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[ニュース分析] 『帝国の慰安婦』論争第2ラウンド(2/3)

登録:2015-03-01 20:18 修正:2015-03-02 15:12
第1159回日本軍慰安婦問題解決のための定期水曜集会が開かれた昨年12月31日昼、ソウルの駐韓日本大使館前でキル・ウォンオク、キム・ボクトン ハルモニが今年死亡した慰安婦被害者ファン・クムジャ、ペ・チュンヒ ハルモニの影像に献花している。イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 しかし、この本を巡る論争が突破口をみつけられなかったことには別の理由がある。 それはこの本の「検討対象が曖昧な上に、利用される概念が理解可能な形式に整理されていない」(チョン・ヨンファン日本明治学院大学教授)ためだ。本が結局何を言おうとしているのか非常に曖昧なうえに、一見矛盾と見える記述が本の随所に散在している。 そのために、この本の賛否論争に足を踏み入れた多くの人々は、お互いに向かって『本を読んで言っているのか』と指弾し、同じ一節を読んでも正反対の解釈を引き出すケースも発生している。

 朴裕河教授はこの本をなぜ執筆したのだろうか。 本の韓国語版序文を見よう。 著者は自身が2005年に出した『和解のために』の一部分を引用しながら「慰安婦問題はなぜ10年が過ぎても解決されないのだろうか。日本が周辺国の批判にもかかわらず変わらずにいるならば、その原因の一部は今までの批判の形式と内容に問題があったためとも言える」と書いた。 慰安婦問題が解決されないならば、その理由を日本だけでなく韓国内部でも探す必要があるという指摘だ。

 朴裕河教授を理解するために最も重要なキーワードは序文に含まれた「解決」という単語だ。 彼女が本を書いた理由は、慰安婦問題が10年を越え、「20年が過ぎようとしているのに相変らず解決されずにいる」ためで、この問題を解決するには「時には聞きたくない話」も聞かなければならない。 なぜ私たちは聞きたくない話も聞かなければならないのだろうか。 「そのような不都合と痛みを経ずには慰安婦問題を『解決』できないから」だ。

 韓国の憲法裁判所が2011年8月、「政府が慰安婦問題解決のために外交的努力をしないことは違憲」という決定を下した後、韓日両国政府は慰安婦問題解決のために過去3年間、激しい外交的交渉を続けてきた。 それでもこの問題は相変らず解決の糸口を捉えられずにいる。 朴槿恵(パク・クネ)政権が日本政府に「誠意ある先措置」を取ることを要求しているためだ。 韓国社会においてこの先措置とは、日本が慰安婦問題が当時の日本軍による犯罪だったという“法的責任”を認め、それに相応する賠償を行うことと受け止められている。

 そのために過去20年間、韓日の慰安婦運動団体と学者たちは慰安婦の動員過程、慰安所の設置・運営過程での日本政府の法的責任を明確にしようとする試みを続けてきた。 その間の長い論争を経て最近韓日両国が再び戻った結論は、日本政府が通りがかった女性の後ろ髪をつかみ拉致するような“強制連行”を直接指示したという証拠は発見されていないが、河野談話で指摘された「慰安婦の募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」という動員過程の強制性を否定することもできないという事実だ。 内心では河野談話を否定したい安倍政権だが、結局談話を継承する意思を明らかにしたのは米国など国際社会の圧力のためでもあるが、談話自体を否定することが事実上不可能であることを認識したためだ。

日本軍慰安婦被害者イ・オクソンさんが昨年6月16日、ソウル広津区のソウル東部地検民願室前で『帝国の慰安婦』本を持って記者会見している。 慰安婦被害者はこの本を書いた朴裕河 世宗大教授と出版社を名誉毀損の疑いで告訴した。 連合ニュース

 「34カ所表現、削除後に販売」決定
 慰安婦被害者たちの仮処分訴訟
 複雑で多様な論争の中で
 熾烈で過激化する賛否論議
 この本をなぜ執筆したのだろうか
 日本政府に1次的責任はあるが
 明白な“法的責任”はないという
 日本右翼の主張を受け入れた朴裕河教授
 奇妙な論理の善意はあるが
 解決とは距離が遠い虚しい試み
 “業者の責任”の立場に立つ

 この時点で朴裕河教授は日本の右翼でもなければ容易に試みない真に独特な挑戦に乗り出した。 すなわち、慰安婦問題について日本政府の“包括的”法的責任を追及しようとしている既存の学者や活動家とは異なり、日本政府に法的責任はないという点を論証しようと努めているためだ。 そのため朴裕河教授は、慰安婦動員過程に積極的に介入した(特に朝鮮人)業者の責任を強調し、「か弱い少女」というイメージで遮られている「日本軍人と恋もし、慰安を愛国と考えもした」という「本当の慰安婦」たちの姿を紹介している。

 彼女は慰安婦問題が発生した原因として、家父長制の責任を指摘しているが、それはやはり慰安婦がこうした苦痛を受けた1次的原因は当時の不幸な社会像のせいであって日本政府の責任ではないという点を強調するための装置として読める。 しかし、それと共に所々で「他の地に軍隊を駐留させ戦争を行うことによって、巨大な(性的)需要を作り出したという点で日本はこの問題に責任を負わなければならない最初の主体だ」と強調するなど、この問題の一次的な責任が日本政府にあるという指摘を忘れてはいない。 しかし著者の見解は、日本政府に慰安婦を作った構造的な“罪”に対する責任を問うことはあっても、それが法的責任を負わなければならない“犯罪”ではないということだ。 それと共に、日本政府の法的責任を追及できる端緒である慰安婦動員過程で広範囲に行われた人身売買に対する軍の黙認と慰安所設置に関する軍の指示などに対する言及は消極的に扱っている。

 続けて朴裕河教授は日本政府が「法的責任」を負わなければならないという主張を曲げない挺対協に非難の矛先を転じる。 挺対協が自分たちが考える運動の正義のために「20万人のか弱い少女」という「一つの固定された慰安婦のイメージを作りだし」つつ、このような過程を通じて実際には日本を「容赦」し「和解」する意志のある慰安婦被害者の小さな声を死蔵させたということだ。 しかも「併合(韓日併合条約)が両国の条約締結を経たことだったので法的には有効」であり「植民支配という不法行為に対する他国の国民動員に関する賠償」を通じて慰安婦に対する賠償を主張できず、1965年の韓日協定で個人請求権が消滅し個人補償を要求する根拠もなくなったという指摘も忘れない。 彼女はなぜこういう主張をするのだろうか。 朴裕河教授は昨年11月に出版された日本語版の後記で再び「慰安婦問題の理解と解決方法が変わらなければ、この問題は永遠に解決されないと断言できる。そして韓日関係は今以上に打撃を受けるだろう」と切なく訴える。(3/3)へ続く

東京/キル・ユンヒョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/680144.html 韓国語原文入力:2015/02/27 21:50
訳J.S(2731字)

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