「(統合進歩党が民主的基本秩序に反するという)この結論は、統合進歩党自体を反国家団体とし、党員全体を反国家団体の構成院とし、支持した国民を反国家団体の支持者と規定することに他ならない。 (統合進歩党の)主導勢力に属した党員は国家保安法による刑事処罰を受けるということを公認することになる」
統合進歩党の解散を決めた憲法裁判所の決定文の中で、キム・イス裁判官が明らかにした反対意見の一部だ。 このような憂慮は決定直後に保守団体が進歩党員を国家保安法違反の疑いで告発したことにより現実化する雰囲気だ。 ユン・ウンゴル ソウル中央地検2次長は21日、『ハンギョレ』との通話で「憲法裁判所の決定文には、統合進歩党が北朝鮮式社会主義を追求しているとされている。 これを根拠に告発がされたので統合進歩党が利敵団体か、党員たちの活動を利敵行為に対する同調と見ることができるか、法の枠内で活動したことも全て見なければならないか、などの法理検討をしてみなければならない」と話した。 ソウル中央地検は公安1部に事件を割り振り、この日直ちに捜査に着手した。
キム裁判官はドイツ共産党の例を挙げた。 冷戦時期の1951年に提訴され、5年後に連邦憲法裁判所で解散命令が下されたドイツ共産党(KPD)は、12年後に他の名前で再建されるまで関連者12万5000人が捜査線上に上がり、6000~7000人が処罰を受けた。 職場で解雇されるなどの社会的圧迫も相次いだ。
解散を決めた憲法裁判所の多数の裁判官も、進歩党関連者に対する“烙印”に対して憂慮する意向を明らかにしている。 これらの裁判官は決定文で「この決定により韓国の民主主義が後退し、進歩政党の活動が萎縮する恐れがあることを承知している」として「統合進歩党の主導勢力と関係がなかった一般党員たち、また場合により被請求人(統合進歩党)と友好的関係を結んだりもした他の政党に対する社会的烙印と理念攻勢はあってはならない」と注文した。
だが、違憲判断により解散決定が下された以上、“烙印効果”は避けられない面がある。 進歩党“主導勢力”の対応を巡って、また別の制裁と摩擦も予想されている。 キム・ハクソン江原大学法学専門大学院教授は「政党は作ることができないといっても、憲法裁判所が判断した“民主的基本秩序に反する” (思想を持った)団体はいくらでも存立できるので、今回の政党解散決定の実効性は落ちる」として、「国庫補助金と議員歳費を与えないという効果はあるだろうが、政治的効果は疑問」と明らかにした。 キム裁判官も反対意見で“政治的信念がかたく隠蔽された空間に入る党員などにとっては、解散決定がもはや自分たちには非合法的手段しか残っていないという信号に聞こえかねない”と憂慮した。
解散側の立場に立った裁判官の一部も、この点に関連しては悩んだという。 ある裁判官は「解散決定をするといっても、その人が自身の考えを変えるはずはない。 それならば“アンダー”(非合法領域)に降りて行くことになり、さらに大きな危険になりかねない」という立場を明らかにした。 だが、彼は「それでも解散できないと言えば、時代錯誤的考えを持った人々が免罪符でも受けたかのように意気揚揚と宣伝して歩き回ることになるが、これもまた容認されてはならない」と話した。 また「どんな決定を下しても、憲法裁判所が非難を受け国が騒々しくならざるをえないのに、政府が心から国を考えるなら(進歩党の“運命”は世論と選挙制度に任せ)政党解散審判を請求すべきでなかった」と話した。
審判請求が提起されたので決定は避けられなかったが、“多数派”の一部でも基本的には政治的な事件を裁判で“解決”することに懐疑的見解があったという話だ。