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韓国政府の健保政策、問題が生じると手の平を返すように責任転嫁

登録:2015-02-01 23:42 修正:2015-02-02 08:51
健康保険料改善白紙化の波紋
「誰がこんな政府を信頼するか」
進歩も保守も一斉に糾弾
国民健康保険公団//ハンギョレ新聞社

 「 高所得の職場加入者など45万人の反発を恐れ…602万世帯が受ける筈の恩恵 無期延期」(朝鮮日報)、「17カ月かけた健保改革…高所得者の不満買うかと放棄」(京郷新聞)、「金持ちからもっと徴収しようとしていた健保改編、放棄」(毎日経済)、「年末調整の反響に驚いたか…健康保険料無賃乗車改編 白紙化」(中央日報)

 韓国政府が健康保険料の賦課方式改編を事実上“白紙化”したことについて、29日、ほぼ全てのメディアが一斉にこれを批判する報道を行なった。 専門家、市民社会団体、野党も、社会保障制度の骨格を成す健康保険料体系の大手術を翌日に控えて、手の平を返すような政府の行動に「あきれた」と反応している。 彼らは一様に、今回の健保料改編の正当性や方向性を積極的に擁護した。 改善案の発表を強行した場合「高所得層、健保料爆弾」などという刺激的なマスコミ報道により増税を巡る論議がさらに広がるのでは、という政府の懸念は杞憂に過ぎなかった。 45万人前後の高所得層から保険料をさらに徴収し、“松坡(ソンパ)三母娘”事件に代表される600万人に及ぶ低所得層の負担を減らす内容の健康保険料賦課方式改編に対する社会的共感が高かったという傍証だ。

 波紋が広がるや、大統領府は同日「白紙化ではなく、十分な時間を持って推進するという趣旨だ」と明らかにしたが、論議は収まらなかった。 健康保険料改編の白紙化論議は、健康保険料賦課体系改善企画団(企画団)が改善案を提示することにした29日を翌日に控え、ムン・ヒョンピョ保健福祉部長官が「健康保険料改善案は年内には作らないことにした」と爆弾宣言をしたことから始まった。 福祉部が立ち上げた企画団は、2013年から足掛け3年、約30回におよぶ大小の会議を開いて7つの改善案モデルを完成させたばかりだった。

ムン長官の健康保険料改編白紙化宣言が出ると、16人の委員で構成された企画団では、政府の無責任・無原則行動に対する批判が噴出した。 企画団委員のキム・ジンス延世大学教授(社会福祉学)は「推進してきた政策を、政府がその時々の状況によって急に取消したりすれば、一体だれがこの政府を信頼できようか。 健康保険料賦課体系の問題は昨日今日に始まったことでもないのに、苦心して改善案を作っておいて『なかったことにしよう』とは、呆れてものが言えない」と話した。 匿名を要求した別の企画団関係者も「政府はシステムによって動かなければならないのに、健康保険料賦課体系を改編するか否かのような重要な決定をこのように即興的に下すのを見ると、いったい国に秩序というものがあるのかどうか…」と慨嘆した。

 政府が進歩と保守のどちらも反対しない健康保険料賦課体系改編を覆して「国民の支持を得なければならないのに、まだ十分な準備ができていない。 追加負担の生じる勤労所得者たちには不満が大きい可能性がある」という論理を掲げたのを見て、国政運営に必要な最小限の政務的判断すらもろくにできないのではないかという指摘も出ている。

 ムン長官は白紙化宣言の前日の27日、福祉部出入記者たちに会い、29日以降に予定された改善案関連報道の延期を要請して次のように述べた。「すでに健康保険料賦課システム関連エンバーゴ(特定日時までの報道延期)を2度も要請した。 本意では無いが状況上そうなった。もう一度だけ延期してほしい。 賦課体系を改編するには大統領府や国会を説得して行かなければならないが、(増税論議などで)今のように社会の雰囲気が友好的でない状況では(大統領府などが)敏感に反応せざるを得ない」。これは「健康保険料賦課体系改編は、大統領府を無視して私の意思により推進することは困難だ」という告白にほかならない。

 一方、ミン・ギョンウク大統領府報道官は同日、「社会的共感を確保するためにもう少し深い論議が必要だという判断は、全面的に(福祉部)長官の下したものと聞いている」として責任を転嫁した。

 <私が作る福祉国家>のオ・ゴノ共同委員長は「政府が年末調整問題を機に、高所得の職場加入者に対する保険料負担強化案を放棄するものだ」として、「健康保険料賦課体系を所得を中心に改編するという方向の改善案は本当に改革的な内容だったが、政府の失策と見ざるを得ない」と指摘した。

 ムン長官の白紙化宣言を通じて逆説的に、健康保険料改善に関する世論の流れが確認されただけに、政府は健康保険料賦課体系改編を再度積極的に推進しなければならないという主張も出ている。 企画団委員として参加したサ・コンジン漢陽大学教授(経済学)は「保健福祉イシューと関連して、これほどまとまった声をあげたことはなかった。進歩も保守メディアもみな企画案に賛成している」として「ともあれ今回(政府が)世論の流れは確実に把握したはずだから、これを賦課体系改編の動力にできるだろう)と話した。

 ミン・ギョンウク大統領府報道官は「白紙化ではなく、十分な時間を置いて検討し推進する」と話した。

チェ・ソンジン、パク・スジ、キム・ヤンジュン、ソク・チンファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015/01/29 22:34

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/676023.html
訳A.K(2302字)

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