に反対する住民たちの座込み場を全て強制撤去した。
密陽市(ミリャンシ)と警察はこの日朝6時から午後5時10分頃まで終日密陽市職員200人と警察20個中隊2000人余りを動員して座込み場の強制撤去のための行政代執行を行った。 住民たちは密陽市、山外面(サンウェミョン)・上東面(サンドンミョン)・府北面(プブックミョン)にある101番・115番・127番・129番など4本の送電塔建設予定地に座込み場を設置し、進入路には掘っ立て小屋4個を設置して工事に反対してきた。 だが、この日の行政代執行で工事と直接的な関係がない丹場面(タンジャンミョン)金谷里(クムゴクリ)の小屋1ヶ所を除き座込み場4ヶ所と小屋3ヶ所が全て撤去された。
住民たちと市民社会団体活動家らは連行を阻むためお互いのからだを鎖で縛って抵抗したが力不足だった。 この過程でキム・ナムスン(87・女)氏など、ほとんどは70~80代の老人たちである住民と市民社会団体活動家19人、警察官5人が負傷したり気絶して病院に搬送された。 また、警察に糞尿をばらまいて抵抗したパク・スンヨン(77・女)氏など住民2人とチャン・ハナ新政治民主連合議員の補佐官チェ・チョルウォン(42)氏が公務執行妨害の疑いで警察に連行された。
強制撤去は127番と129番送電塔予定地の進入路にある府北面(プブックミョン)上良里(ウィヤンニ)チャンドン村の小屋から始まった。
朝6時、密陽市行政代執行公務員はチャンドン村の小屋を守っていた住民10人余に「密陽765kV送電塔反対対策委員会所有の不法施設を6月2日までに撤去するよう警告書を送達したが、指定された期限までに履行されなかったので代執行を通知する」として、行政代執行令状を示した。
住民10人余は糞尿をばらまいて抵抗したが全員逮捕され小屋の外に引きずり出された。 婦人警官8人に捕まった住民ク・ドクスン(80・女)氏は「一生ここで農作業だけして生きてきた。 私はここで死ぬつもりだ。 追い出さないでくれ」と言って涙を流した。隣の平畑村のクォン・ヨンギル(77)里長は「韓電が仲むつまじかった村の住民たちを補償金で分裂させた。 お金のために住民たちがバラバラになった。 私の子供たちがここで生きてゆくのに、それしきのお金は必要ない。 以前のように村を元に戻せ」と叫んだ。
30分で小屋を撤去した密陽市職員らと警察はまもなく129番送電塔予定地の座込み場撤去に着手した。 住民たちと市民社会団体活動家50人余りが互いに腕を組んで頑張ったが、一度に押し寄せてきた警察に捕まり座込み場の外へ連れ出された。 下着姿で抵抗した一部の住民は、毛布に包まれ連行された。 連行を阻止するために首に鎖をかけていたが、警察は切断機で鎖を切った。 住民パク・某(80・女)氏は連行され「政府が密陽住民を無視して力で押さえ付けている。 法も無視する現政権は退け」と叫んだ。
129番座込み場が1時間余りで撤去され、首と腰などに鎖を縛りつけて守っていた127番座込み場のオ ハルモニの目じりがぬれた。 1年余り、一日も欠かさずに座込み場を守ってきたソン・ヒギョン(79・女)氏は「守れると思っていたのに…」という言葉を繰り返したが結局号泣した。 ソウル聖家小卑女会から来た修道女10人余りが「ハルモニ、ケガをしないように。 神様が私たちを守って下さるでしょう」とハルモニを慰めたが、ソン氏の涙は止まらなかった。
129番座込み場の撤去を終えた密陽市職員らと警察が朝8時46分、近隣の127番座込み場に押しかけた。 127番座込み場も1時間余りで崩れた。 警察は住民たちを引きずり出した後、直ちに横一列に整列し住民たちが再び座込み場に入ることを阻んだ。 密陽市と韓電の職員は警察のピケットラインの中に入って、警察の保護を受けながら座込み場を取り壊した。 座込み場前の花壇が無残に踏みにじられた。
昼12時、上東面(サンドンミョン)高亭里(コジョンリ)115番送電塔予定地の座込み場では修道女の聖歌が響き渡った。 市民社会団体活動家たちは木の枝で十字架を立てて紙の箱で講壇を設けミサを捧げた。 しかし5分も経たないうちに警察と公務員たちは押し寄せた。 彼等は一糸不乱に住民たちを引きずり出して座込み場を撤去した。 コダプ村の住民チョン・チュンジャ(74・女)氏は「放せ、放せって。 私のからだも思い通りにできないのか」と大声を上げたが、「引きずり出せ。 引きずり出せ、はやくしろ」と要求する警察の叫びにかき消された。コダプ村の住民チャン・へチュン(80)氏は「あきれるやら悔しいやら。 政府がすることでも人を生かすのが先だ、こんな風に老人をみな殺しながらするとはどういうことか。 私は一生、送電塔を呪って生きる」として怒りをぶちまけた。
「私の生きた故郷は花咲く山奥。 桃の花あんずの花、赤ちゃんチンダルレ…」午後4時30分、最後に残った101番送電塔予定地座込み場に哀しい歌声が響き渡った。 歌を歌うハラボジ、カルモニの声が細かく震えた。 歌が終わるや警察は住民たちを引きずり出し始めた。 病人を運び出すヘリコプターが起こず土ぼこりが、人々の悲鳴と混じり合った。
密陽/キム・ヨンドン、イ・ジェウク記者 ydkim@hani.co.kr